日常の騎士
Side:Miraosu
メタルズギルド アルテミナ支部
練習場 遠距離部門
朝の4時
「あー、お前はこう言ったよな『練習場借りられたから早速教える』って」
「違いない、たしかにそういった」
しっかり肯定したな、俺の聞き間違いではないな
「ここってどこだ?」
「森近くの草原だな」
緩く隆起した丘が幾つか見える先に森が見えている
爽やかな風が髪を撫でる
何もない草原が視界に広がっている
練習場?
「森の名前は?」
「たしか正気の森と言ってたな」
たしかじゃねえよ!どう考えても練習場として立てる場所間違ってるよな
「……場所を教えられた時の受付の表情は?」
「あたかも親の敵をみるかのような眼で健やかな笑顔でそう言われたな」
あたかもじゃないな、完全に敵視されているよな
そりゃ、一週間そこらでも冒険者の締め出し食らう羽目になったからな
「お前、何時か所属ギルドによって殺されるんじゃないか?早い内に」
「初めての相手はギルマスでした、そして大体いつもアルに無理難題押し付けられている」
誤解を受けるような発言するな!?
「それはご愁傷様、色々と言いたいことはあるがどう使えばいいんだ?」
「あー、別にその筋の専門じゃないから基本的なことだけだが……」
メンテナンスの仕方から撃つ時の構え方をある程度教わり
いざ撃ってみた所、37.5メルス地点の即席的の縁にかすったらしく
それを観測していたヨミキリは呆然としていた
最近コイツの感情が普通にわかるようになってきたな
相変わらず何考えているかわからんが
「初めてでこの精度って……異世界涙目もんだよファンタジーも甚だしい」
「それは褒めてんのか貶してんのか、どっちだ?」
「少なくともエンハンスで強化している俺の腕前よりも幾分か上だよ
というか、ミルスもそうだが精密射撃だの人間業じゃないやつ多いな」
「それをお前が言うか、機械人形と自身を同時に動かすなんか聞いたこと無い」
こいつが言うには、のうは?とかいうのを使って動かしているみたいらしい
端的に言えば腕がもう一つあってそれを普通に動かすみたいな感覚だそうだ
さっぱりわからん
大体腕一本と体全部ってまるっきし違うじゃないか
「そんなもの、向こうじゃ当たり前だ。俺の親友なんか、一個小隊を全て個別操作してるぐらいだ、こんなもの序の口だ」
「いやそいつ、人間やめてないか?」
「……一応人間なはずだ」
そんな雑談を交わしながら練習を重ねていく内に的にしっかり当たるようになっていき
エンハンスを掛けてもらった状態では見事真ん中に的中した
「ちなみにヨミキリはどこまでなら当たるんだ?」
「PDSをフルで活用すれば外的要因以外で外すことはない、が」
「が?」
「戦闘中だと精度にリソースは割けないからな、エンハンスだよりだ」
「途中で効果切れたらどうするんだ?」
「三分ごとに掛け直してるから心配ない」
「オド尽きるだろ」
「慣れればそうでもない」
慣れればって、何度も底付かせてるのか
たしかにそれで使える量も増えるが……
それってつまり、筋肉痛まで酷使して回復してまた酷使する
筋肉バカ系の思考じゃないか?
「さてまあ、夜が明けてからしばらく経ったから街に戻って飯でも食いに行くか」
「ついでに俺の行きつけの仕立て屋にもよるぞ」
「は?なんでだ」
その店は布や革といった防具も注文できる上にエンチャントも施せる、なかなか高級な店だ
CGUCで作り直したとは言え未だエンチャントもかかってないからな
ついでと言えばついでだが……
ヨミキリの格好を見ながら言う
「いつまでその格好でいるつもりだ?正直目立ってかなわん、せめて宿屋でも脱ぐとかしないのか?」
「これには山より低く海より浅い訳が」
「御託はいいし、そもそも言い訳にもならない理由にしか聞こえんぞ」
「はっきり言うと弾代で金欠中なのに報酬受け取らずこっちに来たせいで買う余裕も時間もなかった」
「なら、今は構わんのだな?」
「あ、ああ」
「じゃあ飯食ってから行くぞ」
そういえばこいつバシネットというかその兜はいつ外してるんだ?
