11 仮面 刈谷かなえ視点 - 1
11 仮面 刈谷かなえ視点
クリスマスを明日に迎えた夜。
私は和室で、ほづみの膝の上で寝ていた。
耳がこそばゆい。
「本当は、横になって耳かきしたらいけないんだって、先生が言ってた」
「えっ、そうなの?」
ほづみが手を止めたので、私はおもむろに身を起こした。
「うん。耳垢が耳の奥に落ちたら、鼓膜を傷つけちゃうからだめだって」
「そんな、膝枕がだめなんて……。なら、どうすればいいの?」
私が頭を抱えていると、ほづみは私に密着した。
「こう、かな」
「ちょ」
ほづみは、私に身体を寄せながら、私の耳の穴を掃除しはじめた。
なんだか恥ずかしくて、私は押し黙ってしまう。
ほづみは、私の気持ちを意に介さず、着々と耳掃除を続ける。
「膝枕がよかったかな。夜、寝るときにやろっか」
私は小さく頷く。
「じっとしててね」
「…………」
「あ、かなえちゃん、大きいのとれたよ!」
「…………」
「こしょこしょするよー」
「…………」
「ふー」
「ひゃっ!」
私はくすぐったくて、目を強く瞑り、あらぬ方向へ顔を背けた。
「えへへ、ごめんね。じゃあ、次は反対やるよ」
「……うん」
月明かりに照らされながら、私はたっぷりとほづみに甘えていた。
耳かきを終え、夕食と風呂を済ませると、二人で私のベッドに座る。
それからしばらく学校生活の話をしてから、私は横になった。
私は今、ほづみの膝を枕にして、うつぶせに寝ている。
ずっとこのままでいたい。後頭部がふわふわしていて気持ちいい。ほづみの柔らかい髪の毛が私の頬を撫でる。ほづみの暖かい脈が、ほづみの太ももを通じて聴こえてくる。小気味良いテンポで、健康的に脈が鳴っている。
私はほづみを見上げた。
「もうちょっと、このままでいてもいい?」
「いいよ」
私は、眠たげな目をした黄色いパジャマ姿のほづみの顎を撫でる。
「こら、かなえちゃん! くすぐったい!」
ほづみはぴくりと身を震わせ、くすくすと笑った。