詰まった歯車 Ⅲ
Side:Aruncrece
つい先日頃、全身鎧の男がここに入りたいと言って来た
ただ名前だけで来たかと思えば違うらしく、噂についても知っていてなおかつ事実であると踏んできたというから驚いたものだ。
だが、飽くまで怪しい男を入れるほどここは困ってはいない
そこで、数ある試験の中でも高難度のものを選んで諦めさせようとしたら、2つ返事で承諾しやがった。
それにだ。まさかあいつを追う最初のやつが俺になるとは・・・俺ここで寝泊まりするんだが・・・
直ぐに飛び降りて探したがすでに奴がいなくなっていた。魔力残留からして幻惑か隠蔽のどっちかと踏んでいいだろう。残留を消す方法を知らないなりに周りと同化させて逃げるという、瞬発的な発想力もある。惜しいことをしたか?
10日目
見つからない、冒険者や賞金稼ぎ共が血眼になって探しているが、一日のある時間に目撃情報が出るだけで、それ以外は音沙汰もない
お陰で、情報が混濁して、各地に設置されている掲示板がごった返している
おそらく意図的に流したものと見て間違いはない
そして、あいつ目当てにやってくる裏の人間はどんどん捕まる
今度増額でもするか
17日目
捜索隊が結成されて3日目が過ぎたあたりから、目撃情報が増え始めた。情報屋の噂曰く、職人ギルド区の近くの宿屋に潜伏しているらしい、という彼ららしくない自信の無さには驚きを隠せない
今日、80赤金貨から1白金貨に増額した。
24日目
路地裏で捜索隊の一人が気絶しているところを仲間の一人に発見された
そいつが言うには、急に人影が現れて反射的にパラライズをかけ、魔法が陣に触れた瞬間、意識がなくなったらしい
反射する魔法か?いやそれはないし...スキルなら一人覚えがあるが・・・
29日目
奴が商人ギルド区の酒場に居るという情報が入った
発見者は賞金稼ぎのアンドリュー、不意打ちだったらしく、ヤツに虫をつけることに成功したという話だ
裏ギルドの足もつきそうだ
双方の追い打ちとして賞金を27白金貨に増額
今日若しくは明日の朝で決着がつく
この1ヶ月頑張ったことは賞賛に値するが、たとえ逃げれても次がどうなるかだな
実に楽しみだ、こいつがどういう役を果たしてくれるのかが。
「せいぜいあがいてくれ漂流者くん」
Side:Yomikiri
窓から飛び降りる、慌てて追いかけるギルドマスターであるアルンクレスが続いてロープを伝って降りてくる
術式発動、ミラージュ
壁にしがみつき同化する、放出したオドを下に拡散させ気配をごまかす
ミラージュ、隠蔽系の幻惑魔法の一種で、姿をごまかすことができる、継続時間は通常3時間、今の俺だと1時間半無いぐらいしか続かないが、気配も隠せるから有用だ。代わりに持続系の魔法だからオドが常に放出される。それも魔法で拡散させてるから、実際には30分に満たない
どうやら、探すのを諦めて戻ってきた。
視線を少しこっちに向けてきたな、気づかれてはいないが、相当危険なやつだ
1ヶ月の逃亡生活とは少々きついな
オドの全快まで残り10時間、マナポーションみたいなものあったらいいな
現在2:03p.m残り29日47時間57分、体感時間2ヶ月
とりあえず宿に帰るか
2:47p.m 宿屋
「大変なことやらかしたね、あんた」
「金属という言葉に誘われて入ろうとしたらこれだ。やりきれませんね」
「でこれからどうするんだい?」
「どうしましょうか?・・・殺しませんよね?」
「さあてね」
「否定してくれよ」
「しかしあそこも大概よね。デッドオンリーの80rGなんて、何処からそんな大金が出るんやら、それに入らせたくなきゃ門前払いすればいいのに」
「それだけ敷居が高いんでしょう」
「あんたもあんたね、そんな死に急ぐことしなくても」
「追加で60Sです。それと綿火薬か黒色火薬ありますか?」
「どうだったか・・・えーと、在庫確認したけど無いわ」
「そうですか、有難うございます」
「いやいいのよ、でどうするの?」
「とりあえず4日間篭もります」
「その後は?」
「どうなるんでしょうね」
『で、どうするんですか?』
「どうするかわかるだろう」
『情報の根絶に情報網の混乱ですか』
「そこに、複数名による同じ情報があるときある時間から始まる」
『そこに人々が群がり、更に大混乱ですね。何故仕入れる時間を定めるのですか?』
