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没・Karma Gear Story  作者: D.D
空回りの歯車
61/78

旅立つ騎士

 Side:Miraosu

 CGUC出発から3日後

 夜の0時頃

 街道沿い野営地


「引き抜き、か・・・・無茶を言う」


 焚き火の火を絶やさないように枝を放りながら見張りをする

 放り込まれた枝がパチッパチッと弾ける音を聞くのが好きだ

 獣たちが寝静まって、吹き抜ける風音と火が燃える音を聞くといつも考えに耽ってしまう

 なぜ俺はここにいるのかとかどうしてこんなことをしているかってそんな下らないことを一人ぽつんと考えるのがある種束縛から抜け出たようで好きだ


 今回出された任務、ヨミキリを引き抜くこと

 メタルズギルドはその名の通り金属のように固い結束で結ばれている

 以前にもうちのメンバーの何人かが引き抜こうとしたが悉くダメだったらしい

 曰く、あのマスターには返しきれない恩義がある

 曰く、あのギルドに離れることの出来ないものがあそこにはある

 曰く、あそこには旨い酒と巡り合う天運みたいのがあるからのう

 こう言った理由で断られてきた

 そのことを彼らのマスターに話さなかったのか、あるいは知っていて無視しているのか

 銀の座とは比較的良い関係を保ってくれている


 だから座長は言った

 日の浅い彼ならば引き抜けるかもや知れないと

 そして彼には、あそこにとどまり続ける決定的なものはないと

 おそらくそうなのかもしれない

 だが、果たしてそれでいいのだろうか

 そんなことをしたらワールドスカイいや、銀の座とメタルズギルドは決定的に且つ埋めることのできない溝を作ることになる

 やめるべきか・・・・?

