15 聖夜 刈谷かなえ視点
15 聖夜 刈谷かなえ視点
二〇一六年十一月二十五日(木)クリスマス
インターフォンが鳴らされた。
『ハロー! 美月ちゃん、参上!』
「あなた、反省していないわね」
『えー……。人の家に邪魔者を押し付けておいて、まだ言いますか?』
モニターの奥では、栗原美月は両腕を頭の後ろで組み、左右に揺れている。
「美月ちゃん一人?」
ほづみが横から顔を出してきた。
『おお、昨日はお楽しみでしたね』
「あなた、死にたいの?」
「かなえちゃん……。そんなこと言ったら、可哀想だよ」
「ごめんなさい。それで、何人来たの?」
『あたしと、朱莉ちゃん。あと、あたしの知り合いが二人』
「随分と大所帯ね」
『ごっめーん、あたしがさっき誘ったんだよ』
「そう。まあいいわ、入りなさい」
私は玄関の解錠ボタンを押すと、食卓の準備をはじめた。
エプロンを身につけ、ミネストローネの調理にとりかかる。
「わたしも手伝うよ」
「お願いするわ」
今日は、ほづみにピーラーを握ってもらった。
いつまでも過保護なままでは、ほづみが納得しないから。
「よっしゃ、革命!」
「まあ、美月さん、お強いですね」
「そう? えっへへー。照れるなー」
四人は、大富豪で遊んでいた。
ほづみが持ってきたリンゴジュースを飲んで、くつろいでいる。
私も早く混ざりたい。そして、ほづみのリンゴジュースを飲みたい。
「なあ、もう一回やろうぜ。アタシは納得いかねえ」
坂場朱莉は、憑き物がとれてもあまり変わっていない様子だ。膝を立てて、ジュースを一気に飲み干している。行儀が悪い。
「くっ、このままでは納得がいきません。再戦を希望します」
「いいよー。じゃあ、カード切るね」
「かなえちゃん、気になるなら一緒に遊んでてもいいよ」
「……はっ、そんなことない」
「本当に? かなえちゃん、なんだか、すごく遊びたそうにしてたけれど」
ちらちらと後ろを気にする私を、ほづみが気にかけてくれている。
「いいえ、ほづみと一緒に料理しているほうが、何倍も楽しいわ」
「そっか。えへへ。ありがとう」
私はミネストローネの具材とパスタを鍋に投入し、強火で煮込む。
湯が煮立ち、親指大ほどの気泡が出るようになったら、火を止める。
蓋をして、そのまま三分ほど待つ。
すると、ほどよいアルデンテのミネストローネに仕上がった。
「みんな、できたわよ」