表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生伝説~異世界転生でスローライフを希望したら、そこは魔物が溢れる土地でした~  作者: オオモリノサトウ
幼少期編~スローライフと準備期間~
7/14

終わりの大地って聞いて無いんですが

ブックマーク5件突破!

ありがとうございます!ありがとうございます!

 


「ごめんくださーい!」


 あの場所から、だいたい徒歩三十分程度で村長の家に到着した。

 片方にアーチ、もう片方にメイ。サンドイッチの具にされた俺、という図だ。

 端から見れば、両手に花のうらやまけしからん状況だ。全少年が俺に「そこを変われ」と思うことだろう。

 俺自身、こういう状況を目撃したら、つい暗殺の計画を練ってしまう。

 計画の肝は誰に罪を擦り付けるか、だな。


 けどだ、考えて見てほしい。メイの方はいいとして、アーチだ。

 あの爆発玉が、この村の長をいつ爆散させるか分からない。なぜか知らないが、個人的な恨み事らしきことを言っていたし。

 そうなってしまえば最後。アーチが勝手した宣戦布告に、村人たちは応え、戦争へと発展してしまう。


 流石に温厚な村人達はそんな荒事をしないと思うが、言及が始まってしまうだろう。この爆発玉を連れてきたのは誰か、と。

 そうなったら言い逃れできない。直ちに両親に報告がなされ、俺は地獄の特訓を受けることになる。

 ライトの特訓はただ単純に「きつい」だけだが、スロームの特訓は「血反吐を吐き、のた打ち回る」だ。もっと簡単に言うなら死あるのみだ。


 俺は即座にそこまで想像を膨らませ、身震いをした。

 さて、この爆発玉をどう制御するか。それを失敗すれば、お先真っ暗、視界も真っ暗になってしまう。

 辺境の村にしては大きめの家の扉を、宿敵のように睨み、闘争心を露にする。

 アーチとメイは俺を見て、二人して首をかしげた。


「よっ、ルーアルンデ。ようやく来たか、入っていいよ」


 木製の扉が開き、現れたのは金髪を短めに切った青年、クルセイだ。髪色からヤンキーだと勘違いをされそうだが、性格はその真逆。

 気性が穏やかでフレンドリーなのだ。

 村長に使えているパシリ件護衛、と本人談だ。


 実はクルセイには顔見知り程度には、会っている。

 村唯一の調合薬師のガールの店で。

 クルセイに初めてあったとき、ガールは運悪く出掛ていた。

 1年間の修行を経て、信頼を勝ち取ったルーアルンデは留守を任されたため、対応した。

 クルセイは知り合いの女性が風邪を引いてしまい、薬を貰いに来たのだと言った。

 ガールの店に来る人は、風邪を引いた人が大半だ。対応のマニュアルと、薬はガールが用意良く作っている。

 クルセイに薬を渡し、「ありがとう」とはにかみながらお礼を言ってきたのは今でも覚えている。


 その時から、村長の所で働いていると聞いていたが、まさか本当だったとは。

 ぐぬぬ、勝ち組め。


「ようやく来たか?……その口振りだと、僕が来ることを知っていたようですね」


「ああ。スローム様が思念疎通の魔法を使って、教えてくれたんだよ」


 思念疎通とな。ものすごく便利そうな魔法だが、これまた聞いたことがない。

 あの母親、本当に何者なんだ?


