第11話 他愛もない話さ
アタシの名はサルサ。今は果断のサルサなんて呼ばれてる。
生まれはここから東にある小さな樹海の獣人の村だった。その中で村の守り人だった父からは厳しい訓練を受けた。母はいない。村人に聞いても誰も教えてくれなかった。きっと何か厄介事があったんだろうな。
「オレの娘なのになんだそれは!」
「この出来損ないが!」
と何度も叱責を受けた。父は『豪傑』というスキルを持っていた。人の前に立って戦うことで効力を発揮するスキルだ。だがそんなモノ誰もが持っている訳じゃない。なのにコイツときたらスキルの有無は本人のやる気が無いとか抜かしやがる。
村に来た商人から女を買い奴隷を買い、終いには殺して放置。それを処理するのはいつもアタシだった。いつもいつも死体を運び火をつけ埋める。何度も謝りながら。地獄のような毎日だった。
他の村人は何してたんだって?
ただの無視だよ無視。厄介者だもんな、当たり前だよ。とにかく関わらないように誰もが私から離れて歩く。そのくせやれあれを狩ってこいだのなんだの仕事だけは押し付けやがる。
アタシを含め村人は『豪傑』を持つコイツに抗えなかった。魔物に対して力の面で大きく劣るアタシたち猫獣人は討伐のために数人の命をかけなければいけない。だがアイツは違った。アイツは大剣の一振で魔物を屠る。あぁ神様はいねぇと思ったよ!こんなクズ野郎が豪傑!?ンな話あるかよ!!
『豪傑』は守るモノが多いほど効力が上がる。アタシたちは生きるためにアイツに縋るしか無かったしアイツもアタシたちを必要としていた。守るモノが無くなった途端このスキルは無に帰す。
だがこんな日々は本当に、本当にあっさり終わった。このクズ野郎が死んだのだ。ある日殺した魔物を肩に乗せ村の柵に辿り着いたとき。
柵の門の閂が閉まっていた。
ただそれだけだった。
その日の門番の当番の子がクズ野郎に殴られた傷で熱を出してしまっただけ。村に入れない、恐らくそれが守るモノからの拒否として『豪傑』に作用したのだろう。クズ野郎は門をこじ開けようとした瞬間に普段は片手で扱う大剣の重みに耐えかねバランスを崩し、担いでいた魔物の下敷きになって死んでいた。
笑ったねアタシは。
どれだけ村人を殴ろうと、金品を奪おうと、何をしても豪傑に何ら影響はなかったのにたったこれだけのことで。
そしてすぐアタシは村を抜けた。抜けるついでに村の古株にアタシの母のことを聞いたらなんて答えたと思う?
「お前は奴隷の子じゃ」
だとさ
クズ野郎が買った奴隷の具合を気に入って生かしてたんだとよ。ある程度まともな答えは帰ってこないと思ってたけどよ。もう本当に神様はいねぇ思ったね。
「ワシらも相伴にあずかったがアレハイイモノダッタ。」
と下卑た笑い声とともに音を発した。
“アレハイイモノダッタ”
何言ってんだこいつ。まぁいいや、殺そ。
アタシが自分の意思で人を殺したのはこれが初めてだった。
感想?魔物を殺すのと何ら変わり無かったな。別に大したことは無ぇ。
そこからは村を出てこの都市に居着いた。何の因果かまた魔物を殺す羽目になったがな。幸いクズ野郎の教えで私は人より圧倒的に戦えた。周りが苦労する難所も突破してきた。
多分そこからだったかな。アタシが自分の運命を呪ったのは。
アタシが加入したパーティーでは必ず問題が起きる。ドロドロした人間関係、役割の軽視、金銭問題。前に進もうにも必ず誰かが足を引っ張る。アタシを追放した2週間後にはもうパーティー自体が無くなっていた。
その後のパーティーでもアタシの不運は止まらない。ダンジョン内で手を失い死んだ奴の責任を私に擦り付けやがった。ンだよアタシが見捨てただって!?全員で決めたことじゃねぇか!
誰が土に塗れて罠を解除し魔物を一足先に狩ってると思ってんだ?!
なんでお前らがこんなにも楽に歩けてると思ってんだ?!
もうアタシは面倒になっちまった。
アタシを追放し新たに人族の女のシーフを入れたパーティーが1ヶ月で全員死んだって話を聞いた時はもうスカッとしたね。ギルド側から幾分かありがてぇ話を頂く羽目になったけどよ。
何やら
「仲間と揉めるな」「お前の行動が人を殺しているんだぞ」
とか。もう何も覚えてはいねぇがな。
アタシの名はサルサ。
自分を呪う斥候だよ。




