油をさした歯車 Ⅳ
「・・・」
『どうしましたか』
「寝たいはずなのに寝れない」
『夕方の7時ですからね』
「腹が減った、飲みにでも行くか」
「おや、出かけるの?」
「食事をとりに」
「ああ、いい忘れていたわ」
「何をですか?」
「うち、食事でないのよ」
「そうですか、では、行ってきます」
「もうちょっとなにか言ったらどうなのかしら、は~い少々お待ちを」
7:15p.m
商人ギルド区
茜色の空か・・・何度見てもいいものだ
向こうだとホログラムで出来た紛い物の空しか無かった
人々はそれだけでも喜んでいた、だが日に日に物足りなくなり見飽き、それが当たり前になっていくのを俺たちはただ黙ってみていた
ここでは、時計よりも陽の高さを見て何をどうするかを決めている
あたりを見れば誰かが必ず空を見ていた
近くに酒場がある、中から一際明るく地面を照らしている
向こうから大柄のハゲヅラと長身な男性、中肉中背の青年が歩いて来た
「よぉ」
「バークさんたちですか」
「今晩は、いいお酒を入荷したのでそれを飲みに来たんです」
「あなたも一緒にどうだ?」
「そうですね・・お言葉に甘えましょうか」
「そうと決まれば奢るぜ!」
「あれネリスさんは?」
「彼女は魔導書庫で交渉してきています。多分明日まで帰ってこないんじゃないでしょうか」
「じゃあ、ま入るか」
「はい、エール4つおまちどうさま」
・・・どう見ても酒よりも
「干し肉のほうがメインですよね」
「だろ、ここはそういう店だからだ」
「自家製で黒字だからすごいんですよねぇ」
「美味いから文句ねぇしな」
たしかに美味い、最初は味がないが噛めば噛むほど味が出てくる
表面に付いている塩と各種スパイスが、程よくマッチして次から次へと手が伸びる
塩分が多いためか余計に酒が欲しくなる
酒の方は・・・・・穀物酒か、もう少し寝かした方がいいが、美味い
肉肉酒肉酒
お、料理が出てきたようだ
どれもこれも大盛りだな、奢ってもらうのは気が引けるな
割り勘をしようと提案しても断られたんだよな、仕方がないから気の赴くまま飲むか
「まだ飲むんですか・・・」
「え?」
「ウップ、さすがに飲めねえな」
時間は16時もうすぐで夜か
9時間ぶっ通しで飲んでいたというわけか
少々飲み足りないな
「じゃあもう一杯飲んだら」
「何杯飲むきだよ・・・」
「18はいってますよ」
18か、後二杯飲んで終わりにするか
「じゃあ最後に、2杯頼みます」
「かしこまりました」
「とんだ酒豪だな」
「夜は何をするんですか?」
「帰って寝るだけだが」
「同じです」
「さすがに今日は寝ないとヤバイしな、ウップ」
「俺達は酔わない程度に抑えて飲んでいるのだが」
「バークさん、あんまり飲めないくせに、無理して飲むから」
「おまたせ致しました~」
客足はまだ増えている
騒がしくなる、活気があふれていて心地よい
向こうで吟遊詩人が集まって演奏会を開いているようだ
こちら側の席の向こうでは博打でカードを睨んでいる人達
誰もが人の顔を見て疑っているあっちよりも心地いい
やはり男の約束だとか言って金を出すことが出来ず、奢ってもらってしまった
大柄なのに弱いとは苦労するな・・・・
「重っ!もっとちゃんと立て!」
「すまねえが無理だ、ウップ」
「吐かないでくださいよ、ではまた」
「ええ、また」




