こころの歯車 Ⅱ
古き考木のルビの箇所を変更しました
村を去るまで残り7日
「どう、調子は?」
「まだ動かしきれてない」
「そう・・・」
「木の方ももう少しだ」
「そう、ね」
「気に病む必要はない」
「・・・」
「なあ」
「な、何?」
「いつも思うになんでこの斧にあの村長の家紋がついてんだ?」
「それは、村長のものだからじゃない?」
「それにコレ、どちらかと言うと木こり用の斧よりも、戦斧っぽいんだが」
「そう?気にしたこと無いけど」
・・・紋章・・・家紋・・・術式行使・・・風景行使・・・村の構図・・・幻影魔法
多分合ってるが、動機が分からん
「どうしたの?」
「なぜ?」
「何が?」
「何故?アイツが他の木ではなくこの木を指定したんだ?」
「それは・・・力?とかをつけるため、じゃないの?」
「そうだ。だが、2ヶ月かけて一本より複数本切らせたほうが効率的じゃないか」
「そうだけど、村長にも考えが・・・」
「なんで今まで切り倒せそうになったのに倒せなかったのか?」
「再生力のおかげじゃ?」
「それでもおかしい、急に再生して元に戻るわけがない」
「誰かが金属を接触させたってこと?」
「ああ、おそらくその誰かは切り倒す意思がなかった。では何故?」
「何故って、いわれても」
「この木はあまりにも硬い、薪にするには不都合すぎる、だからといって材木にするにも、
不適合」
「釘、入らなかったもんね」
「この斧はこの木を削って作られている、だから、刃こぼれもせず、切ることができる、
じゃあその前は?」
「他の木で斧を作ってきっていたと?」
「おそらく、違う。このぐらいの硬さだから一回使うたびに駄目になる」
「じゃあ、どうやって?」
「750年前、この付近は嵐にあった記録がある」
「ひいおじいちゃんがそれで・・・」
「何回も、何回も雷がこの木に落ちたんだろう、それによって割れた木片で作ったのがこ
の斧であり、俺の義手だ。そうだろう、初代村長さん」
「正解じゃの」
「村長!何故?」
「この村に何があるんだ?」
「はて、なんのことじゃ?」
「白々しくとぼけるな、紋章行使、術式行使、風景行使、更には村も魔法陣にしてまで隠
したかったものは何だ?」
「少し違うのぉ、村を魔法陣にしたのではなくて、村で魔法陣を作ったことじゃのう」
「それにこの斧、戦斧だろう」
「そうじゃよ」
「もう一度聞く何を隠している」
「そりゃあおまえさん、この村じゃよ、とあぶないのう、それを首に当てるでない」
「冗談は寄せ」
「わしを、じゃよ」
「何?」
「コレ以上は言えんの」
「俺を見張ってた理由は?」
「やはり気づいておったか、いやなに、ガイアは平和なとこじゃと聴いておったからの、
確認をな」
「見当違いだったな」
「全くじゃ」
「・・・あんたの問、今のとこ信じよう」
「気をつけるが良い、むやみな詮索は死ぬぞ」
「ご忠告痛み入る」
村長が手を振りながら去っていく
ここの連中はいきなり現れて普通に去るのが普通なのか
「で、この木はどうするの?」
「ほっとくか、金属でも接触させればいいだろう」
「ここまで来たのに?」
「なんてったって御神木だからな」
世界樹ユグドラシルの眷属《古き考木》の成れの果て
クゥイッド ティビ パーヴィジレム
全てを見守るもの、か
神話の時代ではどういう生き様だったのだろう
手を木に当て思考する
昔はこうやって生命の流れを感じ取ろうとしてたな、主にアイツが
何をやっているのか聞くと、いつもこう答えていた
〈生命の流れを感じ取っているのだよヨミくん、君は感じ取れるかな〉
感じ取れない、今もなお、そしておそらくこれからも
俺がお前のように本物ではないからか
それとも、
「ヨミ?」
「ん?」
「戻ろうか」
「ああ」
もう二度とこの木を見ることはないだろう
ふと振り返ってみる
もう治っている、だが跡は残っている、これからも残り続けるのだろうか
それとも、忘れ去られるのだろうか、忘れ去ることができるだろうか
〈君は僕よりずっと立派だ、乗り越えることができるから、君がそう望むなら。だから〉