「そうだったんですね。わざわざ出迎えてくれて、ありがとうございます」


「いやいや、いいんだよ。これも仕事だからね」


「あ。連れもいるんですが、入れるのは不味いですよね」


 クルセイは初めて気づいたように、俺の左右を見ると、頭を下げた。


「あ、アーチお嬢様もお帰なさいませ!」


「ただいま。お仕事ご苦労様です」


 恒例のような自然体で二人は挨拶をする。

 ちょっと待て。今ものすごく不穏なことを言わなかったか。


「あ、アーチがお嬢様?冗談キツいですよ、クルセイさん」


「知らなかったの?アーチお嬢様はシーク村長の娘さんだよ」


 ふと、先の自己紹介を思い出す。アーチ・クラスト、確かにそう言っていた。

 家名を言っていた。

 今までの経験で、大半の人が家名を持たないことを知っていた。では、この世界における家名の意味とは。

 簡単だ。王族や貴族等々、えらい人のみにつけられるのが家名だ。

 ちなみにこの村では重複することなどないため、名前だけで呼んでいる。町とかに行くと最初に出身地や特徴を言うらしい。


 しかし、アーチがお嬢様とはねぇ。人は見掛けと性格によらないってことか。いや、アーチの見かけ事態は、どこかの貴族もかくやって感じだけど。

 そうとは知らず、投げちゃったよ。

 クルセイは俺の耳元に近づくと、小声で説明した。


「お嬢様は、シーク村長の影響を受けて、相当常識から外れているんだ。君には恩があるから、忠告しとく」


 悪意のなく損害を与える人間は恐ろしいと。


「村長にそんなこと言って、いいんですか?首飛びません?」


「バレたら飛ぶね、物理的に」


 怖いことをさらっと言ってくれる。

 違う。クルセイの額には汗が流れ、びしょびしょになっている。


「だけど、君が心配だから言っている。あの人はどこかおかしいから気を付けて。決して悪い人じゃないけどね」


「は、はい。わざわざありがとうございます」


 俺のためだけに、危険を省みていないのだ。

 頭が上がらないな。


「お嬢様のこともよろしくな」


 最後にそう締め括り、クルセイは俺の肩を叩いた。

 アーチのことにも気を掛けるその優しさ。

 あんた、聖人君子か。複数の会話が聞き取れちゃうか。マルチタスクの達人か。


「ええ。常識に疎いのは僕もですし、それ以上に素直でいい子じゃないですか」


「そう言ってくれると助かるよ」


「友達にもなりましたしね」


 その言葉にクルセイは大きく見開いた。そんなに意外だったんだろう。


「そうか。ありがとうな」


 一言のお礼。それに複雑な感慨を表していた。


「二人だけで、なに楽しそうにしてるのよ。私も混ぜて!」


「うん。そういう雰囲気を出すのは、二人だけの時にしてほしい。そして秘密の会合を私にも見せてほしい」


 除け者にされて、存在を忘れられた二人娘は抗議の声を上げる。


「とんでもない勘違いをしてるんじゃありません!」


「そうなの?」


 心底心外そうにメイは頬を触る。どういう目で見ていたんだ。俺とクルセイが絆を育んでいる所を。


「そうだ。俺もクルセイさんもノーマルだ。ついこの間も、クルセイさん。意中の女の子に飲ませるために、媚薬を作れないかと相談して……」


「あー!あー!何を言っているのかね、ルーアルンデ君は。ガールさんと相談なんてしてないよ!」


「あ」


 クルセイを除いた三人が、阿吽の呼吸で声を重ねさせる。


「墓穴ありがとうございます。俺はガールさんなんて単語出してませんでしたよ」


「は、謀ったな!」


「手のひらで踊る人形が悪いんだよ!

 と言いたいところですが。僕は何もやってませんよ。クルセイさんの自爆です。自縛です」


「うのおおお」


 頭を抱え、その場にピョンピョンと跳ねる。

 うずくまる。憐れなり。


「門前で何を騒いでいる………ん?」


 渋い年期を感じさせる、着物らしきものを装着した、男が顔を出した。

 顔のあちこちに細かい傷が刻まれており、戦いの歴史を彷彿とさせた。


「も、申し訳ありませんシーク村長!」


 クルセイは情けない声で平謝りをする。

 仕方ないので、クルセイから注目を引くことにした。


「お初にお目にかかります。私はライトの息子、ルーアルンデと申します」


 慇懃にお辞儀をし、名乗りをする。けれど、シークは俺を見ていない。

 クルセイすら見ていなかった。

 ならどこを見ているのか。俺の右側、メイの方を熱心に見ていた。


「お、おおお。メイちゃんじゃ、ないか!」


「きもい」


 メイは一蹴をして、俺

 の背中に身を隠した。

 き、気持ちは痛いほど分かるが、村長にそんなことを言って大丈夫か?


「どうしたんだい、こんな所に。そうか!

