歯のない歯車 Ⅲ
一瞬の出来事だった
全員が跪いている、村長っぽい爺を除いて
気を抜くと俺も同じことになりそうだ
「おい、お前も跪こうとするな!?」
【しゃあないでしょうに】
「これはこれは、時の神よどういった御用ですかな」
爺が手を胸につけて礼をしているか・・・まあ敵意は一時的になくなったなじゃあ
『まだ、離してはいけませんよ』
「わかってる」
『離そうとしたくせに』
何故急に離そうと思った!ビーは鎧と連動してるからひとまず助かった、のか?
しかしまああいつにあそこまで影響されるとはなぁ
【で、其の子を離してくれるかい、ヨミキリくん?】
またか!手が・・・離れそうになる!
『ヨミキリ?何を?』
「離すなよビー」
『分かりました』
これでなんとかなるか
【君が放さないと次に進まないんだけど】
時の神がトーンを下げて言ったときにすでに視界から消えていた
いない!?どこだ?
『後ろです』
【離して、く、れ、る、か、な?】
「ちっ、痛みを戻すな。ビー離して、いいぞ」
『しかし』
「離さないと色々やばそうだ」
開放すると同時にエルフの女性、サラが跪く
これではまるで俺がそうさせてるみたいじゃないか
「離したぜ、ついでだ、銃もおろそうじゃないか」
『ヨミキ―――「相手のほうが上だ」
【話が早くてほーんと助かる】
嫌味な奴め、気に食わない笑顔しやがって
背中に針のようなもので脅しやがって
「で?要件は?」
【面倒事から開放してあげたのに、そこまで気に食わない?】
「そこまでにんやりされるとなあ」
【ニヤニヤニヤ】
「言葉にしなくていい」
【ここの長】
「なんでございましょうかの」
【この人(?)を2ヶ月ここに置いといてやってくれるか?勉強や武道やらなんやら教えてあげて】
おい今オレに対して疑問形つけやがったぞ紛れも無い人間だ
ていうか2ヶ月だって?長すぎる
「しかし・・・」
【こいつはガイアから来たんだクノウではない】
「ガイア?」
【召喚者、といえばわかるかな】
いるのかやっぱり
「この者が?召喚主は?」
【いやいや違うよ来た場所が一緒なだけ。関係性もないし、ましてや召喚もされてない】
「では【これ以上の詮索はやめてね、ご老体】
【じゃあね、ヨミキリ。また会おう】
「ちょっ、ま」
消えた、音もない、反応すらもない。
夢だったらいいのにな全く、いやいまは現実か
まだ腕が痛む、生きてるんだな、まだ
俺はそのままへたり込む。はあ疲れた
「だ、だいじょうぶ?」
「ああ、サラさん済まなかったな。あんたこそ大丈夫か」
そう言って手を差し伸べてもらい立ち上がる
「え、ええ」
「鎧のお方よ。無礼をかけて申し訳ないの」
そんな顔してねえくせに
「かしこまらなくていいだろ。それに俺の名はヨミキリだ。漂流者なのかな」
「ふぉふぉふぉ、わしの名はザークじゃ。村長なのかの」
そう言って 右手で 握手を交わす
こいつ露骨に爪立てて来やがるまあ痛くも痒くもな…くない手甲つけてないこの野郎…
「よ ろ し く ザーク村長(不明)」
「よ ろ し く ですなヨミキリ殿(漂流者)」
老人は鋭い爪を立て鎧は負けじと固く握手する
見るからにガキの喧嘩だな
「『何やってんですか(の)あなた達は』」
「「握手してるだけだが(じゃがの)」」