交差する歯車
Side:Unknown
やあ、ここで君と会えるとは幸運だ
どうだい?そこで少しお茶を飲まないか
……そんな睨むなよ、"まだ"敵じゃあるまいんだから
エスプレッソを一杯、そこの連れにはカフェオレを
ここの店はうまいと評判なんだ、さすが《勇者様》が建てただけある
本題に移れって?まあそう急くな、珈琲が来るまで少し補足説明と行こうか
今現在、隣国の国教つまり一神教のアルテミナ教は多神教の主サングレス神教と比肩を為している
アルテミナ神聖教国はその名を成すとおりアルテミナ教の聖地を有する大国だ
教皇は指名制で死期を悟ると、一人を指名する
どんな方法で指名するかは俺達にはさっぱりだがね
政教が文字通り根本から結びついていることを除けば他の王権国家と大差ないな
いくら教会の力が強くてもその教会が一枚岩ではない、今回はそれが問題となっているわけだ
ん、コーヒーどうもこれチップね、今度遊びに行かない?
あ、そう残念
そんな睨むなよ、別に減るものでもないだろ?
本題と移るわけだが
そう、一枚岩ではない人の集団だからな
そのままにしておくと腐敗してしまう
今回の場合それが表に出かけている状態だ
どっかのお偉いさんのおかげで取り繕っている
有能のくせに変な方向に努力してるのは残念だが
そんな有能なお偉いさんが犯したミスは3つ
一つ、教皇は指名制であるが、皆魔眼を有している
その事実は教皇とロイヤルにしか伝えられていない
え、俺が知ってる理由だって?まあ、色々あったのさ
二つ、どんなことであれ死期を悟らないかぎり、驚異的な運で生き延びる
それが致死の呪いでもだ、つっても解呪ぐらい容易いけどな連中
これは先代が公言してたな
三つ、これは……そうだな、自身の力を過信しすぎたってこと、だな
どういう意味かって?
どんなに周到に用意しても、それを無意識で潰せる相手がそこにいたというだけだ
あの鎧の男か、だって?まあ、そうとも言えるしそうでないとも言える
あだだ、頬を引っ張るな、頬を
わかったよ、今回の教皇は今までで類を見ないほどの傑物だ
あの魔眼もしかり、運もしかり、おそらくスキルも
あの初代に匹敵するんじゃないか?
で、結局何が言いたいのかって?
公になったわけではないが存在が知れ渡ったんだ、貴様らは
でだ、うちに入らないか、組織は大きくなりすぎた
そのうち潰される、いや潰す
だからその前にこっち側に来い
すぐには決まらんだろうが決心がついたらまた会おう
良い返事を待ってるぞ
ああ、それとその右手、いい義手職人を知ってるから入ったら紹介する
行っちまったか、さて盗み見してる君だけど
少し話をしようじゃないか、《勇者様》、いや《漂流者》君?
Side:Yomikiri
0:24p.m.
教城アルテミナ城内
「おーこの城の設計した奴は偉大だな、天窓をつけるとは技術力も凄いなぁ」
「黙って前を進め」
「良いじゃないか、こうでもなきゃ見れるもんじゃないだろう?」
「洗礼を受ければ入れますよ、お金がかかりますが」
「俺別に信仰心とか無いし、そのために掛ける金がもったいない」
「教皇聖下、この者と言葉を交わすのは感心しません お前は黙ってろ」
俺は後ろ手を縛られ連行されていた、その近くには教皇がいるはずだが直属護衛騎士達によって阻まれている
できうる限りの準備はしたが、舞台の小細工は出来なかったのが痛い
装飾でごまかされた罠でも仕掛けられたらジエンド
でも、相手が内部犯ならおそらくは・・・・
(本当にこれで良いんだろうな?)
(さーな、成るように為れさ)
(今ここで叩き切っても良いのだぞ)
(そりゃ困る、俺はさっさと仲間と合流したいんだ 向こう岸で待ちたか無い)
(向こう岸が何かは知らないが、手筈通りに動けよ)
(こっちの台詞だ、何言われても激昂するなよ)
あーそういや、後で合流するといったきり何も連絡寄越してないな
後で滅茶苦茶怒られるだろうな
現在俺たちは誘拐犯を捕らえた騎士隊と言う体で謁見の間に移動している
直属護衛もといロイヤルの伝で中に枢機卿や大司教を呼び出させている
黒幕がこの中にいれば僥倖なのだが、まあ十中八九いるだろうな
今回の騒動を皮切りに警戒レベルが跳ね上がるから、仕留めるとしたらここだろう
(あんたらなら誰が犯人だと思う?)
(黒と紫のクロークを纏った奴らのことか?話にも聞いたこともないな)
(ああ、そうじゃなくて今回の舞台を仕上げた人物だよ)
(こちらとしては重大なことだ舞台と口にするな)
(すまん、で誰だと思う?)
(おそらくだが、反教皇派の内の誰かだろう)
(うっわー、今代はお若いから保守派の誰かってことか……面倒くさいな)
(内情は事前に教えただろう、よもや忘れたわけではないな?)
正直、教皇の説明は耳に通すだけ無駄な感じがする
ぐうの音も出ない程に聖人すぎるだろうに
何が
「神の名のもとに行われる政に一切の我欲はありません」
だ、結局は人が行う政治だろうに、一枚岩だと断言できるのは一周回って羨ましい限りだ
それに同調するロイヤルもロイヤルだが
それはさておき派閥が綺麗に二分されているのは厄介だな
先代教皇が決めた方だから若くとも正当な教皇と豪語する現教皇派
市井生まれの者に教皇が務まるわけがないと反論する反教皇派
どちらかに傾倒するわけもいかないが白熱すると面倒くさい事この上ない
面倒な方向に荒れないと良いが
(後手に回らざる負えないってのは辛いところだな)
(何?)
(どちらの派閥にも気をつけたほうが良い、今回の厳罰対象はおそらくお前らだ)
(……)
(もう一度言う何が起こっても狼狽えるな、俺とお前らは中に入ったら知らぬ仲だ、いいな)
(あい分かった、教皇を傷つけた輩は決してただでは済まさん!!」
「騎士長、私無傷ですよ?」
「そりゃ、手優しく取り扱ったからな」
「アレの何処が!?」
騎士長に手加減抜きの拳骨をもらってから仕方なく黙る
ここまでは俺ら以外に誰もいなかったがこれ以上の会話は盗聴される可能性が高いということだ
謁見の間の扉に立ち、騎士達に連行され、中央に跪かされた右手には
「此処で会ったが百年目かな?元リーダー」
「恩を仇に返すにしても笑えん冗句だぞ?」
「お前らには仲間の情というやつがないのか、それでも庇いきれんが……なあ、ヨミキリ」
「いやー、後で連絡するといったのに忘れた挙句遅れて来てゴメンな?」
「お前も大概だな!?」
俺の無罪を証明する上で最も非協力的で最も頼れる仲間がそこにいた
ただひとつ侮蔑しながら敵を見る目を除けばありがたい再会だった