 ついに私の妻となることを決心してくれたんだね!」


「この、変態がぁぁああ!私の友達に手を出してんじゃない!」


 アーチの右ストレートが、シークの顔面に突き刺さる。

 心なしか、俺に殴りかかったよりも、切れのある攻撃だ。


「き、気持ちいい」

 

「…………変態だ」


 おっと。思ったことが口に出てしまった。シークのテンションはフルでハイだから、

 自分の世界に浸って、聞こえなかったようだ。良かった。


「こんな変態ほっといて、私の部屋に行こ」


「うん」


 アーチはメイの手を引くと、家の中へと入っていった。

 助かった、とメイはため息を吐いた。


「そ、そんなぁ」


 情けない声を上げ、メイが入っていった自宅を見るシーク。

 途端に、雰囲気ががらりと変わり、剣呑な空気が出る。


「さて、ルーアルンデ君。事の顛末を聞かせたまえ」


 この変わりようは。伊達でも村のトップってことか。

 天と地、月とすっぽんほどギャップがある。

 緊張で汗が一筋流れるのを感じた。

 まさかこれを想定して、先程の失態を演じたのでは……いやないな。

 あれはマジで本心からの行動だったと思う。本気と書いてマジと呼ぶ。

 なんて、冗談で緊張を解き、シークに一礼する。


「その前に、ここで話すのも何ですから、場所を移しましょう」


「ならば、私の家に来るが良い。案内してやる」


「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」


 シークの案内で家へと入る。その間際クルセイがボソリと呟いた。


「わざわざ虎穴に入らなくても良いのに」


 聞こえていますよ。

 それに虎穴いれずんば虎児を得ず、という言葉があって。

 危険は承知の上だが、何か得られることがあるかもしれない。


 玄関からすぐ右にあった応接室。部屋事態は装飾品も特になく、質素な感じだが、広い。

 真ん中に対話用の机と椅子、隅の方にこれまた机があるが、まだ広さを感じる。

 シークに促されるがままに、椅子に座り、真正面から対話相手を捉える。

 立った状態のままシークの両端に控えているのは、クルセイと丸メガネを掛けて鋭い目付きをしている男だ。


「さて、ルーアルンデ君」


「はい」


 両腕を組み、シークは話を促す。

 簡潔に事の顛末を話した。


「そうかい、そんなことがあったのか。報告ありがとう」


「いえ。私の判断ミスで起こった事故ですから」


「しかしその年で、初級魔法を全て無詠唱とは。驚いたぞ」


 どこに驚かれる要素があるのだろうか。


「それほどすごいことなのでしょうか?

 初心者用の本にも記載があったので、珍しくないのでは?」


「それは恐らく、代表的なスキルを書いてあっただけだろう。そこに詠唱短縮もあった筈だ」


 目を閉じ、本の内容を思い出す。俺が詠唱短縮のことを知っているのは、そのおかげだ。

 魔法を知識事態、あの本に依存しているからな。


「確かに…。ちなみにどれくらいすごいのか教えていただいても」


「得意属性ならば、割りと簡単に出来るのだが、全てとなれば」


 顎に手をやり、考える素振りを見せる。


「魔術教本を書くレベルだな。もっとも強さを追及するならば、得意魔術のみを訓練した方が強くなる。それが現代の魔術理論だからな。お前のような酔狂なやつはそういまい」


 そうだったのか。俺のやって来たことは酔狂だったのか。ショックだ。


「そ、そうですか。私の家に初級魔法の本しかなかったので」


「そうか。ならば、私の家から持っていけ。確かに上級まではあった筈だ」


「い、いいんですか!?」


 思わぬ提案に、立ち上がり身を乗り出す。

 そんな自分に内心「ここまで魔法に嵌まっていたのか」、と苦笑する。


「ああ。これでも私は、君に期待しているからな。ライトとスロームの子よ」


 ……なるほど。その異常なまでの俺に対する期待の根拠は、両親か。

 方や村一番の剣士で、村長の護衛を勤めている父。

 方や村の結界を張り、その上で上級魔法を乱発できるほどの魔力を持つ母。

 そりゃそうか。俺自体に期待している訳じゃなくて、二人に期待しているんだな。


「ご厚意ありがとうございます」


「ふむ。ところで、だ」


「なんでしょうか」


 今なら何でも応えられる気がする。シークには借りを作ったし、ここで消費するのも悪くない。


「君の性癖を教えてくれ」


 あれ?今、真面目な話をしてたよな。聞き間違いだろうか。俺の灰色の脳細胞がうねりをあげて、間違った解釈をしてしまったのだ。


「……はい?申し訳ございません。もう一度言ってください」


「聞こえなかったかい?───君の性癖を教えてくれ」


「えーっと、あの」


 戸惑う俺に欠片も配慮せず、シークは鼻息を荒くする。


「ちなみに私はね、子供が好きなんだ」


 そうですか、ロリコンですか。

 ─────でしょうね。


「あの成長段階の体、まだ何色にも染めることの出来る純粋さ!控えめに言って、最高」

 

