停止した歯車
その後軽く会釈した後にギルダーが出ていくのを見送った
程なくしてミラオスたちがやって来る
エールを人数分頼み、手招きして位置を知らせる
「急に呼び出してどうしたの、森について何か手に入ったの?」
「いや目途はたったがまだだ、今回は多大な迷惑をかけたことに謝罪するために呼んだんだ、すまなかった」
「「「……」」」
沈黙が痛い、さすがに予期しないアクシデントが多発したせいだとは言え、発端は俺にあることには違いがない
結果として多大な迷惑をかけたことに対する非難をされたとしても受け入れる覚悟ぐらいは出来ている
「はぁ……、ヨミキリお前って意外に人のことを考えるやつなんだな」
「……………どういう、意味だ?」
「たしかに色々と思うところはあるけど、貴方は貴方なりに最善を尽くしたことは聞いたよ」
「寧ろ、襲いかかられている人を助けずに放っておく選択をしていたなら私たちはお前を見くびるところだ」
「だが……俺はお前らを無意味に危険なことに巻き込んだわけだぞ」
「そうだな、それでもだ、お前がやったことは正しいことだ」
「終わり良ければ全て良し、でしょ?」
「そういうものなのか?」
向こうでもよく言われていたな
やること為すこと人に優しくないくせに甘い、とかな
「まあ、それでも納得いかないならここのご飯奢りってことで、よろしく」
「ミルスに賛成だ」
「同じく私も賛成だ、ということでじゃんじゃん頼むとするか」
自然と笑みが溢れる
なんだ、気にしてた俺が馬鹿じゃないか
まったくこっちに来てから碌な目に合わなかったが、どうしてなかなかいいもんじゃないか
ヘルムをつけてて良かった、悟られる訳にはいかないしな
「手加減してくれると嬉しいんだが」
「知ってるぞ、ちゃっかり報酬とかもらってるそうじゃないか」
ぐっ、どこでそんな情報を
どうしたものかと視線を彷徨わせてみると
包帯まみれの情報屋が親指立てていた
一体どこで接触しやがった・・・!?
「そういうお前らだってもらってるんだろ?」
「ご名答、でも申し訳が立たないんなら我慢我慢」
「すいません、これとこれ、あとこれも持ってきてください」
「じゃあ、俺も…………」
各々が頼みたいものを頼み、小さい宴が始まりだす
夜が更けてきたせいで周りも盛り上がり始める
喧騒に満ちた場で独りごちる
「ま、こういうのもいいか」
『嬉しそうですね、こちらに来てからのヨミキリは表情が豊かですね』
「……何も変わっていない、今の俺は約束で生かされている」
『……スキルとの同期が完了しました』
「ようやくか、視覚情報として後で調整してくれ」
『了解、それとこちらに来る際に持ってきたアタッシュケースにこんなものが入ってました』
映像処理したものを確認すると一発の弾丸が表示されていた
コンセプトとしてどんなものにも貫通し、そして最大効率で破壊すると銘打たれていた弾で、文字通りの性能を有していた
だがその威力故に販売中止に陥ったそれがどうして入っているのだろうか
入れた記憶はないんだが……
「おーい、ぼーっと黙ってんじゃなくてお前も頼め、んで食え飲め」
「ん、ああ、そうだな」
「なんか悩んでるみたいだろうがお前が異世界出身だからと言ってどうこうも言わんし、取り敢えず今は忘れろ」
あー、隠してたわけじゃないが説明もしなきゃいけないか
「そうだな、腹も空いたしなんかガッツリしたもんでも頼むか」
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宿屋二人部屋
0:11a.m.
