出会う歯車 Ⅱ
今は午前18時
おかしいはずなのに納得してきている
エジプトで仕事をしていた時があったがここはそこまで砂嵐がひどいわけではないようだ
確か情報では耐迷宮用としてラビリアン・クラウズでは結界を張っているみたいだ
この結界は簡単にいえば魔物よけ、そしてその土地に適したものになるそうだ
ここでは砂が巻き上げる心配も日照りで水が枯れる心配がない
それに迷宮都市と言われるぐらいだ、活気はあふれている
表は道具屋だったり、屋台だったりだ。裏は、胡散臭い商売が目につく
宿屋は・・・
「よお、兄ちゃん」
これはまた、ずいぶん悪そうな顔の男3人
「いい剣持ってるな、3銀貨で買ってやるよ」
CGUC貨だが見るからに質の悪い銀貨だ、しかも削ってある
CGUC硬貨は質が良いことで知られる
更に偽装防止に魔力化金属と呼ばれる魔力を帯び変質化した金属をコーティングしている
それを削ったとなると、信頼性がなくなるというわけだ
「何とか言ったらどう・・・」
「お前たちにくれてやる必要性はない、金もいらん、そこで寝てな」
問:スタン魔法の実験、何処で発動しても対象に当たるか?
答:対象は制御陣で指定してるから、何処で発動してもよい
つまり鎧の下でやればバレにくいというわけだ
で、宿屋は何処だ
えーと、行きたい国、都市観光冊子でおすすめの宿・・・ホテルだこれ
数分後
「ココらへんがいいか」
「いらっしゃい、ませ?(なぜフルプレート何でしょう)」
「ここは宿屋ですよね?」
「はいそうですけど宿泊ですか?」
「二人部屋10日ほど」
「でしたら食事付きで2銀貨と5銅貨です」
やっぱあの時の宿ボッタクリだったか
「どうぞ」
「こちらが鍵です。何処かで食事されますか?」
「連れが探している」
「ここ良さそうだな、すみません!あ」
「あ」
「なぜここに居る!」
「宿屋探していたからだ。すみませんここで取ります」
「かしこまりました」
「で?」
「でとはなんだ」
「情報」
「簡単に言うとほとんど事実だと思っていいだろう」
「根拠は?」
「確かに活気はあるが、迷宮のある方向を見ないようにしているのが多い。それに、ここに来るまでの道中で、旅商人にあっただろう」
「たくさん護衛を連れていたな」
「確実に冒険者の数が減ってきている」
「その点からか?」
「それ以外もあるがな」
「どういう意味だ?」
「この剣を見てくれ」
出したのはさっき絡まれた原因のショートソード、結局使う機会もなく肥やしになっていたものだ
刃が鍔にもなっていて鍔迫り合いがしやすいようにできているが
元々諸刃だったのをどうやってか真二つにしたように見受けられる
それ以外は無骨なデザインだ
そんなことどうでもいいが
「業物ではあると思うが、このくらいだったら探せば出てくるんじゃないか?」
「その通り、特にここには迷宮がある」
「そこから、掘り出し物を拾うという選択肢があるな」
「そういうことだ」
「それがどう関係が・・・そういうことか」
「そうだ。聞いてきた情報によると、今までは武器を新規に買う例は慣れてきた冒険者からはないそうだ」
「だが、ここを生業としている連中が買いに来始めてきたというわけか」
「たしかに、最初はより活性するだろうが、そんなの一時的だ」
「それを危惧してここの長は依頼したというわけか」
「そういうことだ」
「いつドナウ街長にあう?」
「ヨミキリ殿とミラオス殿はあなた方であっていますか?」
((きたな))
「ええそうです、ドナウ様ですか?」
「ええ、これからお昼ですか?」
「おまちどうさま、街長もいらっしゃい」
「おお、うまそうだな」
「サンド・スコピリオスの幼体の姿焼きですね」
「幼体!?これでか!」
「成体は体長3メルス、二股の尻尾を使い敵を串刺しにする、砂に擬態するのが得意」
「で味は?」
「・・・・鶏肉をもう少し淡白にして、歯ごたえが良くなったものだ」
「美味しそうですね、そちらは、アナコルダですね」
「で、でかいな」
「頼んだほうが悪い、ジャイアントアナコルダ、確認されている個体は最長15メルス直径2メルスを超える
口は顎を外すと180°開き、得物を捕食する。でかい個体だと道と同じ大きさで待ち構えているそうだ。それの香草焼き、本来匂いが強いとされているがここの生態上、臭みは強くなく、ハーブで完全に打ち消されている」
「確かに、美味いが、何処からその情報が出てくる?」
「事前に調べるのは常識だろ?」
「いや、さすがにここまでとは、しかしなぜこれを?」
「どんなに知っていても、初めて見るより、その末端を知るのは重要だ。肝心なのはそれに溺れないこと」
「初依頼でその考えに至るのはすごいと思うが」
「素晴らしいです!これがメタルズギルドの冒険者なのですね!」
「ふぅ、美味かった」
「速いな!?しかも殻まで食ってやがるし」
「幼体だから殻が柔らかくて美味しいのですよ」
「食える時に食う、食うときは素早く、そしてよく味わう」
「矛盾してる気がするし、どんな生活したんだお前は?」
「でドナウ氏よ」
「本題ですね。今から4ヶ月ほど前です。18階層で安定マージンで狩りをしている冒険者パーティー6名が帰ってこなくなりました」
「トラップとか油断とかか?」
「我々が言うことではないがそう珍しくもないだろう」
「ええ、しかし」
両手を握り込んでいるし言い淀んでいるな、ヒュミントで手に入る情報は脚色掛かるのが難点だがシギントでは入手し得ないものが手に入る
「続けてください」
「その階層はサンドワーム、サンドフロッグしかいない階層のギリギリなんです、同時に我々が管理しうる限界でもあります。そこで狩りをしていたパーティーは4組そして2名の管理者が1週間立たないうちに帰ってこなくなりました。」
「大量発生か?」
「依頼を募りこちらでも階層調査をしましたところ、サンド・スコピリオスの変異種が出ました」
「変異種・・・それは、災難でしたね」
「捜索チームは4割は死亡残ったものもほとんどが重軽傷を」
声が震え始めている、ここいらが限度か
「その中に、私のせがれも・・うう」
「・・・さぞ」
「あなたの息子さんは立派な人だったんですね」
「・・・はい、でも、しっかり止めていれば」
「必ず我々が原因を突き止め、解決いたします」
「お願い、します」
「この依頼達成できるか?」
「するしか無い、まだ見ぬ平穏のためには」
「初依頼でこれとは災難だったな」
「さて、腹も膨れたところだし行くか」
「ああ」