 いや、ここまで来てしまったんだやるしか無い、か


 ふと空をみあげてみると雲一つない満天の星空が見えた

 あの時も、こんな空の下に集って誓ったな

 あの時から俺たちは戻れなくなってしまった


「な~に、思いつめた顔してるの?」

「うわっ!?」


 顔を戻すとさっきまで寝てたはずのミルスが起き上がってこっちを覗き込んでいた

 布の擦れる音がしなかったから予想だもせず変な声が出てしまった

 正直恥ずかしい


「ど、どうしたんだ?」

「どうしたもこうしたも交代の時間よ、明日に備えて寝なさい」


 さっきの驚きのせいで眠気がふっとんでしまったから、寝ようにも寝れないな


「未だ時間があるから起きているとするさ、それにここは街道に近い

 魔物が出ることもないだろう、出るとしても山賊連中だし、それなら俺一人でも充分に返り討ちにできるからな」


 ふ~ん、と納得してない顔を浮かべながら

 お互いに周りに目をやりつつ雑談をする


「ねえ、ミラオスってどうしてワールドスカイに?」

「どうして、か・・・・ワールドスカイの噂って知ってるか?」

「まあ、嫌でも入ってくるからね」

「最初に断っておくがその噂は本当だ」

「やっぱり」

「ただそういう連中は銅の座がほぼ全てだ」

「なんで冒険者なのに騎士をするんだろうね」


 なんで、か

 今までそういうのは考えていなかった

 考える暇のない新人の頃

 ひたすら訓練と実戦に明け暮れていた銅の座の頃

 新しく変わって入ってきた座長に出会った初期の銀の座の頃

 あの時から誓った今

 結局何をしてきたかったかなんて分からない


「騎士になれなかったから・・・・いや違うな」


 どうして騎士に憧れたんだろうな

 そう考えてようやく得心がいった

 そうだ憧れていたんだ

 騎士物語に出てくる騎士がたまらなく輝いていたから

 侵されざる崇高で守るべき者のために戦うその姿に

 ひどく憧れていたんだ


「騎士になりたかったから、どんなに歪んでいてもなりたかったからだ」


 今の彼らはどうして騎士になりたかったのだろうか

 金のため

 名誉のため

 女のため

 権力を誇示するため

 自分の権威を護るため

 そんな理由かもしれない

 でも昔は皆同じだったはずだ

 そして挫折した

 だからここにいる


 ただそれは単なる独りよがりだと彼女の重い一言で思い出す


「高尚なことだね、こんな職業しかない私達と違って、ギルド連合都市に護られなきゃ生きていけない私達と違って、それでも帰る家があるあなた達は私達からして非常に醜い」


 そうだ、だからこそ

 このギルドは、俺たちは彼らと根本的に合わない

 彼らには一つにとどまる家がない、必要が無いのではなく必要とするほどの余裕が無いからだ

 職人ギルドや商人ギルドでもそうだ、借りた部屋で精一杯生活してるに過ぎない

 いつでも帰れてしまう俺らと違って


「帰る家を奪うあなた達が憎い、守ってくれないお前たちが大嫌いだ

 だけど、それを今更どうこういったって仕方がない」

「……俺に何を言わせたいんだ?」

「いや?ただこっちの気持ちも知ってほしいなと思っただけだよ」


 怒りが篭った言葉から一転して軽い口調に戻ったのを半ば驚きながらもその言葉を反芻する


 こっちの気持ちも知ってほしい、か

 それはこっちの台詞だって言ってやりたい

 俺達だって命を張っていることを


「でも、まあ私達も他の人たちからしては恵まれているのよね」

「え?」

「誰でも受け入れる中央以外の5大ギルドは入れるだけでも幸運なのよ」


 そういえばそうだ、どのギルドでも入るにはそれぞれ独自の条件が必要だったはずだ

 ワールドスカイは金と修道司祭以上の洗礼が必要となる、だったか


「メタルズギルドはギルドマスターに興味を持たれること、たったそれだけ」

「そうなのか?だがアイツすごく追いかけられてなかったか?」


 鎧を着たまま寝ているヨミキリを見つつ言う

 体痛めないのか?


「あー、あれは悪質なギルドの洗浄を実施するときに引っ掛かったからね」


 運が悪いな、本当に同情するよ


「話は戻すが、お前はなぜメタルズギルドに?」

「それは・・・・」

 ~~~~~~~~~~~~~

 CGUC出発から20日後

 昼の20時

 国境前の巡礼村、食堂


「ようやく神聖教国境か」

「えらく遠いとこにあるな、CGUC周りは環境も良さそうだからどの国も欲しがりそうなもんだが……」

「どの国も欲しがってるからこそ、それが抑止力になってるしCGUCの軍備力はバカにできないからだとゴブリン爺さんたちが言ってたぞ」

「そのゴブリンほんとにゴブリンか?」

「ホブゴブリンだから正確には違うみたいだけど、あの教養の良さは凄いとしか言いようが無いね、飲兵衛だけど」


 国家間のいざこざに無関係な奴が来るだけでも煙たがられているのによくそいつらを送り出せるよな……


 そんなギルド事情に呆れながら宿屋を目指そうと席を立とうとする

 その直後


「ところで、神聖教国ってどの神を信仰してるんだ?」


 その疑問に俺を含めた3人が動きを止めた

 と言うより、この場の空気そのものが止まったと感じる

 周りから心地良くない目線が刺さってくる


「な、何を言ってるんだ……?か、神は一柱しかいないじゃないか」

「いや、だが俺は神を名乗ったやつと二……」

「いいか!神は一柱しかいない!!」

「だが…」

「ここが未だ国境前だからいいけど、これから神聖教国に入るんだから滅多なことを言わないでよね!」

「あー成る程、迷惑かけたそういやそうだったな。その二人は自称してただけの痛い奴だったし」

「むしろそんな罰当たりな事ができるな……」


 俺達の必死のフォローのおかげでようやくヨミキリは発言を改めてくれた

 世界規模の宗教のその国境付近でとんでもない爆弾を落としやがって……

 冗談にしても、状況が悪すぎる

 ……本当に会ってないよな?


 因みに部屋はそれぞれ個室をとった


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