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第3話

 しばらく時間が経った頃、まだ夜は明けていないが護衛のおじさんは遠くから気配が近づいてくるのを感じたらしい。勿論僕も。


「おじさん、これ何だと思う?」


「……人か……獣かは分からんが何かしらの生物だな。」


 僕は耳を澄ませる。確かに遠くの方で何かが移動している音が聞こえる。ここからだと姿は見えないがこの馬車の方へと向かってきてるのは分かる。これはマズい、こんな奴隷商の馬車なんて格好の餌食だろうに……


 ま、おじさんのお手並み拝見といこうじゃないの。


「クソ、角持ちか!こりゃダルいな……」


「…… おいガキ、てめぇは中に入ってろ。」

と言うので大人しく従っておくことにする。


 馬車の扉が開き、おじさんが降りると案の定森から現れた何かが彼に襲いかかった。だがおじさんは剣を抜いてそれを受け流し、もう一度飛び出してきたところ突き刺す。


「楽勝じゃねぇか。」


 確かにおじさんは強い。けどこの気配からしてまだまだいるよこれ。しかも段々近づいてくるし……さてどうしたもんかな?


 その正体はすぐに分かった。さっきと同じように森から出てきたのは赤い鱗に覆われ四足歩行で頭部に角を持つ巨大なトカゲの魔物。そして今度は三匹同時に襲いかかってくる。


「クソ、やりずれぇな!」

と言いながらもおじさんは着実に3匹の怪物をいなしていく。だが数の利を活かしたトカゲの一撃がおじさんの左腕を捉える。


「んにゃろ!……かすり傷だ!」


 そう言うが浅くはなさそうだ。痛みで出来た隙にまた一匹飛びかかってくる。それをかろうじて防ぐが今度は右側に現れた個体から尾による払い。それを皮切りに次々に怪物たちが彼へと殺到する。その全てを上手く捌いているものの腕に負った傷口がじわじわ効いているようで、彼の動きは次第に鈍くなっていく。別にこのまま見殺しにしても良かったが、今は何となく人が死ぬのは見たくなかった。


 僕は身体強化を全開にすると足で手錠をとにかく押し続け、手錠の破壊を試みる。肉に食い込みやがて骨が見える。さらに力を加えるとゴギッという音とともに両手の骨が砕けた。手首をぶった切るのが一番だが刃物がない今、これが最善であろう。やはり力こそパワーなのだ。


 匂いでサルサのナイフフォルダーを見つけ彼の元へ飛ぶ。


「大丈夫?おじさん。」


「てめぇどうやって!!」


「そんなんどうでもいいでしょ、今はこいつらをどうにかしよう。一体は僕がやるから。」


 ナイフフォルダーから二本ナイフを取り出す。なんだかとても懐かしい気がした。


 僕は片方のナイフを逆手に持ち替えて足に力を込めて地面を蹴る。トカゲの目の前で一本を地面に刺し急ブレーキと共に上へと旋回、そのまま体重を乗せトカゲの首を串刺しにする。


…ねぇシャノ、僕は上手くできているかな。


「やるじゃねぇの。」


 おじさんはすでに二体とも倒していた。さすがだね。


「はいおじさん座って座って。」


 僕はおじさんの左腕を治療していく。


「てめぇ治癒士ヒーラーか?!」


「あったりぃ!今流行りの動けて前張れる治癒士ヒーラーですよ?」


 僕は得意気に言った。


「ンな流行りあってたまるかよ。」


「だからって手錠外すなんて芸当………」


 そして何やらブツブツと呟きながら自分の首をさする。


「……お前家族や恋人は?」


「…もういないよ。死んじゃった。」


「……そうか…悪ぃこと聞いたな…」


 馬車に戻り、おじさんが奴隷商の所へ行っている間に魔術で水を出し、血肉がこびり付いた手錠を洗う。さすがに手錠抜けの方法は知られるのはよくない気がする。


 どうやらおじさんは奴隷商と何か言い合いをしているようだ。


「別にいいだろ!拾いモンなんだからよ!」


「いいやダメだね。あれは間違いなく東の大陸の人種。 ここらじゃ珍しいんだ、傷物でも高値が付く。」


 何だか身体がゾワゾワして、僕は耳を塞いで蹲る。人の言い争いを聞くのは嫌いだ、昔を嫌でも思い出す。


 どうやら話し合いは終わったようでポンポンと肩を叩かれた。


「おいガキ、名前は?」


「シオです。 シオ・コーリ。」


「喜べシオ、お前は奴隷にはならん。」


「え?」


「うちの団長がな、ずっと前から足の付かない治癒士ヒーラーをずっと探してるんだ。悪ぃが俺の評価のために一緒に来てもらうぞ?」


「ちなみに拒否権はない。」

とおじさんは言う。


「ま、いいよ…… やりたいことも無いし。」


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