その十四
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金融、経済というものは凄いですね。人間の情感など全く意に介する事無く、道徳も人倫もへったくれも無く、値段が高くなっていく商品には虫の如くに買手として寄り集まり、安くなっていく商品からは四方に向けて脱兎の如く逃げ出して行きます。冷徹と謂うよりも機械的です。実に単純な法則に従って動いています。そしてその流れの中で利益を上げるべく必死に『働いている』人間が居る訳です。ディーラー、トレーダー等々。凄まじいです。
しかしそんなものの法則の究明にしろ利用して利益を上げる事にしろ、人が生きている営みであると謂えるのでしょうか。それは一体何をしているのでしょう。私に言わせればいい年齢をした大人が公園の砂場で果てしなく砂を掘っているのと何も違わない気がします。深い穴を掘るにせよ掘り出した砂を積み上げて山にするにせよ、人が生きる事と全く直接の関わりがありません。だから私が人が必死になってそういう営みに没頭している事に不審を感じるのです。いや、その仕事をしている当人が一番不審に感じているのかも知れませんが。
世の中には様々な仕事がありますが、その中から選ぶのであればその仕事の意義が自分にとってはっきりしている、そんな仕事を選んで下さい。当てが外れたって可いではありませんか。何回か目には納得出来る仕事に当たりますよ。そういう努力をして下さい。私はまだ若いあなたにそれを勧めたいと思います。
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一面の雪原、その中に小さな谷の様に除雪された細長い土地が在り、立って暫く眺めていると向こうから小さなガソリンカーが幌を付けた無蓋車を牽いてやって来る。ああ、あれは線路だったのだなと、その時に気付く。見ているとごとごとと揺れながらゆっくりと雪原を遠ざかって行く。道路が使えない北国の冬に、それだけが奥地と市街を結ぶ交通手段。何だかあの小さな軌道さえもが、雪の融ける春を待っている様に思えてくる。年齢の行った人間宛らに、よたよたと進んで行く。
それだけで生涯の記憶になるものです。自分の心でその光景と人間の営みとを繋げているからです。
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金が全てだと豪語する金持ちを目の前に見たら、その人を如何に感じるでしょうか。
「倫理的観点から見て、低俗な人だ」
「いや、これは倫理性の問題なのではなく社会性の問題だ。現代の社会的欠陥を如実に体現した、生きた標本なのだ。不確実性の時代の落とし子の様な存在だ」
「ああ、経済金融的に素人なんだな。通貨暴落というのを知らんのか」
「上手く口車に乗せて騙し、搾り取ってやろう。取り敢えずは、褒めて近付こう」
色々あると思います。最後のやつを除いて大体他のもののミックスな感じの印象を受けるでしょう。
しかし幸福そうに見えないのです。生活に困っていないのは羨ましい事ですが、それでも私がそうなりたいという感を全く覚えません。それどころか、絶対にああはなりたくないと感じているのを明瞭に自覚するでしょう。私は他のものが欲しいのです。他のものをもっていたいのです。私の望むものとはそういうものです。
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たまには物凄い馬鹿を見てみましょう。後学の為です。中々役に立ちます。実地に見るというのは結構な衝撃がありますから良い勉強になるでしょう。調子に乗って、偉そうにしていて、自分が世界の中心。いや要するに馬鹿の馬鹿たる所以が陳列棚に並んでいる様に一覧出来るので、結構壮観かと思います。
しかしこれを鑑賞するのであれば、是非にもその調子乗りの頂点に居る馬鹿だけではなく零落した馬鹿というのも見る事をお勧めします。これは一転地味なのですがもっと衝撃があります。一気に諸行無常の感を強く漂わせます。迚もではありませんが指差して嗤う気持ちなど起こりません。此方の背筋まで寒くなりますから。でも依然として非常に勉強になるのです。人生の勉強です。
家に籠っていないで、外に出てそういう色々な人間を見てみましょう。汽車賃だけしか無くても可いではありませんか。水筒に御茶でも入れて、そしておにぎり二つか三つもって、それだけで外に出てみて下さい。頂点の馬鹿、零落した馬鹿、それに抑々(そもそも)馬鹿ではない立派な人、諸々居てくれて皆良い勉強をさせてくれると思います。外に出る事は重要です。あなたが誰かのお世話ずっと家に居なければならない立場に今居ないのであれば、是非共そうやって貧乏なまま外に出て様々なものを見て下さい。
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