終わりの大地って聞いて無いんですが
ブックマーク5件突破!
ありがとうございます!ありがとうございます!
「ごめんくださーい!」
あの場所から、だいたい徒歩三十分程度で村長の家に到着した。
片方にアーチ、もう片方にメイ。サンドイッチの具にされた俺、という図だ。
端から見れば、両手に花のうらやまけしからん状況だ。全少年が俺に「そこを変われ」と思うことだろう。
俺自身、こういう状況を目撃したら、つい暗殺の計画を練ってしまう。
計画の肝は誰に罪を擦り付けるか、だな。
けどだ、考えて見てほしい。メイの方はいいとして、アーチだ。
あの爆発玉が、この村の長をいつ爆散させるか分からない。なぜか知らないが、個人的な恨み事らしきことを言っていたし。
そうなってしまえば最後。アーチが勝手した宣戦布告に、村人たちは応え、戦争へと発展してしまう。
流石に温厚な村人達はそんな荒事をしないと思うが、言及が始まってしまうだろう。この爆発玉を連れてきたのは誰か、と。
そうなったら言い逃れできない。直ちに両親に報告がなされ、俺は地獄の特訓を受けることになる。
ライトの特訓はただ単純に「きつい」だけだが、スロームの特訓は「血反吐を吐き、のた打ち回る」だ。もっと簡単に言うなら死あるのみだ。
俺は即座にそこまで想像を膨らませ、身震いをした。
さて、この爆発玉をどう制御するか。それを失敗すれば、お先真っ暗、視界も真っ暗になってしまう。
辺境の村にしては大きめの家の扉を、宿敵のように睨み、闘争心を露にする。
アーチとメイは俺を見て、二人して首をかしげた。
「よっ、ルーアルンデ。ようやく来たか、入っていいよ」
木製の扉が開き、現れたのは金髪を短めに切った青年、クルセイだ。髪色からヤンキーだと勘違いをされそうだが、性格はその真逆。
気性が穏やかでフレンドリーなのだ。
村長に使えているパシリ件護衛、と本人談だ。
実はクルセイには顔見知り程度には、会っている。
村唯一の調合薬師のガールの店で。
クルセイに初めてあったとき、ガールは運悪く出掛ていた。
1年間の修行を経て、信頼を勝ち取ったルーアルンデは留守を任されたため、対応した。
クルセイは知り合いの女性が風邪を引いてしまい、薬を貰いに来たのだと言った。
ガールの店に来る人は、風邪を引いた人が大半だ。対応のマニュアルと、薬はガールが用意良く作っている。
クルセイに薬を渡し、「ありがとう」とはにかみながらお礼を言ってきたのは今でも覚えている。
その時から、村長の所で働いていると聞いていたが、まさか本当だったとは。
ぐぬぬ、勝ち組め。
「ようやく来たか?……その口振りだと、僕が来ることを知っていたようですね」
「ああ。スローム様が思念疎通の魔法を使って、教えてくれたんだよ」
思念疎通とな。ものすごく便利そうな魔法だが、これまた聞いたことがない。
あの母親、本当に何者なんだ?
