太郎ザDJ
鈴木太郎はDJとして音楽を制作している。
音楽に身を任せて思うがままに創作を行う。
絶対音感はおろか音楽に役立つ相対音感も怪しかった。
でも問題ない。
出来合いのサンプリング音源から感じの良いものを選択してそれらしくする技術を磨いてきたから。
実際歌詞にあたるリリックとラップの歌唱が全てと言って良かった。
下ネタと時事ネタを絡めて時流に合う音楽を供給してきた。
楽曲を制作すると彼は作詞作曲鈴木太郎として発表した。
DJ界隈でクレジットを本名にしようとする者はいなかったため浮いていたがそうしていた。
鈴木太郎は自分をバッハやベートーヴェンのような存在だと思っていた。
音楽によって社会に貢献することに誇りを抱いていたのだ。
極めてローカルであるものの山田のリスナーというものも確かに存在していた。
この音楽制作は鈴木がDJに飽きてしまうまでしばらく続いた。