「そ、そうですか」


「それで、君は」


 そんな前降りされたら、何を言っても同類扱いされる気がする。

 い、嫌だな。

 けど、シークに借りがあるのも確かだ。

 自分の本心、本心。女性のタイプ……か。


「自分に好意を持ってくれる人なら誰でも」


 口に出そうと思ったら、意外とスルッと出た。

 誰かに愛されたい、誰かに慕われたい。前世ではそれが叶わなかったから、なおさらそう思うんだろうな。

 自分が女々しい。


「ふっ、フッハハハハ!君は面白いな」


 嬉しくない。


「だとすれば、私の娘なんてどうだね?」


「向こうは好意など抱いていないでしょう」


「いやいや。現段階では、の話だろう?」


「可能性の話をしていたら、何でも言ますよ。それにえらいアーチをプッシュするんですね」


「私としても不本意だがな。あの子はちと常識が足りず、変な所がある。貰い手がいないかもしれんのだ」


 あんたが言うな、あんたが。

 アーチは変な奴だから、貰い手がいない、ねぇ。

 脳内で電流が荒れ狂い、ある一つのアイディアが生まれた。


「良いことを思い付きました。私が友人として彼女に常識を教えましょう。ただし───」


「望みはなんだね」


「話が早くて助かります。この家の全ての本の閲覧権と、何かあった時に後ろ盾となって下さい」


「前者は肯定しよう。だが後者は認めることはできん」


「無理を言っているのは承知しています。ただ良いんですか?」


 がんばって低い声を出そうとしたが失敗し、鼻づまりのような微妙な声になってしまった。


「なにがだ」


「血筋が途絶えるのは。あなたが言っていることはそう言うことです」


「ふむ。そうなった場合は無理やり結婚させる。その権限が私にはある」


「それはアーチにとっても、この家に取っても不幸なことでしかないですよ!」


 アーチは望まない結婚をすることになる。

 クラスト家は、権限を利用して無理やり結婚をさせた、という悪印象が付くことになる。

 それが分からないシークではないはずだ。


「……教育者を雇えば良い」


「それでも意味がなかったこその現状では。私は彼女の友人として対等に教えることができます。何でしたら、魔術や剣術も教えて差し上げても良いぐらいです」


「なに?それは本当か」


 途端に目の色を変えるシーク。どの部分に反応した?

 魔術か剣術か、両方か?

 六歳の俺にどれ程過剰な期待を抱いているのかは分からないが、この際好都合だ。


「え、はい」


「ふむ。……分かった。契約書を持ってこよう。クルセイ」


「承知しました」


 クルセイはその場で一礼。退室した。


「君にはやられたな。まさかそこまで口が動くとは」


「両親の教育の賜物です」

 