「そうだったんですね。わざわざ出迎えてくれて、ありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ。これも仕事だからね」
「あ。連れもいるんですが、入れるのは不味いですよね」
クルセイは初めて気づいたように、俺の左右を見ると、頭を下げた。
「あ、アーチお嬢様もお帰なさいませ!」
「ただいま。お仕事ご苦労様です」
恒例のような自然体で二人は挨拶をする。
ちょっと待て。今ものすごく不穏なことを言わなかったか。
「あ、アーチがお嬢様?冗談キツいですよ、クルセイさん」
「知らなかったの?アーチお嬢様はシーク村長の娘さんだよ」
ふと、先の自己紹介を思い出す。アーチ・クラスト、確かにそう言っていた。
家名を言っていた。
今までの経験で、大半の人が家名を持たないことを知っていた。では、この世界における家名の意味とは。
簡単だ。王族や貴族等々、えらい人のみにつけられるのが家名だ。
ちなみにこの村では重複することなどないため、名前だけで呼んでいる。町とかに行くと最初に出身地や特徴を言うらしい。
しかし、アーチがお嬢様とはねぇ。人は見掛けと性格によらないってことか。いや、アーチの見かけ事態は、どこかの貴族もかくやって感じだけど。
そうとは知らず、投げちゃったよ。
クルセイは俺の耳元に近づくと、小声で説明した。
「お嬢様は、シーク村長の影響を受けて、相当常識から外れているんだ。君には恩があるから、忠告しとく」
悪意のなく損害を与える人間は恐ろしいと。
「村長にそんなこと言って、いいんですか?首飛びません?」
「バレたら飛ぶね、物理的に」
怖いことをさらっと言ってくれる。
違う。クルセイの額には汗が流れ、びしょびしょになっている。
「だけど、君が心配だから言っている。あの人はどこかおかしいから気を付けて。決して悪い人じゃないけどね」
「は、はい。わざわざありがとうございます」
俺のためだけに、危険を省みていないのだ。
頭が上がらないな。
「お嬢様のこともよろしくな」
最後にそう締め括り、クルセイは俺の肩を叩いた。
アーチのことにも気を掛けるその優しさ。
あんた、聖人君子か。複数の会話が聞き取れちゃうか。マルチタスクの達人か。
「ええ。常識に疎いのは僕もですし、それ以上に素直でいい子じゃないですか」
「そう言ってくれると助かるよ」
「友達にもなりましたしね」
その言葉にクルセイは大きく見開いた。そんなに意外だったんだろう。
「そうか。ありがとうな」
一言のお礼。それに複雑な感慨を表していた。
「二人だけで、なに楽しそうにしてるのよ。私も混ぜて!」
「うん。そういう雰囲気を出すのは、二人だけの時にしてほしい。そして秘密の会合を私にも見せてほしい」
除け者にされて、存在を忘れられた二人娘は抗議の声を上げる。
「とんでもない勘違いをしてるんじゃありません!」
「そうなの?」
心底心外そうにメイは頬を触る。どういう目で見ていたんだ。俺とクルセイが絆を育んでいる所を。
「そうだ。俺もクルセイさんもノーマルだ。ついこの間も、クルセイさん。意中の女の子に飲ませるために、媚薬を作れないかと相談して……」
「あー!あー!何を言っているのかね、ルーアルンデ君は。ガールさんと相談なんてしてないよ!」
「あ」
クルセイを除いた三人が、阿吽の呼吸で声を重ねさせる。
「墓穴ありがとうございます。俺はガールさんなんて単語出してませんでしたよ」
「は、謀ったな!」
「手のひらで踊る人形が悪いんだよ!
と言いたいところですが。僕は何もやってませんよ。クルセイさんの自爆です。自縛です」
「うのおおお」
頭を抱え、その場にピョンピョンと跳ねる。
うずくまる。憐れなり。
「門前で何を騒いでいる………ん?」
渋い年期を感じさせる、着物らしきものを装着した、男が顔を出した。
顔のあちこちに細かい傷が刻まれており、戦いの歴史を彷彿とさせた。
「も、申し訳ありませんシーク村長!」
クルセイは情けない声で平謝りをする。
仕方ないので、クルセイから注目を引くことにした。
「お初にお目にかかります。私はライトの息子、ルーアルンデと申します」
慇懃にお辞儀をし、名乗りをする。けれど、シークは俺を見ていない。
クルセイすら見ていなかった。
ならどこを見ているのか。俺の右側、メイの方を熱心に見ていた。
「お、おおお。メイちゃんじゃ、ないか!」
「きもい」
メイは一蹴をして、俺
の背中に身を隠した。
き、気持ちは痛いほど分かるが、村長にそんなことを言って大丈夫か?
「どうしたんだい、こんな所に。そうか!
