表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

星を探すステラ

作者: こんたくみ

 ステラは重苦しい夜空を見上げて、渦巻く闇に嘆息した。広げた本の白い項は、灯火の橙色に染まっている。隣で夜空を見上げていたジンジオじいさんに、ステラはおそるおそる声を掛けた。

「この本には星のことが書いてあったよ」

「それは昔の本だから昔のことが書いてある」

ジンジオじいさんは素っ気なく、口ひげをもごもご動かした。

「もう星は見れないの?」

ステラは指差された方に首を向けた。ジンジオじいさんが指差した先には、螺鈿でできた螺旋階段がある。

「あの階段を上っていけば、星の見える空まで行ける。けど今日はもう無理だ。夜が白む前に戻ってこないと、帰れなくなるから」

ジンジオじいさんはステラの頭に軽く触れると、家に戻っていった。

 ステラはベッドの中で、教えてもらった螺旋階段のことを考えていた。螺鈿の階段はとても綺麗だった。青っぽい白い光と、緑っぽい白い光と、朱色の三色を煌かせていた。きっと星はもっと綺麗に違いない。眠れなくなったステラは玄関へ行き、靴を履いた。冷気が心地良い。

 外は寒いほどに冷えていた。吐く息が白くなり、肺の底から冷たくなっていく。ブランケットを羽織っていたが、足元が寒い。ステラは家に戻ろうかと迷ったが、夜が白みかけていたので、急いで螺旋階段に向かった。

 階段はガラスで出来たみたいに半透明で、やはり美しかった。けれどなんだか面白味に欠けた。ステラは星を楽しみに、階段を駆け上がった。体が火照っていく。寒風が吹く。

 どれだけ階段を上っても、星は見えなかった。ステラはジンジオじいさんを疑った。それでも星を見たい一心で、ジンジオじいさんを信じることにした。やがて、夜空の真っ暗な部分に辿り着いた。ここに来て、ステラはうっすらと、自分の体が光っていることに気付いた。

 階段を上れば上るほど、自身の光が強くなっていく。ステラが朝くらいの光を放つようになったとき、ステラは夜が白み、もう陽が昇り始めていることに気が付いた。

 引き返そうとしたとき、そこに階段はなかった。ステラは茫然と立ち竦み、自分はずっと一人ぼっちなんだなと考えた。


 その夜、暗闇にぽっつりと光る星があった。ジンジオじいさんはそれを悲しそうに見詰めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] さみしいですね。
2019/10/14 00:12 退会済み
管理
[良い点]  おはようございます♪。タケノコです(^^)。  本作を拝読しました。  なんとも不思議な世界観!  シュールでいてリアルな描写で実際に起こるかもしれない……そう思わされました◎。 …
[一言] ステラは幸福になったのか、不幸せになったのかよくわからないのですが、意味深なお話だと思いました。 宮沢賢治を想起させる童話ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