「違いない」


 良かった。これで権力者の後ろ盾が手に入った。

 使うようなことにはなりたくないが、万が一の保険だ。アーチが何をやらかすか分からないし。


 応接室の隅の机を見て、微笑を浮かべた。

 そこに立て掛けられている写真。

 遠目からだが、アーチにシーク、それに母親だろうか見知らぬ女性が写っていた。

 ──────良かったなアーチ。お前は愛されているよ。





「あいつに何かされなかった?大丈夫?」


 話が終わった後、アーチの部屋へと案内された。

 ドアを開け、首だけを出したアーチは、俺を見ると開口一番にそう言った。

 本気で心配されているようだ。哀れなりシーク。


「あ、ああ。大丈夫だ」


 あの爆発玉のアーチすら危険視するシークのヤバさ。しかと見届けましたとさ。

 その俺の言葉に満足した様子のアーチは、ドアを全開にする。


 何ていうかピンクが多いな。

 おっと見ないようにな。こう言うのは男女の仲になってから拝見した方がいいと思う。

 紳士だ。


「メイの惨状はなんだ」


 唯一無視できなかった、光景に突っ込みを入れる。

 メイの周りに衣服が散らかっており、今着ている服すらも、慌てて着替えました、と言わんばかりに乱れている。


「私は……汚されてしまった」


「人聞きの悪いこと言わないでよ。メイって可愛いから、ついつい着飾りたくなっちゃって」


「私は人形じゃない」


「ご、ごめん」


 なるほど。シークの血を引いたアーチは、変態性も引き継がれているらしい。


「まあまあ、アーチにも悪気は無いようだし、許してやったら」


「むぅ、分かった。ならそのかわり、次はルーアルンデが人形になってね」


「ちょっと待て。それとこれとは話が違うだろ」


「やったぁ!ルーアルンデも可愛いから楽しみ」


 アーチが跳び跳ね、嬉しさを全面にアピールする。


「お、俺の顔って可愛いの?男らしい顔つきを期待しているんだけど。どうメイ?」


「そんなに見つめられたら、抱きつきたくなっちゃう」


「俺はマスコット扱いか」


 メイの頭に軽くチョップを入れる。


「そうだそうだ。取って置きの場所、案内して上げる」


「そういや、そんなこと言ってたな」


「行こう。ちょっと楽しみ」


 メイも存外乗り気のようだ。意外だな。



 ◇◇◇



 クラスト家から出て、村の外れの高台。

 夕陽が差し込み、アーチの髪色を一層輝かせている。


「ここよ、ここ!」


「おお、すごい絶景」


 最後尾にいるため、まだ景色は見えない。

 絶景。たぶんメイが言うのだから本当だろう。

 早る気持ちを押さえ付け、階段を上る。

 いよいよその絶景の景色とやらが見える。


「なっ!」


 高台を上りきった俺は、あまりの光景に絶句した。

 ああ、なるほど。確かに絶景だ。


 緑色の雄大な自然。青く澄んだ水面が夕陽を反射し、オレンジ色に煌めいている。空気が流れ、木々がさざめく。

 けど、ルーアルンデが衝撃を受けたのは別のことだ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで村の外にあんなに魔物が彷徨いてるんだ」


 その雄大な自然の中。顔のついた大木が、四足歩行の獣が、馬と人が融合したような、キメラが。

 ここから見ただけでも、後十種類の魔物がいる。

 おびただしい魔物の数。

 これでは、一歩歩くごとに遭遇(エンカウント)してしまうだろう。


「え、知らなかったのルーアルンデ。私は知っているけどね。ふふん」


「常識中の常識。ルーアルンデが知らない方が驚き」


 さも当然であるように二人は頷く。

 頭が混乱する。

 のどかな場所だと思っていた。危険がないと思っていた。ライトと修行をするのは意味のないことだと思っていた。

 危機はすぐそこにあった。スロームの結界のおかげで紙一重で回避できていただけだ。


『ダメだ。例え使わなくても万が一というときがある』


 剣の修行を提案した時のライトの言葉だ。その意味の本質を今になって理解した。


「お、教えてくれ。ここは何なんだ」


 なんとか言葉を捻り出すことが出来た。

 二人は顔を見合せ、ある一つの単語をピッタリ口に出した。


「終わりの大地」「終わりの大地よ!」


注意。これはおまけです。作品と一切の関係が無いです。














カール「始まったねぇ」

ルーアルンデ「始まりましたね」

カール「ふむ……それで、だ。メイちゃんはどこだね?」

ルーアルンデ「メイはいませんよ」

カール「なんだと!私はメイちゃんがここにいると聞いたから来たんだぞ !」

ルーアルンデ「決まりきったことを聞きますけど、誰に言われたです?」

カール「制服を着こんだ青年に、だ。次見かけたら、裸に剥いてやる」

ルーアルンデ「まーた、あいつか。それとカールさん?あいつのストリップショーなんて誰得ですか」

カール「私が得をするな」

ルーアルンデ「あんた、男色の気もあったのか!身の危険を感じるわ!」

カール「何を勘違いしている。私にそっちの気はない。ただ溜飲が下がるだけだ」

ルーアルンデ「そ、そうですよねー」

カール「はぁー、なぜルーアルンデ君なのだ」

ルーアルンデ「それはこっちの台詞のような。だいたい流れ的にアーチが出るところじゃないんだろうか」

カール「何か言ったかね?」

ルーアルンデ「いえいえ、ではとっとと仕事をして帰りましょう」

カール「それもそうだな。こんな男だけのむさ苦しい空間にいたくはないな」

ルーアルンデ「よしではいき」

カール「次回。覚悟って一言は言葉以上の重みを感じますね、だ」

ルーアルンデ「僕の台詞を取らないでください」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