ついに私の妻となることを決心してくれたんだね!」
「この、変態がぁぁああ!私の友達に手を出してんじゃない!」
アーチの右ストレートが、シークの顔面に突き刺さる。
心なしか、俺に殴りかかったよりも、切れのある攻撃だ。
「き、気持ちいい」
「…………変態だ」
おっと。思ったことが口に出てしまった。シークのテンションはフルでハイだから、
自分の世界に浸って、聞こえなかったようだ。良かった。
「こんな変態ほっといて、私の部屋に行こ」
「うん」
アーチはメイの手を引くと、家の中へと入っていった。
助かった、とメイはため息を吐いた。
「そ、そんなぁ」
情けない声を上げ、メイが入っていった自宅を見るシーク。
途端に、雰囲気ががらりと変わり、剣呑な空気が出る。
「さて、ルーアルンデ君。事の顛末を聞かせたまえ」
この変わりようは。伊達でも村のトップってことか。
天と地、月とすっぽんほどギャップがある。
緊張で汗が一筋流れるのを感じた。
まさかこれを想定して、先程の失態を演じたのでは……いやないな。
あれはマジで本心からの行動だったと思う。本気と書いてマジと呼ぶ。
なんて、冗談で緊張を解き、シークに一礼する。
「その前に、ここで話すのも何ですから、場所を移しましょう」
「ならば、私の家に来るが良い。案内してやる」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」
シークの案内で家へと入る。その間際クルセイがボソリと呟いた。
「わざわざ虎穴に入らなくても良いのに」
聞こえていますよ。
それに虎穴いれずんば虎児を得ず、という言葉があって。
危険は承知の上だが、何か得られることがあるかもしれない。
玄関からすぐ右にあった応接室。部屋事態は装飾品も特になく、質素な感じだが、広い。
真ん中に対話用の机と椅子、隅の方にこれまた机があるが、まだ広さを感じる。
シークに促されるがままに、椅子に座り、真正面から対話相手を捉える。
立った状態のままシークの両端に控えているのは、クルセイと丸メガネを掛けて鋭い目付きをしている男だ。
「さて、ルーアルンデ君」
「はい」
両腕を組み、シークは話を促す。
簡潔に事の顛末を話した。
「そうかい、そんなことがあったのか。報告ありがとう」
「いえ。私の判断ミスで起こった事故ですから」
「しかしその年で、初級魔法を全て無詠唱とは。驚いたぞ」
どこに驚かれる要素があるのだろうか。
「それほどすごいことなのでしょうか?
初心者用の本にも記載があったので、珍しくないのでは?」
「それは恐らく、代表的なスキルを書いてあっただけだろう。そこに詠唱短縮もあった筈だ」
目を閉じ、本の内容を思い出す。俺が詠唱短縮のことを知っているのは、そのおかげだ。
魔法を知識事態、あの本に依存しているからな。
「確かに…。ちなみにどれくらいすごいのか教えていただいても」
「得意属性ならば、割りと簡単に出来るのだが、全てとなれば」
顎に手をやり、考える素振りを見せる。
「魔術教本を書くレベルだな。もっとも強さを追及するならば、得意魔術のみを訓練した方が強くなる。それが現代の魔術理論だからな。お前のような酔狂なやつはそういまい」
そうだったのか。俺のやって来たことは酔狂だったのか。ショックだ。
「そ、そうですか。私の家に初級魔法の本しかなかったので」
「そうか。ならば、私の家から持っていけ。確かに上級まではあった筈だ」
「い、いいんですか!?」
思わぬ提案に、立ち上がり身を乗り出す。
そんな自分に内心「ここまで魔法に嵌まっていたのか」、と苦笑する。
「ああ。これでも私は、君に期待しているからな。ライトとスロームの子よ」
……なるほど。その異常なまでの俺に対する期待の根拠は、両親か。
方や村一番の剣士で、村長の護衛を勤めている父。
方や村の結界を張り、その上で上級魔法を乱発できるほどの魔力を持つ母。
そりゃそうか。俺自体に期待している訳じゃなくて、二人に期待しているんだな。
「ご厚意ありがとうございます」
「ふむ。ところで、だ」
「なんでしょうか」
今なら何でも応えられる気がする。シークには借りを作ったし、ここで消費するのも悪くない。
「君の性癖を教えてくれ」
あれ?今、真面目な話をしてたよな。聞き間違いだろうか。俺の灰色の脳細胞がうねりをあげて、間違った解釈をしてしまったのだ。
