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異世界転生伝説~異世界転生でスローライフを希望したら、そこは魔物が溢れる土地でした~  作者: オオモリノサトウ
幼少期編~スローライフと準備期間~
6/14

幼馴染みっていいものですね

 




 スロームのおかげで気絶した後、

 俺にすべての出来事を村長に報告するように、とお達しがあった。両親に言われただけなのだが。

 六歳児を一人で村長の家に使わすなよ、とは思ったものの、

 基本的には両親は放任主義だし、自分の責任は自分で取れってことか、と勝手に解釈した。

 それに、信頼されているのだと思えば悪くない。

 道すがら、制約によってどういう影響が出たのか実験してみることにする。

 俺が一番得意としている、炎系の魔法を使ってみることにしよう。

 右手に意識を傾け、魔力を躍動させる。そのままイメージを持って奇跡を起こす。───それが通常であれば。

 イメージはしっかりと持てている。

 問題は魔力が、強大な何かに押さえ付けられていることにある。いくら魔力を練ろうとしても、形にならない。

 これは思った以上に酷いな。

 試しに、詠唱込みで魔法を発動させてみる。


「全てを燃やせ、ファイア」


 詠唱に決まった文言はない。イメージを確立させるためのツールに過ぎないからだ。それは詠唱の短縮や、無詠唱でも魔法を発動できることから、明らかだ。

 けれど、詠唱あるなしでは、難度が大きく変化する。

 無詠唱とは違い完全なるイメージを持って、魔力を動かそうとする。

 無理矢理引っ張り、少量の魔力から、なんとか吹けば飛びそうな、淡い灯火を出現させた。


「ふぅー。自業自得ってのは分かってるけど、どうにもキツいな」


 詠唱した上、無理矢理魔力を練ってもこの程度。ここ数年の努力が無になったようだ。

 あーあ、やるせない。

 とんでもない喪失感を胸に、村長の家へとぼとぼ歩く。

 行動範囲が狭い俺だが、この村も狭い。村長の家なんて大それたものは、嫌でも耳に入る。


「ま、魔族はわたしが成敗してやる!」


 威勢の良いソプラノの高い声が、俺の耳朶に響く。

 何事かと、声の発信源を視界に入れる。

 夕陽のようなキレイなオレンジ色の少女が、ファイティングポーズをしている。

 対するのは、ラベンダーのような鮮やかな紫の髪を流してキョトンとしている少女だ。


 ────魔族。

 人間と血を血で洗う闘争を繰り返す。そんなイメージだ。

 けど確かこの世界では、人間と魔族は和平している筈だ。

 スロームから一度、私は魔族に助けられたのよ、と自慢された。

 もしかするとあれだろうか。ちょっと人種や自分とは少し違う存在を迫害したいっていう、人間特有のあれだろうか。


「うわぁ、いじめ。こういうのどかな村でもあるんだな」


 顔をしかめ、不快感を露にする。

 誰か止める大人は────いないようだな。

 いたらこうなる前に止めていることだろう。

 だとすれば、止めるのはルーアルンデしかいないということになる。


 嫌だなぁ。面倒だなぁ。

 しかしあれだ。いじめってのは、積極的と消極的の二つが存在しているらしい。

 要するに、実際に接触をするか、それを見ているだけかの違いだ。

 知らぬ存ぜぬを貫いてもいいが、自分が加害者になるのはよろしくない。

 うんうん。

 だからこれからすることは、決して相手のためなんかじゃなくて、自分が気持ち悪い思いをしたくないだけだ。

 自己満足だ。


「君、いじめは止めなさい!」


 息を吸い込み、制止の声を上げる。これが同年代の男複数だったら、小鹿のように足が震えたことだろう。

 けど、ここにいるのは十何歳も年が離れている、ただの少女だ。俺に敗北はないのだよ。


「いじめなんかじゃない!わたしは魔物からこの村を守るために」


 あの紫の少女は魔物ではない。魔物とは知能のない生物のことを指す。

 それを紫の少女に言ったのだ。これ以上の侮辱があるだろうか?


