表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

その二十

6833

 いつも息子を送り迎えする保育園の息子と同じクラスの女の子に或る日、

「パパになって~」

と抱き付かれました。その子は笑顔でしたが、それでもその瞬間その子の家の状況に就いて心配しました。私の息子ならそんな言葉は誰に対してでも決して口にしないでしょう。五歳六歳の子でもそういう事は普通分かっている筈です。今やそういう年代の子をもつ親である私にはその事がよく分かります。だからその子の事を心配します。

 実はその事から今までに既に一年近く経っています。私は保育園に行く度にその子の事を気にし、顔を見る度に優しい言葉をかけています。笑顔の時も多いのですが沈んでいる時もあります。一度そういう事を経験した以上、私からその子の事を心配する気持ちが消える事は無いでしょう。家庭が平和で、そしてその女の子の心が休まる暮らしであれば良いのですが。私の心配が杞憂に終わるのであれば本当に良いのですが。小さい子に自分の子も他人の子も関係が無いと心から思います。その子の笑顔を祈りながら明日も私は息子を保育園に連れて行きます。


6834

 苦しい時、歯を喰いしばって見上げて下さい。その時でもあなたの奉じる理想は見えますか。道を見失い行き詰まって放心して仕舞う時、祈る様に見上げて下さい。それでもあなたの信じる理想は見えていますか。そういう時にこそより一層見えないといけないのです。普段よりずっと大きく強く輝いていなければならないのです。それが人が抱くべき目標です。生きる目当てです。

 経済的に苦しくなったら、恋人に去られたら、他人に見捨てられたら、それで途端に見えなくなって仕舞う、そんなものは生きる目標足り得ません。それでも()せぬものを見付けて下さい。


6835

 会社の仕事をはじめ世間の何にも煩わされずに済むならそれは楽しいでしょうか。煩わされ、悩み苦しむよりは楽しいでしょう。しかしそんな比較の話ではなく、その手枷足枷無しの自由な状況を自分として本当に楽しむ事が出来るでしょうか。人はここをよく考えてみる必要があると思います。現在仕事に苦しんでいる人間であれば、その仕事から解放され()つ生活が成り立つ事を夢見るでしょう。これは自然な事だと思います。しかしその夢見ている理想的状況というものが、実は自分が楽しめるものではなかった、夢見るべきものではなかったとしたら如何(どう)でしょう。そういう事も実際にあるのですよ。それも結構多く。

 私は絶対的な自由というものを自分が楽しむ事が出来るとは毛程(けほど)も思いません。多分それは私にとっては拷問です。気が狂うと思います。私には仕える人、尽くすべき人が必要です。何としてもそれ無しには私は自己の人生の希望を描く事が出来ません。私がそうするに値する人、私はそれを探します。恒に探しています。誰でもという訳ではありません。私はそれなりには人間を見て来たつもりですから。その上で私がその心持ちをもって接する事が出来る人間。それが私に喜びを与えてくれるのです。最初から、私は思っています。私は自分独り生きる事を全く前提にしていないのです。如何に私が人間を嫌ったとしても、です。


6836

 何の意志も無いならばそのうち、美味しいものを食べ、安楽で快適な住居に寝起きし、時々旅行をして瞬間的な爽快を感覚する、生活がそれだけになるでしょう。必然ではないですか。理の当然ではありませんか。意志が無いのですから感覚的に肉体を歓ばせる事しか求めなくなるのが自然です。そして(やが)て何か文章でも書き始めるでしょう。『人生はそんなに苦痛ではない、生きる事は左程に困難に満ちてはいない』などと。

 ()ういう立場に憧れるなら、努力してお金を貯め『意志というものを特段発揮せずとも生きていられる』身分になるが(よろ)しい。そこで人間らしく生きられるものならやってみれば良いのです。この立場に私が決定的に欠けるものを見出すとするならば、それは緊張です。生きる事の緊張がこの種の暮らしには全くありません。何とも対決していないのです。それが人間が地上を生きる様相ですか。酒の(あぶら)(ゆる)んだ顔と魂から一体何の善いものが生まれて来ますか。見せてほしいものです。見る必要もありませんが。

 ブログは毎日更新しています。

https://gaho.hatenadiary.com/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