「……はい?申し訳ございません。もう一度言ってください」
「聞こえなかったかい?───君の性癖を教えてくれ」
「えーっと、あの」
戸惑う俺に欠片も配慮せず、シークは鼻息を荒くする。
「ちなみに私はね、子供が好きなんだ」
そうですか、ロリコンですか。
─────でしょうね。
「あの成長段階の体、まだ何色にも染めることの出来る純粋さ!控えめに言って、最高」
「そ、そうですか」
「それで、君は」
そんな前降りされたら、何を言っても同類扱いされる気がする。
い、嫌だな。
けど、シークに借りがあるのも確かだ。
自分の本心、本心。女性のタイプ……か。
「自分に好意を持ってくれる人なら誰でも」
口に出そうと思ったら、意外とスルッと出た。
誰かに愛されたい、誰かに慕われたい。前世ではそれが叶わなかったから、なおさらそう思うんだろうな。
自分が女々しい。
「ふっ、フッハハハハ!君は面白いな」
嬉しくない。
「だとすれば、私の娘なんてどうだね?」
「向こうは好意など抱いていないでしょう」
「いやいや。現段階では、の話だろう?」
「可能性の話をしていたら、何でも言ますよ。それにえらいアーチをプッシュするんですね」
「私としても不本意だがな。あの子はちと常識が足りず、変な所がある。貰い手がいないかもしれんのだ」
あんたが言うな、あんたが。
アーチは変な奴だから、貰い手がいない、ねぇ。
脳内で電流が荒れ狂い、ある一つのアイディアが生まれた。
「良いことを思い付きました。私が友人として彼女に常識を教えましょう。ただし───」
「望みはなんだね」
「話が早くて助かります。この家の全ての本の閲覧権と、何かあった時に後ろ盾となって下さい」
「前者は肯定しよう。だが後者は認めることはできん」
「無理を言っているのは承知しています。ただ良いんですか?」
がんばって低い声を出そうとしたが失敗し、鼻づまりのような微妙な声になってしまった。
「なにがだ」
「血筋が途絶えるのは。あなたが言っていることはそう言うことです」
「ふむ。そうなった場合は無理やり結婚させる。その権限が私にはある」
「それはアーチにとっても、この家に取っても不幸なことでしかないですよ!」
アーチは望まない結婚をすることになる。
クラスト家は、権限を利用して無理やり結婚をさせた、という悪印象が付くことになる。
それが分からないシークではないはずだ。
「……教育者を雇えば良い」
「それでも意味がなかったこその現状では。私は彼女の友人として対等に教えることができます。何でしたら、魔術や剣術も教えて差し上げても良いぐらいです」
「なに?それは本当か」
途端に目の色を変えるシーク。どの部分に反応した?
魔術か剣術か、両方か?
六歳の俺にどれ程過剰な期待を抱いているのかは分からないが、この際好都合だ。
「え、はい」
「ふむ。……分かった。契約書を持ってこよう。クルセイ」
「承知しました」
クルセイはその場で一礼。退室した。
「君にはやられたな。まさかそこまで口が動くとは」
「両親の教育の賜物です」
「違いない」
良かった。これで権力者の後ろ盾が手に入った。
使うようなことにはなりたくないが、万が一の保険だ。アーチが何をやらかすか分からないし。
応接室の隅の机を見て、微笑を浮かべた。
そこに立て掛けられている写真。
遠目からだが、アーチにシーク、それに母親だろうか見知らぬ女性が写っていた。
──────良かったなアーチ。お前は愛されているよ。
「あいつに何かされなかった?大丈夫?」
話が終わった後、アーチの部屋へと案内された。
ドアを開け、首だけを出したアーチは、俺を見ると開口一番にそう言った。
本気で心配されているようだ。哀れなりシーク。
「あ、ああ。大丈夫だ」
あの爆発玉のアーチすら危険視するシークのヤバさ。しかと見届けましたとさ。
その俺の言葉に満足した様子のアーチは、ドアを全開にする。
何ていうかピンクが多いな。
おっと見ないようにな。こう言うのは男女の仲になってから拝見した方がいいと思う。
紳士だ。
「メイの惨状はなんだ」
唯一無視できなかった、光景に突っ込みを入れる。
メイの周りに衣服が散らかっており、今着ている服すらも、慌てて着替えました、と言わんばかりに乱れている。
