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プロローグ
「見失ったッ?探せ!何としても探し出すんだ!」
深い霧がかかった大樹の森に怒号が響く。青い軍服に身を包んだ5人組みが周囲を探っている。
(お願い…。見つからないで…。)
恐らく白かったであろう泥だらけのワンピースを着た少女が、樹の洞にじっと身を潜めている。靴のソールは擦り切れ表面は数多の切り傷が付いていることから、相当な距離を走ってきたのだろう。よく見れば転んだときに出来たであろう体中の傷だけでなく、肩甲骨の辺りまで伸びている黒髪も艶を失い毛先は傷んでいる。
「クソッ!精鋭部隊といわれる俺達がどうしてこうも逃げられるのだ!3日だッ!それ以上かけたら本部に失態がバレちまうッ!何としてもそれまでに見つけ出すんだ!」
5つの足音が隠れている樹のすぐ近くを通り抜け、少女が体を強張らせる。
「流石に夜更けにこの霧で大樹の森じゃ埒があかねぇ!最後にもう1度バラけて探したら、そのまま4箇所ある森から抜けれる道に張り込むぞッ!少なくとも森に逃げ込んでいったのは確実なんだ!」
(お願い…。おねが…、…。)
儚い祈りと共に少女の意識は深い闇に落ちていった。