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第0話 はじめてのキス
はちみつ色の夕暮れに染まる誰もいない教室、放課後の運動部の掛け声が少し開いた窓から聞こえてくる。
ファサッ……とカーテンが風で揺れる音が耳に入ってきた気がした。気がしただけだ、そんな事に耳を傾ける余裕がなかった。
「ごめんなさい、初めての事で戸惑っていて……許してほしいとは言わないわ」
藍川 優里、16歳。
友人いない歴・恋人いない歴=年齢。
家族構成は母、姉3人の女家族で男性耐性0、対人耐性クソゴミの私が何故か今、転校先の高校にいるカリスマと美貌と……私にはない全てを持つ生徒会長・青井 星花に教室で突然、キスされた。頬とか額ではなく唇だ。
人生で初めてのキスである。
「……星花ちゃん?」
私は心臓がバクバクして今にも心臓が口から吐き出しそうになるのを耐えて星花ちゃんを見る。
星花ちゃんの青空のように澄んだ瞳は潤んで、健康的な肌も耳まで赤くなっていた。そしてその潤んだ瞳には同じような表情をした私が写っている。
「優里」私の唇と触れた、薄紅色の唇が動き、艶やかな声色が私の名前を呼ぶ。
「はい」私は自分の胸に両手を祈るように組んで返事をする。
「私の全てを受け入れて欲しい」
「……ぇ……」
星花ちゃんは私の緊張で冷えて汗ばんだ手を掴んで、冷静で大人びた眼差しの顔ではなく年相応の乙女の顔を私に見せて言った。