街に戻ってから酒場を探したが開いておらず
仕方なく他の店に寄ってはみたんだが・・・・
「俺はお前に対して何故、色々とやかく言わなければいけないんだ?」
「知るか、ドレスコードがある店を選ぶからこうなるんだ」
当然といえば当然だ、どんな店だろうと真っ当なやつならこんなゴーレムのような全身鎧を身に纏ったやつなんか店に入れたがらんだろうな
衛兵がチラチラこっちの様子を窺ってるせいで気が気じゃない
「ドレスコード云々以前にその格好だからだ、せめて上にコートを羽織るぐらい」
「そのコートを買う余裕が今まで無かったんだよ、フード付きのマントぐらいしか他はない」
「はぁ腹ごしらえ前にまず服屋にでも寄るか」
周りからは怪訝な顔をされ、衛兵には後ろからコソコソつけられながらようやく目的の仕立て屋に着いた
なんでコイツはさも平気そうに出歩けるんだ?その精神はどこから身についてるんだ?
それはともかくとして中に入るとするか
「どうも、お邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ、ミラオスさんですね。でそちらの……えとソレは?」
やっぱりか、事前に連絡はしておいたから断られはしないとは思うが
それでも困惑はするよな……
「こいつが、連れのヨミキリです。俺の武具のエンチャントとこいつの普段着というか普通の装備を仕立ててもらいたい」
「どうも、普通の人間のヨミキリだ、神聖教国と言う割にはこういった商業も手堅く広がっているものだな」
「えーと?」
「おい、店員が困ってるだろう。何変なこと口走ってるんだ」
「いやなんというかだな、結構老舗という雰囲気が漂っているし、こういう側面なら歴史書なんかよりもその時代に行きているか受け継いでいる人に聞いたほうが詳しく聞かれると思ってね」
「あの?この人は、その大丈夫なんですか?」
無理もない、俺が一番聞きたい
というか歴史だの本だの文官よりの発言しているときのこいつ心なしか機嫌よくないか?
そう思っていると
店員の後方から叱責とともに馴染みの店主が現れた
「こら!客に向かって失礼なこと言ってるんじゃない!失礼致しました、ミラオス様とヨミキリさんですね」
「ああ、そうだ。しかしこの国は首都にしては教会が少ない上にこういった職人のいる商業区が多いな」
「不思議に思いますでしょう?確かに商売で金をもらうことを遺憾と思う方はいらっしゃいますがね、寧ろそれを推奨しているんですよ」
「宗教上で?それとも教皇でか?」
「数代前の教皇の命ですね、それからはずっと。元々……」
「成る程、だからこんなにも……」
すっかり話が弾んでいるな、こりゃ当分終わりそうにもな
ずっと聞き続けているわけにもいかないので、先程叱られた店員に防具を渡し
以前注文していたコートの最終調整してもらったり
小一時間ほど経ってから戻ると、未だ雑談していた
「そこまで古くから続けているのか、入った時の雰囲気から違うもんだな」
「そう言っていただきありがたいですな、そもそもこの店を建てた初代店主はここから北に位置する技術の国と評されている国で14年も修行していたそうです」
「14年も……なるほどそのときからエンチャントが」
「ああ、いえ。ご先祖の時の書物ではそういったものが何故か見つかりませんでしたのでその後の店長が身につけたのでしょう」
「年代からすると件の大戦後といっ……」
いい加減どっかで話を切らないと日が沈むまで話を続けそうだ……
他の店員がかなり引き始めてるぞ
「ヨミキリ!いつまで話してんだ、さっさと採寸して適当な服を見繕ってもらえ」
「あ、ああ、そういえばそうだったな」
「いやはや、久々に話し込んでしまいましたわい、どれ私が自ら作りましょう」
「それはありがたい」
「どういったものをご入用ですか?」
「普段着用に……「鎧が隠れるぐらいのロングコートを」おい」
「まあまあ、先に鎧の寸法取ってから、脱いでもらえばいいですから」
……そう店主が言うならいいんだが……
ああ、そういえばこいつはまだだったか
2時間位かかるとみていいか
ここの店主、男色の気は無いんだがなぁ
セクハラまがいのことをしてくるのはどうにもならないのか?
「しばらくしたら、そうだなコイツの採寸が終わるぐらいには戻る、好きにしてやってくれ」
「おい、ミラオスそれどういう意味だ?」
「たしかこういうときはこう言えばよかったか、グッドラック」
店を出て間髪入れず、男の悲鳴が聞こえるのを確認した後
昔行ったことのある店で食べ物を買っていこうと通りに向かった
書き溜め分がなくなったので次回の投稿はかなり間が空きます