「言い訳は結構。こうやって無抵抗の相手いじめて、恥ずかしいとは思わないのか?」


「だってこいつは魔族だから」


 はっ!出たよ。あいつはあんなんだから、いじめても良い。本当に人間の本質ってのはどこに行っても変わらない。


「だからなんだ?ちょっと種族が違うからって迫害するのか?親の顔が見てみたいな」


「そんなに魔族を庇うってことは、あんたも敵なの」


「ああ、お前の敵だ」


 いじめなんぞする奴の味方なんてしてやるかよ。敵と認定されて清々しいほどだ。


「うおおおお」


 猪突猛進。30メートルは離れた距離をオレンジの少女は走り、詰める。

 そのまま右手を思いっきり後ろに引き、バネのようにストレートが放たれた。


「甘い」


 こざかしさの何一つない、愚直な鈍い一撃。

 俺はライトに一撃すら入れることが出来ていないが、3年間もの訓練を積んできた。

 あくびが出るほど静止した攻撃を躱し、オレンジの少女の腕を掴む。生み出された軌道をそのまま利用するように投げた。

 ライト直伝の投げ技だ。これに炎魔法を放って上げれば、もれなく、転がる焼おにぎりが完成する。


「え、え?」


 何が起こったか分からない、とばかりに目をパチパチさせる仰向けになったオレンジの少女。

 さて、力を振るい返り討ちにあったんだ。それ相応の報いは受けてもらう。


「目には目を歯には歯を。俺の国の言葉なんだが、良い言葉だよな。やられたらやり返すってことだ」


「村の敵を仕留めれなかった。殺せば良いじゃない」


 殺すって、発想が極端すぎないか。それにそのニュアンスだと勘違いしていることになる。

 ルーアルンデとオレンジの少女の二人が、だ。

 いやいや、深く考えれば最初からそのようなことを言ってた。

 頭に血が登り、冷静さを失ってしまっていた。

 反省反省。が、しかし納得いかない。


 オレンジの少女が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ちょっと待て。お前は勘違いしている」


「勘違い、何が。魔族は悪者でしょ?」


「それは旧世紀の話だ。今は人間と魔族は手取り仲良くしている」


「う、うそ」


「だいたいおかしいとは思わないのか。魔族である彼女がこの村で生活をしているのは」


 オレンジの少女は明らかに狼狽し、ルーアルンデの言葉にうなずいたと思ったら、首を横に振っている。


「で、でも絵本で読んでもらった魔族は悪いやつだったし」


 一体この少女は何を言っているのだろう。


「それは昔話な」


 ピシャリ、と言い放ってやり、勘違いを訂正する。オレンジの少女の中でも合点がいったのか、途端に顔が青白くなった。


「わ、私どうしよう」


「悪いことをしたなら、することがあるだろ。まずはそれからだ」


「うん、あのごめんなさい」


 素直に頭を下げ、謝る。

 この少女は正直で純粋なのだ。いささか過ぎるだけだ。


「うん?」


「ごめんなさい!」

 

