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没・Karma Gear Story  作者: D.D
組み込まれた歯車
51/78

透明な歯車 Ⅲ

 Side:Yomikiri

「知っているよな、ドナウ街長」

「ええ、知っていますとも、この街が出来る前の偉人であり、友だったのですから」

「そうだな、知ってて当然だよな、同じパーティ所属だったんだからな」

「で、迷宮の異変は何だったのでしょうか」

「20階層異常種であり異形種の15メルス級ジャイアントアナコルダの心臓部」

「ああ、昇降機の入り口を塞いで「何故です?」

「何故とは?」

「何故塞いでいたと知っているのですか?」

「知っていなければ封鎖などしませんよ」

「いや、それはおかしいぞ。俺達はただ単に危険という理由で禁止されていた。それまでに誰も昇降機を使った奴は誰一人としていなかった、街長あなたも含めて」

「「「ああ、そうだ!」」」

「それは・・・皆さんの安全を考慮してですね」

「つまり知っていたんですね。アレが意図的に塞いでいたことも含め」

「どういう意味だ?」

「尻尾は自由に動く、なのに塞いでいる。おかしい話だ、まあそうとしか言えないんだが」

「焦らさずに答えろ」

「塞いでいるのは語弊がある、正確には繋がれている」

「繋がれている?何にだ」

「それはもちろん迷宮に」

「あそこは大部屋と昇降機がある部屋だけだ、異変前も後も。だから本来繋がれているわけがない」

「なぜか昇降機に繋がる通路を塞ぐように開いていた2つのしかも横に並んでいた大穴に嵌まっていた」

「とぐろも巻けないわけだな」

「そういえばどうやって倒したか聞いてないな、教えてくれるよな」

「大量の爆薬でドカンと、内部を断ってないと上手くいくか不安だったから苦労した」

「・・・そういえば昇降機を使っていたな、まさか」

「ちょっと待って下さい!許可無く使ったんですか!」

「あくまでも俺らは止めたぞ」

「いやあ大きな赤い鱗が並んだ壁があった時はびっくりしましたよ、思わず爆弾で塗り固めたくなるくらいに」

「そういや何故あそこで爆破しなかった?」

「昇降機も迷宮の一部に入るか不明だったし、巻き込まれたくなかった」

「おかげで死にかけたと」

「・・・」

「どうした?さっきから汗をかいてるが、今は夜なので涼しいぞ」

「でなんでそれがこの異変の原因なんだ?」

「さっきからガヤがうるさいぞ!黙ってな」

「この箱に見覚えはあるな」


 ビンゴ!動揺してるな

 最初のアナコルダの香草焼き、意図的にやったと思われる情報の錯誤、そしてこれ

 ひとつ、アナコルダの香草焼きは珍しいがサンド・スコピリオスの姿焼きの方が人気が高い、喉を鳴らす、基つばを飲むほど好きな奴はいない。無論彼もだ

 ふたつ、最愛の息子がナニカに殺されたというのに例えどんなことがあっても後で話す親は普通はいない

 そして


「な、なんですか、それは」

「そんなにゆっくり慎重に言わなくて結構、幻の呪われたアーティファクト、躍る屠殺場そしてこれ、よく出来てますね。遠隔操作可能な魔道具」

「・・・」

「しかも術式見せてもらいました、対象の魔道具の効果を発動中無効化する強力なものですね、オドも定着しました」

「だからなんだというのですか?」

「しらばっくれるな!あんたはみんなを殺しておいて!」

(あなた達は何も知らないくせして)


 何の余裕なんだ?

 穏やかの笑みを浮かべているな

 まあ無意味なのだがな


「第一あなた方に何の信憑性があるというのですか?それが本当にその躍る屠殺場なのですか?だいたい何故私がそんなことを画策しなければならないのですか?」


 ああ言いたいことはもうわかっている


「それを聞きに来たんだがな」

「滑稽ですね」

「ならせめて剣から手を離して盛大に笑ったらどうだ」

「愛剣なのでしてね」

「諸刃を真っ二つにした片刃の剣がか?」


 違うだろ、そんなのとっくの昔から知っているくせにな


「ええ」

「違うな『迷宮の剣豪』ドナウ、あんたの剣はこれだろう」


 そう言いながら机に放り投げられた、太過ぎもせず細過ぎもせず洗練されたフォルムの長剣、刀身にはこう記されている、我が名を愛剣ベナに捧げる、ドナウ

 ベナが剣を手に取り、刻まれた文字を読み、街長に顔を向ける

 ドナウは、諦めたのか俯いている


「僕の、名前?」

「確か当時おまえの所属していたパーティは装備のほとんどがオーダーメイドだったらしいな、この剣もそうと記録されてる。これでどっちが信憑性が高いかは証明できたかな」

「・・・仮にあなた方の言ってることが本当だとしても、そのアーティファクトのせいで下階に進めないでしょう?偽造したのでは?」

「調べたところ発動した場所より前の階に反応するそうだ、ご丁寧に古代文字でしっかりとな。たとえ偽造できてもこの使い込まれ用は模造できねえよ!」

「だから何故読めるんだ?」

「無理やり教えられた」

「いいでしょう、全て話します。何もかも、何故私がここまでしたのか、そして何があの時起きたのか」

  

