休日
御影家敷地内の山の中腹にある開けた草原。
御影伊織。
御影 朧。
二人は相対している。
今日は2人共に不定期の休日を頂いたのだ。
〈きっかけ〉奇襲は無しにし、立ち合いと、相成った。
きっかけ奇襲とは、初撃を入れる為の気のフェイントの事だ。
それは人の無意識を利用する技である為に、達人であれば、容易く出来る。
それを無しにし、技のみの応酬をと、朧が言い、伊織があっけらかんと受けた。
朧が八卦掌の制空域を手で描きながら、待ちの姿勢。
後の先。
伊織「いいか?」
朧「無論」
伊織はスタスタと待ちの姿勢の朧を残して、林に近寄る。
朧「?」
伊織「そういう姿勢は、利用されるぜ?ふ!」
伊織は手刀で細長い竹を沢山切ったし、折った。
そしてー。
〈ボキ、バキ、ボキボキ〉
それを15cm程度に折り分けた。
朧「(まさか!)」
伊織は歩き出した。
伊織「これは軽いからなあー、投擲能力は低い、でもなー、至近距離ならー〈スー〈ビ!!!〉」
話しながら折り、話しながら近寄り、ある地点から一気に間合いを詰め、ると同時に朧の顔目掛けて投擲。
朧は顔で受け流すしかない。
伊織を視界から離せば、待つのは死のみ。
だが、伊織は細竹はわざと横に投げていた。
細竹は空中で網状になり、朧の顔に当たった。
朧は目を瞑らず、顎を引き、おでこで受け、伊織を視界から離さない。
が。
伊織は消えていた。
朧「(しま、上!)」
伊織は後ろから朧に抱きついた。
朧「は!?(速!?)」
伊織「勝った!はははは、約束通り好きにさせて貰うぞ!」
伊織の声が朧の耳の直ぐ側で。
朧「は、はい、や、約束ですから!どうぞ!」
朧は真っ赤。
伊織「膝枕!」
朧「……え?」
笹の音、木漏れ日の細々な光。
伊織「ふあああ、眠い、少し眠る」
朧「はい、どうぞ」
伊織「すぅーー、すぅーー」
朧「かわい」
伊織が休日の日は、琉刃は何処にも行けない。
巨大な金庫の中にいつも一人で過ごす。
マンションの77階の真ん中の部屋。
その部屋の中にまた金庫部屋がある。
そこには寝台VR装置がある。
そこに寝て、VRヘルメットを被る。
正確なマイクロ波を脳の各部位ごとに当てる技術により、匂い、音、手触りを再現可能になっている。
いつもはそこで砂漠の横断や、海の深海を旅する。
のだがー。
2つ寝台装置がある。
ビビアン王女「わあ!これ、一度使ってみたかったの!母様がどうしても駄目だって、でも今日は出来て嬉しいです!」
琉刃「本当に宜しいのですか?私が行く場所は多分普通の人は怖いですよ?」
ビビアン王女「あなたが居る、それだけで十分ですわ!」
琉刃「ふふ、分かりました、でも無理なら無理と言ってくださいね?直ぐログアウトしてくださいね?心に傷が残ってしまいますから」
ビビアン王女「はい!分かっておりますわ!では早速!使い方を教えてくださいまし!」
琉刃「はい、それでは、まずここをー」
ビビアン王女「この機械下着を履くんですの?」
琉刃「仕方ないでしょう?人間の生理現象です」
ビビアン王女「う、うう」
琉刃「それ履かないと進みませんよ?私はあちらを向いておりますから」
ビビアン王女「は、はいい、絶対に見ないでくださいね!」
琉刃「はいー」
ビビアン王女「ん、ん〈ガチャガチャ、パチン、パチン〉こ、これで良いですか?」
琉刃は振り返り、きちんと装着出来ているかを観察する。
ビビアン王女「ん、く」
真っ赤。
琉刃「はい、問題無いです、では、始めましょう」
ビビアン王女「はいい(涙)」
まずビビアン王女からログインする。
ビビアン「直ぐ来てくださいね!必ずですよ!?」
琉刃「はいはい、必ず」
ビビアン「絶対にですよ!素早くです!分かりましたか!?」
琉刃「はいはい〈ピ、ピ、ピ、ピ〉」操作中。
設定、天の川銀河。
ビビアン「そういえば何処に飛びますか!?教え〈ガクン〉」
ビビアン「ん………?」
UFOの中。
宇宙船のパイロット席にビビアンは座っていた。
ビビアン「うわあ!?宇宙船?うわあ、綺麗な宇宙船!」
全てが白?銀色よりも白色だ、全てが滑らかな円の設計である。
UFOの中の明かりが消えた。
目の前には大きな窓がある。
室内の明かりが消えた事で、外の明るさが目立つようになった。
ビビアン「うわあ、これがVR?信じられ」
ビビアンは日本文化を学ぶ上において、日本の夜景が何よりも好きだった。
その中でも蛍の群れの光の幻想さが大好き。
ビビアン自宅には蛍の夜景写真がデカデカと額縁に飾られている。
どんな蛍の群れよりも。
どんな幻想的な宝石達よりも。
綺麗。
美しい。
幻想的。
そのどれもチープな言葉に聞こえる。
何を。
何の言葉を言えば、〈コレ〉を言い表せられる?
ビビアンは目を見開き、涙が勝手に流れていた。
琉刃「良いですよね」
気づくと、琉刃が隣の椅子に座っていた。
ビビアンは琉刃に抱きついて泣いた。
鳴いた。
何故かは分からない。
大声で泣き続けた。
end