あれから夜通し飲み食いされたおかげで個人報酬の幾らかが吹っ飛んだ
さすが冒険者と言うべきか、躊躇なく頼みやがって・・・・
夜が更け、外を照らすのは星々の幽かな光とゲルズと呼ばれている月の光だけだ
ここにはネオンの光もなければ家々を灯す電燈も無い
「春といえど星は綺麗なもんだな…」
「何言ってんだ、星ならいつでも見えるだろ」
振り返るとミラオスが呆れた表情で立っていた
「なんだ、起きてたのか」
「そりゃこっちの台詞だ、どうしたんだ?」
さて、どうして起きてんだろうな
寝る気になれないからか、それとも
「どうせ聞きたいんじゃないかと思って起きてたんだ」
「何をだ、というのも野暮か……お前は誰なんだ?」
「俺はヨミキリだ、異世界……お前たちで言う勇者たちの世界から気がついたら来ていた」
「ということはお前も?」
「どうやら違うらしい、漂流者と言うそうだ」
「ふーん、英雄とあのガキは言っていたがそれは?」
「さてね、少なくとも英雄と持て囃されることはしていない、けれども」
「けれども?」
「傍から見れば世界を救ったと口々にそういうだろうな」
「何が言いたい」
「人殺しはどんなに華美しても所詮人殺しだということだ」
そう言いつつ、拳銃を投げ渡す
無論マガジンを空にして安全装置をつけた状態だからな
「これは?」
「俺の気まぐれだ、撃ち方を後で教える」
「さっきとの話との関連は?」
「俺がよく使うのも銃だ、銃は人に殺す時の恐怖心を失くす」
「えらく物騒だな」
「どんな武器も物騒だろ、易かれ難かれ命を断てる道具なんだから」
「……どうしてこれを?」
「さっき言ったろ、気まぐれさ 必要な気がしただけ」
続けられる話題では無いせいかしばらく沈黙が続いてしまう
寝るには醒めすぎているし、あいつの方も何か喋りたいらしい
「……酒でも飲むか?」
「ああ、頼む」
酒場で購入した酒を木のコップに注ぎながら問う
「なぜ今回の依頼に参加した?」
「前にも言ったろ、銀の座には金が無い」
「本当にそうか?軽く調べただけでも十二分すぎるほど稼いでいる額が出たぞ」
「本部で一度回収「そういうことが聞きたいんじゃない、もう一度いう何故この依頼を受けた?」
なあどうしてだ?どうして俺が問うたびに痛みを抑えるみたいに険しい顔をする?
顔を合わせるたびに申し訳無さそうな笑みを見せる?
「何も言わず聞いてくれるか?」
「もちろんだ」
深呼吸をした後意を決したように喋り始める
「…………はぁ、ヨミキリ、ワールドスカイに入ってくれないか?」
「…………」
「今銀の座にはとある計画を練っている、そのために……資金が必要だ人が必要だ
そこで座長はお前の能力を見込んで…………その、移って、くれないか?」
「…………それは出来ない」
「どうしてだ?お前には別段彼らとは特別な関わりが」
「ああたしかに無い、だが俺は……そうだなどうにも性に合わないんだ組織ってやつが」
どうにもこうにも動きづらいし、息苦しいものを感じる
多分彼処に居たときもそうだったんだろう
だからこそ半ば放任主義のメタルズギルドに所属した
「それによ、騎士なんてそんなおとぎ話に出てくるような英雄にはとてもじゃないが成れない」
「……」
「それともう一つある」
「なんだ?」
「俺の友人に何を仕掛けているかは知らんが俺は貴様の駒になる気なんざ一欠片もない」
「な!?」
「いいかよく訊け、貴様の企んでいることが正か邪かなんぞ知ったことじゃない
だがな、俺の人生は俺のものだ、俺の才能も俺のものだ俺の行路も俺のものだ
そしてコイツの、ミラオスの未来はミラオスのものだ、もう一度よく訊け貴様が善か悪なんか興味がない、だから宣言してやろうお前と出会うときは貴様を正面から叩き潰しにやって来る、友が苦しむ様なんか見たか無いんだよ!」
何故分かっただって?聞くまでもない、ベルゴース迷宮事件の後から片っ端から調べ上げたからだ
銀の座の座長の女エルフめ、俺を結構調べているようだが情報をうまく隠し切るなんて上等じゃないか、調べきれないやつなんてお前が二人目だ
それと未だにアルンクレスの考えていることは分からないが何かを企んでいることは確かだ
何を理由に無茶振りを吹っ掛けているか問い詰めないとな
「ヨミキリ……」
「っと、実際にその座長とやらが聞いてる可能性があるかは微妙だが少なくとも牽制にはなっただろう」
「な……はぁ、結構お前って賭けに出ること多いよな」
何を呆れてるんだ?
俺はただ正しいと思ったことにしか強く出ないぞ
魔法だのスキルだのがあるんだ、何が起きてもおかしくはない
ただ、他にもこっちに来ているヤツのせいか
技術の発展具合に多少のズレが見えているな
それを加味すると盗聴盗撮できるものらいあるのは前提として入れてもいいかもな
「よく言われるが、なんとなく解るんだよ、俺はそれに従っているだけ」
「羨ましいよ、俺はお前が心底羨ましい」
「そうか?なら笑うといい、人は辛いからこそ笑顔を作らなきゃいけなかったぐらいだからな」
「お前の笑ってる顔一度も見たこと無いぞ」
「違いない」