「やがて偽の情報を掴まされたのに気づくそれと同時に正しい情報も遮断できる。それに、伝言ゲームのように連鎖された価値の無い噂で隠せるしな」
『それでも最終的に見つかりますよ』
「その時はその時考えればいい。それより、綿火薬すらないとは、せめてシングルベースは欲しいところなのだが」
『発煙硝酸の入手が困難ですね』
「錬金、薬学、調薬、科学が寡占しているんだろうな」
『当然といえば当然ですね』
「酸は扱いを間違えれば大変なことになるしな」
ニトロセルロースが作れても、安定性も安全性も低いから、結局手間がかかる
雷管もないからリロードもできない
弾丸よりも日本の撒菱かあるいは金属球でも作ればよかったか
「とりあえず寝るか、監視よろしく」
『嫌です私も寝ます』
「お前寝れないよな!寝る必要ないよな!てか監視してくれ!」
『AIジョークに何本気になってるんですか、馬鹿馬鹿しい』
「ほんとになんでそんな性格になったんだ」
『ではおやすめ』
「それはちょっと無理があるが、おやすみ」
5日目
「追加しておくかい?」
「いや、今日からは事が終わるまでは来ない」
「寂しくなるねえ」
「もう少し寂しそうに言ってくれよ。ここに押しかけられても困るしな」
「そ、じゃあねまた」
「ああ、また」
『30秒後向かい角から5人パーティに接触します』
「登るぞ」
裏路地に入り壁の隙間を使い屋根の上に登る
登った先に、50m先に2名の弓持ちが居る
まだ気づかれてないが、すぐに気づかれるだろう
「術式発動、ミラージュ」
魔法を使い、透明化する。余裕がなかったためオドが流出する
魔法の使用に感知した二人が、こちらに向かって矢を放ってくる
左に避けた先に第二射が放たれ、肩に当たってしまう
その間にもう一人がこっちに向かってくる、相当速いな
「見つけたよ、見えない人」
「見当違いの方向向いて言われても困るな」
「え!?しまった!」
手と腰にあるナイフを奪い取り、弓の弦を切って武装解除するが、胸を思い切り蹴飛ばされ、体勢を崩しミラージュが解ける。更にナイフを一本取り返され、距離を取られる
「女だからって油断しないでよ!これでも獣人だから!」
「おっとと、術式発動、ダートバインド」
「逃すか!」
もう一人の方も相当なスピードで近づいてきやがった!下には降りられないか、なんとしてでも今は起き上がり、2人を無力化すること
おざなりの拘束魔法はもうすぐで抜けられそうだ。致し方ないが
「いったあ!そのナイフは投げナイフじゃない!」
「なんで刺さらねえんだよ!」
「ふふんインビジアルアーマーのおかげだよ!ミーちゃん大きいのやちっゃって!」
「燃えろ!」
「え!?ちょっとでかすぎ!!」
杖ってことは魔法具か、いや詠唱も術式もない!魔道具か!
アレはやばい!威力も相当でリフレクションも魔力不足で使えない
「ビー!ステルスだ!」
『了解しました』
火球を引きつけた後飛び降りる
上から爆音がした後燃え盛る炎が降り注ぐ
それに気がついた下の連中もこっちによってくるが俺の姿には気がつかない
通り過ぎたのを確認し、170m先の橋の下まで移動する
「解除、逃げ切れたか」
『残り稼働時間75分です。至急、電力供給してください』
「相変わらず燃費悪いな」
『シカタアリマセン、イコウカイワハヒカエテクダサイ』
「はいよ、さてどうするかな」
手持ちはロープ、閃光玉3つ、投げナイフ3本、ナイフ1本、縦に真二つなショートソード一振り
モーニングスター一振り、解体用ナイフ1本、フルメタルジャケット弾装填済みのフル改造コンテンダー、携帯食料3日分、弾丸2発、空薬莢1個、視認阻害マント(運良く燃えなかった)
オド残量から想定するにミラージュ3分持つかどうか
PDS停止まで70分弱
初っ端から運が悪いな
夜まで待機したいとこだが、発電もしたい。水力発電でもつければよかったか?
とりあえず鎧を頭以外外して、マントをかぶり、情報でも収集するか
鎧は・・・撹乱でもするか
「ビー、できるだけ屋根伝いで移動し続けろ、暇があれば充電しておけ、13:00p.mここに集合だ」
『イッテルソバカラデスカ…イイデスヨマッタク』
鎧が透明化する、のではなくタコのように擬態しながら移動を始める、燃費はいいが動きが鈍くなる点が大きい痛手だ
まあ、うまくやってくれる
こっちも移動するか




