止まらぬ歯車 Ⅱ
Side:Yomikiri
Metal'Guilds本部ギルドマスター執務室
A.M.19:15
迷宮事件からはや半年が経った
あの後にも大きなことがあったが俺の担当ではなくゴブリン爺さんたちのジャイアントキリングやらドワーフの国の内紛をギルドが干渉してる間、俺はとある依頼を中心にその時々でパーティを組み、各地を転々としていた
その依頼も終えて、護衛依頼をとってようやくCGUCへと帰って来て報告するだけなのだが
「話し聞いてるか?」
「聞いてる聞いてる、疲れた俺のために激励してくれるんだろ?」
「いやそうじゃない。はあ、もう一度説明するぞ」
書類仕事をしていたギルドマスターのアルンクレスがため息を付きながらもう一度説明をする
なんか済まないな、時折五感のどれかが効かなくなるんだよ
と、心の中で謝っておいて説明に耳を傾ける
「CGUCを西にある神聖教国のさらに西に行ったところに《正気の森》という森がある
5大ギルドCGUC本部の内2つと都市配属されているギルド一つの許可がないと入ることが出来ない決まりとなっている。
本来君は迷宮事件を解決したとはいえ、冒険者になってからまだ半年だ
色を付けたとはいえランクは所詮中級中位
いわば、50:50、アベレージつまり一端の冒険者というわけだ
なので今回特別な許可証を発行するよう依頼するから、それを使って入るという話だ
肝心の内容だがその森を調査して欲しい」
「また一人でか?流石に無理があるぞ、それに土地勘がない」
「だから、森に対してアドバンテージがある二人、そしてワールドスカイから君のよく知っている人を雇った」
「久しぶりだな、ミキ」
「ああ・・・
そこにいたのは、とある依頼中にばったり出会いそこでここ所属だと知った
しつこい猫獣人の狩人ことミルスと珍しい魔道具を専門として使うミー(本名はミーティアらしい)そして
・・・誰だ?」
「よし表出ろ斬り伏せてやる」
深い青色の髪をした騎士は鞘から剣を抜こうとする振りをする
飽く迄も他ギルドのギルドマスターにいる前で手荒なマネはしないか
「まあ待てミラ、ほんの些細なジョークじゃないか、剣を抜くな、本気で斬りかかられたら死んでしまうし、色々と面倒だ」
流石にお互い冗談だとはわかってはいるから、臨戦態勢には誰も入らないだろう、と思った矢先に武器を構えるバカがいた
それもどう頑張ってもそいつが言ってはいけないような台詞を吐きながら
「うちの仲間に手を出すなら容赦しないぞ」
「おいおい、いくらうちの仲間でも街中で仲間になる予定のやつに対して被害度外視でどでかいのを放って逃げ出したお前も容赦はしたくないな?」
「終わった後も逃げ出すバカの代わりに必死に謝りまわったんだから許して下さいよぉ・・・」
コイツ逃げ出したのか、もう少し真面目なやつだと思ったのだが
やはり為人を第一印象だけで判断してはいけないな
――――思えば第一印象も宜しくはないな
そんな下らないことを考えながら青い髪の騎士に視線をやる
ミラ、ワールドスカイ銀の座所属ミラオス
彼の背負うタワーシールドは、件の迷宮最下層にて没していた冒険者の盾で複数名を守るために通常作られるものよりも一回りほど大きく作られている、それでいて軽さを追求をしているのか、素材若しくは軽量に関したエングローブによるエンチャントが施されて、動きを阻害することなく動いているように見られる
以前持っていたヒーターシールドは双尾の蛇により折られたが、あれから回収して作り直したのか以前使っていたラウンドシールドの代わりに小型のカイトシールドになっている
大きく変化が見られるのはその二つだが、細かいところも新調はされているみたいだ
更には、鎧の方も変えているようだ
以前はハーフプレートとフルプレートを要所要所で使い分けていたがどうやら統一化したらしく必要最低限の箇所にしか装甲を取り付けず機動性を重視しそれ以外の箇所は鎖帷子で補う形のようだ
更に頭部は以前つけていたフルフェイスの兜ではなく、無骨な装飾がなされたヘッドギアを装着している
あとで、『迷宮の剣豪』から盾について聞いた所相当のエンチャントも掛かっていたそうだ
「この二人はいいとして、他ギルドと動く程のことか?たかが」
「確かに、たかが森の探索であそこが人員をよこすわけがないだろう」
渡されたのは書類の束、表紙に書かれているのは・・・・・正気の森
確か新聞みたいのでは正気の森は上位中級ランクのメンバーが全員死亡したとだけしか書かれていなかった、少なくともどういう状況下で全滅したかの情報が得られるかを期待して読み進めていたのだが
「!?―――――これは・・・・・聞いていた以上に酷すぎるにも程があるんじゃないの?」
「嘘だろ・・・・探索隊の半数が壊滅って・・・・しかも情報が皆無って今までにない事例だろ!?」
書類の内容は今までの行方不明者、被害者、生存者が奇病に依って死んだ人数がほとんどで森に関する情報は極々わずかだった
ミラオスの云う通り、正気の森に関した情報であっても、これは単なる被害報告書だな
「いや、しかし、それ以上に気になるのが・・・・」
「奇病についてか・・・・・死体は見られるか?」
「ヨミキリ君それは不謹慎というものだよ、それにもう無い」
「無い・・・・?」
「文字通り消えてなくなった、体中貪り食われたような跡があったと目撃者は言ってたがね、ホントかどうかも疑わしい」
「土地勘がある二人は別として中央ではなくワールドスカイから雇う理由は?」
「こちらで割ける人員はもういないのと、俺とワールドスカイ、及び評議会ギルドの決定だ」
相当大事になってるじゃないか・・・・なぜ国やギルドは動かない?
―――――いや、動けないとするならば?
位置的にはかなり離れているから大規模部隊が動かせない
それに、国との交渉が必須となるからかなりの期日を要する
更に、人員に見合うだけの物資の調達が難しい
そのせいで、長期的にいや短期的でさえ探索は不可能
報告書から分かる通り、情報が得られないとすると見返りが薄いのも要因か
ならば近隣の国に任せるのは?
無理だ、誰も帰ってきていないのは当然、奇病で死んだことも知っていると見ていい
そんな中で探索に派遣しようとするわけがない
必然的に俺たちギルド、使い潰しが可能な冒険者に依頼が廻って来るんだろうな
それでも4人はきついだろう、PDSの交換ができたとはいえ、お世辞にも完全稼働と言える状況じゃない、失敗することを前提に話が進んでいるのか?
確か銀の座はこういった類を得意としているとあったはずだ
彼処なら少しぐらいコネがあるだろうから犠牲をだしにするのか?
「準備がとりかかり次第行ってくれと言いたいが、その前にヨミキリ」
「なんだ?」
「別の報告として回ってきてはいるが、過度な無謀はするな」
声を低めた彼の忠告が耳に響く
別の報告・・・・地方ギルドの連絡網からか
あれは無茶をするしかなかった状況だった
と言い訳が通じるわけがない、一歩間違ったらもっとひどいことになってたのは間違いなかった
「今度は、死ぬぞ今回は特に、というか今度こそ、か?」
「今度こそだね、あの後顔合わせた時の装備からして相当無茶してたみたいだしね」
「何やったんだお前は?この時期だとまだ幾分か早いが確か氾濫関係か?」




