第10話 円周率①
生徒と教授が舞台袖から出てくる。生徒の手にはフリスビーがある。
教授「君、手に持っているのはなんだ?」
生徒「これですか? フリスビーですよ。この後友達とやるんです」
教授「ふむ、それでは今日はそれで行こう」
生徒「いきなりですね。というかフリスビーですか? 数学というよりは物理の分野な気がしますが」
教授「投げる時の話ではない。その形、円についてだ。苦手な人も多いだろう」
生徒「円ですか? 形としては綺麗ですが、苦手というと。あ、あれですか、3.14! 円周率!」
舞台下に3.14が並ぶ。
教授「その通りだ。円周率が何か説明できるか?」
生徒「直径に対する円周の長さの比率です。ざっくり言うと直径に円周率をかけると円周が導けます。思い出しました。あの.14がいらなくないですか? 式は合ってるのに筆算を間違えて✖️になったことが多くて」
教授「小数点がある計算が苦手な子にとっては悪魔の数字だろうな。円周率、つまりπについては数学的に奇跡とも言える公式が存在するのだが、そこは置いておこう。さて、半径5、つまり直径10の円の演習は学校では31.4になる」
舞台横で3.14、✖︎、10、=、31.4が並ぶ。
教授「だが君の考えではこうなる」
.14の部分が黒子に吹き飛ばされ、円周率が3になる。同時に1.4も黒子に吹き飛ばされ、答えが30となる。
生徒「四捨五入的に言えば、3だけで何も問題ないと思いますが、ダメなんですか?」
教授「気持ち的にはわかる。ただ.14がないと予期せぬことが起きるのも事実なのだ。今日はそこをみていこう」