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隠した過ち

作者: あーくん

よかったら読んでください。


 イメージカラーは黒。

そんな俺は今日も「お前には未来はない」という内容の曲を聴いて学校に行く。

ダークな曲が俺の性分に合っているし、ポジティブな情報よりもネガティブなものの方が俺にとっては数倍エネルギーになる。

やがて着いた。憂鬱(ゆううつ)な場所に。


 古典の授業。みんなプリントを回している。

俺の所にもそれは来た。

……。ふざけてんのか?

前の席のクソ沼は頭の上でしゃかしゃかと紙を振っていた。

腹立つわー。絶対こいつと仲良くなれない。

俺は一枚取って、そんなことはせず、丁寧にプリントを回した。

クソ沼、俺はお前と違うんだよ。

心の中で静かに毒を吐いた。


 あー、疲れたー。

学校の授業でたくさん頭を使って、くたくたになった俺はベッドにダイブした。

早く席替えしたいなー。

前の席のクソ沼ってやつがどうも気にくわない。

あいつのイメージカラーは、赤か黄色のビビッドカラー。俺と真逆だ。

雰囲気が明るいせいか、あいつの周りには男女関係なく人が寄ってくる。

そんなあいつに嫉妬という感情が芽生えてしまう。仲良くなれそうにない。

負の感情を持ちながらリュックから物を取り出すと、二着(にちゃく)の体操服が出てきた。

そして、タグには黒いペンで沼田と書いてあった。

うっわ、最悪。よりによってあいつのかよ。

もう、学校に行きたくないなって思った。


 「(きみ)、僕の体操服持ってないよね」

翌日の朝、聞かれた。

「持ってない」

正直に言えば良いのに、言えない。絶対言った方が良いのは分かってるんだけど、バレなければ恥かかなくて済むと思っている自分が確かに存在している。

「そっか。濡れ(ぎぬ)着せたら駄目だよね。ごめんね、疑って」

謝られた。クソ沼は何も悪くないのに。悪いのは100パー俺なのに。

罪悪感を感じずにはいられなかった。


 自宅学習が終わり、息抜きにスマホでもいじろうと思った。

動画投稿サイトを開く。

開いたら、度肝を抜かれた。

「おすすめ」にクソ沼が出ていたのだ。

あいつ、こういうのやってんのかよ。

どんな動画か見てみたかったので、見ることにした。

曲の替え歌だった。しかも、俺がいつも学校に行くときに聴いているやつだった。

まじか、この曲知ってんのか。

マイナーな曲のせいか替え歌がつまらないせいか、「いいね」は少ない。そして、コメントは1つ。

どんなコメントだろう?

開いてみると、また度肝を抜かれた。

書いたのはクソ沼だった。その内容は、この曲がいいと肯定するものだった。

あいつもこの曲好きなんだ。

その時、沼田と気が合うんじゃないかと思った。

友達になりたい。でも、そのためにはやるべきことがある。

俺は決意した。


 「ごめん、体操服、俺が持ってた」

朝、登校してすぐ、先に来ていた沼田に謝った。

「あれ?君、否定してなかったっけ?」

「あれは嘘だったんだ。マジでごめん。許してもらえなくても俺は沼田の判断を受け止める。これはお詫びの(しな)だ」

そう言って、俺の大好きな板チョコを差し出した。

しかし、彼は首を振った。

「これは受け取れない」

どうやら、許してもらえないようだ。

そっか。そうだよな。許してもらえなくて当然だよな。嘘ついてたわけだし。

落ち込んでいると、彼の声色(こわいろ)が変わった。

「でも、君の謝罪の気持ちは受け止めるよ。もう自分の過ちを隠そうとしない?」

「もちろん。本当にごめんな。反省してる」

「分かった。君のこと信じるよ。じゃあ、今回の罪のつぐないとして、僕の友達になってよ」

え?それがつぐない?ありがたすぎる。なんて器の大きいやつなんだ。

このお方、めちゃくちゃいいやつじゃん。

「俺で良かったら」

二人の間にきらめく友情が生まれた。

この日から学校が楽しくなった。

読んでくれてありがとうございました。

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