 Side:Donau

「あはははついにここまで来たな!75階層」


 気さくで仲間思いのドワーフ、『鉄壁の』ベルク


「もう爬虫類なんて見たくないわね」


 いつも頼りになるホビット、『鎌鼬の』キキ


「んなこと言いながら一番屠ってるのは御前おんまえだ、キキ」


 極西の刀剣を持ったほうが似合うヒュマン、『辻斬のプリースト』チョーメイ


「もうすでに私達の知っている迷宮ではありません気を引き締めましょう」


 そして、私『迷宮の剣豪』ドナウ


「大丈夫大丈夫、なんか起きる前にキキが見つけてくれるし、起きたとしても俺たちがいりゃな」

「ココらへんは罠が多いわね・・・ビンゴ!隠し扉よ」


 キキはいつもどうやって罠を見つけているのでしょう?いつか聞いてみたかったです


「さんすがキキ!御前はやっぱり最高だ!」

「開けるわよ、3,2,1・・・宝箱一個ね」

「しけてんな、どんなトラップだった?」

「そうねぇ、半径3メルス程度の落とし穴の後に天井から串刺しかしら」

「天井は盲点でしたね、もしもひっかかっていたら痛いじゃすみませんね」

「トラップなし、開けて大丈夫よ」

「おう!おりゃあ!」


 彼は宝箱を開けるのが趣味でおもいっきり開けるのがいいそうです

 本当に変わった趣味でした


「ここに来て大しけだな、真っ二つの長剣だぜ、なあドナウ」

「私に振りますか・・・まあでもいい剣ですね、ベナには大変劣りますけど」

「相変わらずね、あなた」

「武器に名前つけるのは正直病気だと思うぜ」

「ドナウのは筋金入りだけど、だいたい俺たち人のこと言えんじゃん」

「私は名前なんてつけないわよ」

「死体に名前つける狂人がよく言うな」

「ジゴロのくせに」

「そこまでです。次に進みましょう」


 隠し部屋から立ち去り奥へと進みました。今思えばここで戻るべきだったのです

 何故ここまで深いのに大迷宮ではなくベルゴース迷宮と呼ばれているのかを

 しばらくすると、四方40メルスはある大部屋へとたどり着きました

 今まで多かった魔物がここに来て、めっきり見えなくなりました

 ということは迷宮の長若しくは大量の魔物が出てくるかわからない非常に危険な状況でした、ですが


「また、宝箱だ!」

「・・・周囲に魔物も罠もない、妙ね」

「嫌な空気だな、御前達気ぃ抜くなよ」

「無論です、それにしてもここに来てまとわりつくような嫌な感じがしますね」

「まあどんなことがあったとしても俺がいる限り大丈夫だがな!」


 彼はいつも気丈に振る舞ってくれていて我々の支えになってくれました


「罠じゃないみたい・・・」

「じゃあ開けるか!」

「待ってくだ!」


 静止虚しく開け放たれた宝箱の中は小さなオルゴールのような箱でした

 それは、意匠を凝らして作られていてとても素晴らしい作品なのでしょうが、施されているものがとても悪趣味でした

 ここで箱を開けていなければこんな事にはなっていなかったでしょう

 この宝箱が、オドどころかマナがないのにも気づくべきでした

 程なくして地響きが鳴り出しました


「な、何だ!地震か!御前達、さっさと戻るぞ!」

「な、何ですか!?地震というのは?」

「簡潔に言うと大地が揺れるんだ!つべこべ言わず地上に出ないと閉じ込められるぞ!」


 ただただ無我夢中に上を目指し登って行きました、その箱の装飾が動いてるのにも気づかずに


「クソ!多すぎる!うらああ!」

「切っても切っても出て来ますね、これでは埒がありません」

「知ってるわよ!じゃあね、イリスちゃん」

「術式発動!御前達減り次第抜けるぞ!」

「おうとも!」「ええ!」「はい!」


 そんな連戦を続けることができていたとしても限界は来ます、回数を数えるのやめたぐらいでしょうか


「ちぃ!我は防人なり!この血肉を持って民を守れ!ストーンフォートレス!我は戦人!この骨肉は鉄の壁なり!ストーンオブエンハンス!」

「発動!エリアヒーリング!」

「斥候なり!敵を切り刻め!鎌鼬!っぐ」


 連携は今まで以上にとれており、敵を寄せ付けませんでしたですが、ついに


「きゃあああああああああ!」

「キキ!しま」


 いつの間にかキキは囲まれており、スコピリオスによって串刺しにされました

 それによって気を取られてしまい、チョーメイは生物しか現れないはずのこの迷宮に現れたサンドゴーレムの勢いをつけた拳によって胴体を壁に思い切り叩きつけられ、そのまま見えなくなりました


「畜生!ジリ貧じゃねえかよぉ!」

「私達二人だけでも、先に進みましょう!」

「くっそ!」


 何とか上の階層の階段につながる通路に出た時、ベルクが立ち止まりました


「ベルク!何を考えているのですか!」

「俺は脚が遅くてかなわねえ!身軽なお前が一人でいったほうが安全だ!行けえ!」

「し、しかし!」

「四の五の言わず、ちゃっちゃと生きやがれっつってんだよ!俺達の分までよぉ!」

「・・・頼み、ましたよ。我が友よ」

「分かればいいんだよ、我が友よ」

「「さらば!また会わんことを!」」


 近づいてくる敵を切り倒し走り続けました。切って切って切って切り続けました

 ふと見ると、その剣はベナではなく、あの時拾ったあの剣でした

 私は冒険者としてのすべてを失いました


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