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Ⅸ.極楽蝶の遺言
その日、彼女──〈シエル〉は変死を遂げた。
シエルが創立した学び舎の旧校舎。その小さな一室でシエルは焼死体で発見される。
建物は燃焼することなく、シエルが横たわっていた寝台さえ黒い焦げあとがついていただけで、シエルの身体のみが灰になるまで燃え尽きていた。
あわせて、シエルの灰にはどこから入ってきたのか、大量の黒いアゲハ蝶が群がっていたという。
その様相は、多くの人々が不気味に思ったが、シエルを慕う彼女の教え子たちは皆揃って、奇跡だ、美しいと涙して、絵に描くほど崇めた。
そして、シエルの遺体を第一に発見した女生徒は語る。
シエルの灰に群がる黒いアゲハ蝶たちが、少女の如き声でこう泣いていたのだと──
「生きたい」




