表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没・Karma Gear Story  作者: D.D
空回りの歯車
67/78

再びの歯車

 爆発時に起きた衝撃を含めて、屋根上に飛び乗る


 ふぅ、なんとか上手くいったか

 だがこれって、客観的にも証拠的にも俺犯罪者じゃね?


「全員無事だな?あの者を捕らえろ!教皇様を強制転移させた者の配下やもしれん!」


 良かった、生きてたか間違って死なれたら目覚め悪いからな

 というか教皇?誰が


「シャネム教皇!今助けますぞ!」


 こいつが?いやいや、ないない

 そんなお偉いさんがこんなトコに居ない、居る訳無い


「おいお前、さっきの」

「お前ではありません、私にはシャネムって名前があります」

「……さっき下の奴が叫んでた教皇ってもしや?」

「ええ、そうです」


 これが後の世代にも続く、神を信仰しない俺と姿なき神を拝する教皇の最初の邂逅だった

 そこに運命的なものを感じるはずもなくむしろ頭痛を感じながら、屋根伝いで逃げ始める

 というか、またか!


「って、なんで逃げるんですか?」

「どう見たって、話し聞いてくれる目つきじゃなかったぞ!あれ」

「私が一声かければ……ひっ!?」


 止めてくれる、とでも言おうとしたんだろうが、直後の金属同士が削り合う不協和音によって遮られる

 フェイスガードが少し削れたか、どんだけいい弓矢持ってるんだ?

 スキルを使用していなかったら今頃口から矢が出てたぞ


『瞬間的に捉えた画像を閲覧しますか?余裕があればですけど』

「端的にどんなものか伝えてくれ」

『金属矢でしたので貫通をメインとしたものでしょう』

「どんな膂力してんだよそいつ」


 バインド系の魔法で足を取られる前に屋根から降りて人混みを横切る

 何事かとパニックを起こしている民衆を使い足止めをするが、すぐに追いつかれるか

 ふと周囲を見渡した際にミラオスが宿に向かっていくのが見えた

 助けを求められるか?いや、巻き込むのは悪手だな

 それにこの状況だ、時間が取れるとも思えない


「って、いい加減放してください!」

「黙ってな、舌噛むぞ」


 追手を撒いて暫く経った後に、襲撃を受けた地点へと戻る

 抱えている教皇を下ろした後周りの確認をする

 そう睨むなよ、誰のおかげで生きていると思っている

 爆破で黒ずんだ痕と微かに腕を撃った時の血痕が残っている

 本当に全員無事だったか、それは良かった


「今日はとんだ厄日ですね……神よ、これは試練なのですかそれとも」

「どっかの誰かの必然の悪意だろ、よく見てみろ」

「よく見ろって、爆破痕と貴方が吹き飛ばした腕の血の跡しかありませんよ」

「そうだが、おかしくないか。死体どころかそれ以外の血痕が無いなんて」

「!?……言われてみればおかしいですね、それに民達がその異変に気づいて近寄ってきそうですのに」


 持続する隠蔽系の魔法でも使ったのか?

 いや、だが俺が来た時には使わせる暇は与えなかったぞ

 俺が来る以前に仕掛けたのか?

 だがそれだと俺が気づけたというのもおかしな話だ


「考えても埒が明かないな、取り敢えずもう一度聞くお前は誰だ?」

「もう少し進んだとこにあるアルテミナ神聖教国教皇のシャネムです、以後お見知り置きを」

「冒険者のヨミキリだ、もう一つ聞くなんでそんな国のトップがこんなトコに居る」

「……それは機密事項です」

「では質問を変えよう、さっきのが強制転移と叫んだがそれはわざと術式ないし詠唱を崩して暴走させたもので違いはないか?」


 少なくとも強制的に行使する類ではないはずだ

 あれは知っているものが少ない上に、デメリットが大きすぎる

 となると、意図して暴走させたほうがリスクはあるがまだ実用的だ

 まあこの問にも無言を貫かれたが、ここに至るまでの情報は集まってきた


「あとは、どうして此処に飛ばされたのかを知ることが出来たのか」

「え?飛ばした相手ならわかるでしょう?」

「あー、強制発動でも暴走発動でもそうだが、アレを行うに手っ取り早いのが対象座標を定めないことなんだ、むしろ今回の場合対象範囲を不定にするのは下策だからな、それに」

「それに?」

「何処へ飛んだかを探知できなくするという、最大のメリットでもあり最悪のデメリットを有しているんだよ」


 それなのに探知できたというのは、余程の演算者か、スキル持ちということか

 それとも……む、足音かもう此処が割れたのか

 支援玉(煙玉や騒玉、閃玉などの相手の認識を阻害するのに使う球状のもののことを指す、この場合煙玉)を叩きつけて煙を出し、相手の隙間をぬって逃げる


「取り敢えず移動するぞ、あいつら完全に俺の居場所を理解している」

「むしろそれっていいんじゃ、ってうわあああああああ!!?」


 確かに引き渡すのも、方法としてあるだが

 どう見てもこれ、引き渡したらこいつ暗殺パターンで俺巻き添えで死ぬ

 何が人助けると尚良しだ、とんだ災難だな!?


「ふぅ、これで一旦はしのげるだろ……」

「おえぇぇぇ、気持ち悪い、左右だけじゃなく上下にも移動するとか人が為す技じゃないですよ」

「お前の中の人の限界って案外浅いな、向こう(・・・)じゃ日常茶飯事だったぞ」


 情報が足りない、集まってるがまだ足りない

 意図も方法も不明瞭すぎる

 そのせいで大きく行動できないしな、正直八方ふさがりだ


「で、何が起きてるんだ?情報屋」

「えぇ!?いつからそこに」


 逃げている時に合図を送られていたから、ある程度撒いた後に合流地点に来たわけだが

 居るという事前情報なければ誰も気づけないな

 つい先程女だということを知った情報屋に紙を二枚渡される

 一枚目は羊皮紙で手配書だな、それも高額の懸賞金そして明瞭に記載されている顔は


「やはりというべきか俺だな、のっぺらぼうで手抜き感満載だが」

「納得できるような納得出来ないような……」


 で、もう一枚は……なるほどね

 何だ最初っから舞台は誂えているじゃないか

 なら俺達はそこに上るだけでいい、簡単だな

 この手配書の裏に必要なことだけ書いて宿に置いとくよう指示して、見送る


「さて、向かうとするぞ」

「……今度は何処ですか?不本意ながら少し楽しくなってきましたよ」

「そいつは良かった俺は楽しくないからバランスが取れてちょうどいい、で場所だが」






「お前の家、則ちアルテミナ教総本山、教城アルテミナだ、そして」


 黒幕は依然不明、理由も分からない

 だがこれだけはわかる、こうもお膳立てがされているなら

 崩したくなるのが人の常だよな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