第3章 第21話
悲劇のヒロインに最愛の人ができて
やっと幸せになれると思ったときに
病気で亡くなる。
そんなのはドラマでよく観るだけで
現実はそんなことはあり得ない。
そう思っていたがそんなことなかった。
幼少期から辛い経験を重ねてきて
これからそのお釣りを沢山もらって
いけると思っていた心は
「なんで私なんだろう、
なんでこんなに辛いんだろう」
そんな感情が溢れていた。
太陽はなんて言えばいいのか分からず
そっと心を抱きしめた。
「どんなに困難だとしても2人で乗り越えていこう」
太陽はこのとき心の為に生きていこうと
再認識していた。
そして心はそのまま入院することになった。
着替えなどを取りに行く太陽は
そのまま会社にもよった。
「今日はお前は休みだろう、どうした?」
「社長はいらっしゃいますか?」
太陽の顔は明らかにいつもとは違い
どこか様子もおかしいと思った上司は
社長にアポを取った。
コンコン
「失礼します、庄司です」
「急にどうした?まさか辞めさせてくれとか言うんじゃないだろうな」
「社長…実は婚約者がいるのですが…
今日癌と分かって余命も3ヶ月と…
言われました…少しでも彼女と居たいんです…
お願いします…長期の休みをください…
彼女の病気がよくなるまでお願いします…」
社長に土下座して涙ながらに
話すその姿、勤務態度もよく
将来有望な太陽のそんな鬼気迫る
土下座に社長も思わず首を縦に振った。
そして心のいる病室へ行くと
心が窓の方を見てベッドに座っている。
悲しみの渦に飲み込まそうになっている
彼女を見て何も出来ない自分に
悔しさが込み上げ拳を震わせていた。




