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Ⅲ.地獄蝶の遺言
『死にたい? はあ~、また言ってんのか。飽きねえな、この死にたがりクソ馬鹿お嬢さんも。……じゃあ、俺がこれから生きる百年とその先──この生が潰えるその時まで。せいぜいお前の長生きを末永く祈り続けてやるよ。無論、嫌がらせだが』
それが、早死にした彼の──わたしが聴いた〈最期の皮肉〉だった。
彼はわたしの名前を書けるようになって、間もなく死んだ。兄が言うには、酒にひどく酔った父に嬲り殺されたらしい。
父と兄は彼の死体を川に捨てたのだと云う。
気が付けばわたしは、彼が死んで日も経たぬうちに死体が打ち捨てられたという川に入水していた。もう、わたしを邪魔する者は確かにいないはずだった。それなのに。
わたしはまた、死に損なったのだ。