「私は……汚されてしまった」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。メイって可愛いから、ついつい着飾りたくなっちゃって」
「私は人形じゃない」
「ご、ごめん」
なるほど。シークの血を引いたアーチは、変態性も引き継がれているらしい。
「まあまあ、アーチにも悪気は無いようだし、許してやったら」
「むぅ、分かった。ならそのかわり、次はルーアルンデが人形になってね」
「ちょっと待て。それとこれとは話が違うだろ」
「やったぁ!ルーアルンデも可愛いから楽しみ」
アーチが跳び跳ね、嬉しさを全面にアピールする。
「お、俺の顔って可愛いの?男らしい顔つきを期待しているんだけど。どうメイ?」
「そんなに見つめられたら、抱きつきたくなっちゃう」
「俺はマスコット扱いか」
メイの頭に軽くチョップを入れる。
「そうだそうだ。取って置きの場所、案内して上げる」
「そういや、そんなこと言ってたな」
「行こう。ちょっと楽しみ」
メイも存外乗り気のようだ。意外だな。
◇◇◇
クラスト家から出て、村の外れの高台。
夕陽が差し込み、アーチの髪色を一層輝かせている。
「ここよ、ここ!」
「おお、すごい絶景」
最後尾にいるため、まだ景色は見えない。
絶景。たぶんメイが言うのだから本当だろう。
早る気持ちを押さえ付け、階段を上る。
いよいよその絶景の景色とやらが見える。
「なっ!」
高台を上りきった俺は、あまりの光景に絶句した。
ああ、なるほど。確かに絶景だ。
緑色の雄大な自然。青く澄んだ水面が夕陽を反射し、オレンジ色に煌めいている。空気が流れ、木々がさざめく。
けど、ルーアルンデが衝撃を受けたのは別のことだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんで村の外にあんなに魔物が彷徨いてるんだ」
その雄大な自然の中。顔のついた大木が、四足歩行の獣が、馬と人が融合したような、キメラが。
ここから見ただけでも、後十種類の魔物がいる。
おびただしい魔物の数。
これでは、一歩歩くごとに遭遇してしまうだろう。
「え、知らなかったのルーアルンデ。私は知っているけどね。ふふん」
「常識中の常識。ルーアルンデが知らない方が驚き」
さも当然であるように二人は頷く。
頭が混乱する。
のどかな場所だと思っていた。危険がないと思っていた。ライトと修行をするのは意味のないことだと思っていた。
危機はすぐそこにあった。スロームの結界のおかげで紙一重で回避できていただけだ。
『ダメだ。例え使わなくても万が一というときがある』
剣の修行を提案した時のライトの言葉だ。その意味の本質を今になって理解した。
「お、教えてくれ。ここは何なんだ」
なんとか言葉を捻り出すことが出来た。
二人は顔を見合せ、ある一つの単語をピッタリ口に出した。
「終わりの大地」「終わりの大地よ!」
注意。これはおまけです。作品と一切の関係が無いです。
カール「始まったねぇ」
ルーアルンデ「始まりましたね」
カール「ふむ……それで、だ。メイちゃんはどこだね?」
ルーアルンデ「メイはいませんよ」
カール「なんだと!私はメイちゃんがここにいると聞いたから来たんだぞ !」
ルーアルンデ「決まりきったことを聞きますけど、誰に言われたです?」
カール「制服を着こんだ青年に、だ。次見かけたら、裸に剥いてやる」
ルーアルンデ「まーた、あいつか。それとカールさん?あいつのストリップショーなんて誰得ですか」
カール「私が得をするな」
ルーアルンデ「あんた、男色の気もあったのか!身の危険を感じるわ!」
カール「何を勘違いしている。私にそっちの気はない。ただ溜飲が下がるだけだ」
ルーアルンデ「そ、そうですよねー」
カール「はぁー、なぜルーアルンデ君なのだ」
ルーアルンデ「それはこっちの台詞のような。だいたい流れ的にアーチが出るところじゃないんだろうか」
カール「何か言ったかね?」
ルーアルンデ「いえいえ、ではとっとと仕事をして帰りましょう」
カール「それもそうだな。こんな男だけのむさ苦しい空間にいたくはないな」
ルーアルンデ「よしではいき」
カール「次回。覚悟って一言は言葉以上の重みを感じますね、だ」
ルーアルンデ「僕の台詞を取らないでください」