 もう一度頭を下げる。紫の少女はやれやれと手の平をヒラヒラさせた。


「気にする必要はない。茶番だから」


 お、おう。毒舌というか、言いにくいことを切り込んで来るな、この少女。

 けど、無事に解決したようで、よかったよかった。

 しかし容姿を見ても、紫色の少女が魔族だとは思えない。

 人族と同じ顔立ちをしているのだ。額に生える角もないし、肌も紫色だったりしない。

 驚くべきはその容姿だ。

 端的にいうとものすごくかわいい。俺は決してロリコンじゃないが、そっちに目覚めてしまいそうな魅力がある。

 それはオレンジ色の少女も同じだ。

うん。美少女、ならぬ美幼女だな。

 おっと、やることがあったな。


「すまん、勘違いしてた」


 オレンジの少女にお詫びをする。謝られる筋合いはないとばかりに首を傾げた。いいんだ俺の自己満足だ。

 さて俺は立ち去るかね。


「ちょっと待って」


 無言で立ち去ろうとした俺に声を掛ける紫の少女。


「うん?どうしたんだ」


「ありがとう。助かった」


「いいんだいいんだ。結局君は、全てが分かってたようだし、助けなんて必要なかっただろ?」


「それは違う。荒れ狂う猛獣をおとなしくさせてくれたのはあなた。お礼をしたいんだけどいい?」


「お礼なんていいって。結局俺の自己満足だしな」


「ダメ……なの?」


 そんな可愛い上目使いでお願いされたら、おじさんホイホイ突いて行っちゃうよ。おっと、ついて行くね。

 こんな年から男の従いかたを身に付けているとは……末恐ろしい。


「ダメじゃないよ。何かな?」


「うん。でも私じゃ出来ることは少ないし。……そうだ、お弁当作ってきていい?」


 まさかの女の子からの、お弁当宣言。幼女からだが、嬉しいものは嬉しい。


「お、おう。ありがとうな」


 しかし、お弁当か。こういうのって学校だったら、恋人って思われるんだろうなぁ。


「それで友達だって言い訳して」


「とも……だち?」


 おっと想像していたことを口に出してしまっていたようだ。


「ああ、悪い。嫌な思いをさせて」


「ううん。嫌じゃない、嫌じゃない。私達は今日から友達」

 

 あれ?どういう話の流れ?

 けどまぁ、いいか。俺も友人の一人は欲しいと思っていた。


「オッケーなら今日から俺たちは友達だ」


「わ、私は」


 オレンジの少女が、うずうずと体を震わせ、挙手をした。


「俺はいいけどよ、この子にした仕打ちを思い出せよ」


「いいよ?」


「いいのかよ」


 被害はなかったとはいえ、暴力を振るわれかけたのだ。それをこうもあっさり受け入れるとは。案外この子は大物かもしれない。


「そういや俺たち、自己紹介してなかったな」


 俺の言葉を皮切りに、合コンのごとく、自己紹介会が開催された。

 オレンジ色の少女がアーチ・クラスト。紫の少女はメイと呼ぶようだ。


「じゃあその友達には、とっておきの所を案内しないとね」


「とっておき?

 悪い。俺これから村長のところに行かないといけないんだ」


「あんな奴のとこに、何しに行くの」


 村一番の偉い人をあんな奴呼ばわりにするアーチ。色々と見ていてハラハラする。


「いろいろあってな」


「ふーん、私もついていくわ」


 面倒くさいことを言い出した。こんないつ爆発するか分からないアーチを、村長の所に行かせたくない。


「子供はおとなしく遊んでいなさい」


「あなただって子供じゃない。背もわたしより低いし。何歳なの」


 並んで見たら分かるが、若干アーチの方が背が高い。

 まぁ、あれだしね。女子の方が早く成長するから。


「六歳だ」


「わたしより年下じゃない!わたしは八歳よ。ふふん」


「そうですかそうですか」


「なによ、張り合いがないわね」


「俺は子供じゃないんでね」


「子供じゃない」


「うぐ」


 この姿になったことを、初めて恨めしく思った。精神的には成人しているが、アーチの目から見たら、そりゃ子供に見えるだろう。


「じゃあいいわね、今すぐ行きましょう。あなたはどうするの?」


「私も付いて行く」


「そう、じゃあ決まりね」


 あれよあれよと本人を抜きに話が進み、逃げ場を封じられてしまった。


「俺の意思は聞いてくれないんだな」


 俺のパーティーに仲間が二人加わりました、って所か。




 ────これが生涯の友であり、同じ苦境を乗り越えた幼馴染みとの出会いであった。

 




























ルーアルンデ「懲りずに始まったな」

メイ「始まったね、茶番」

ルーアルンデ「初手から辛辣は、流石に作者が可愛そうだな」

メイ「辛辣?どこが」

ルーアルンデ「本気で言ってんだろうなぁ。ま、いいや。メイさんや、自己紹介をしてくれるかね?」

メイ「任せて。私は魔族のメイ。系統は内緒。アーチを断トツで押さえ、こうして予告の場に抜擢された、メインヒロイン」

ルーアルンデ「それ、アーチが聞いたら怒るから 、言うの止めろよ。後メロイヒロインなんて言葉、どこで覚えた」

メイ「うん?頭の中に制服姿の変な男が現れて」

ルーアルンデ「あの作者!」


メイ「これを言ったら、ルーアルンデが喜ぶって聞いて……ダメ?」

ルーアルンデ「うぐ。上目遣いがまぶしいこれを予測してたか、あいつ」

メイ「ちょろい」

ルーアルンデ「あのー、本音は隠す努力をしようといいますかね」

メイ「だから隠してる」


ルーアルンデ「?……まいいか。次回予告するとしましょうか」

メイ「うんじゃあ、せーの」


ルーアルンデ、メイ「次回。終わりの大地って聞いて無いんですが」


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