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異世界転生伝説~異世界転生でスローライフを希望したら、そこは魔物が溢れる土地でした~  作者: オオモリノサトウ
幼少期編~スローライフと準備期間~
5/14

母親の温もりって偉大なものですね

ブックマーク3件ありがとうございます!

嬉しすぎて狂喜狂乱、裸で躍り狂いました。(嘘です)でも、心の支えになっているのは嘘偽りのない事実です。躍り狂いもしました。裸の部分だけが嘘です。

もし面白い、と少しでも思ってくれましたら、感想やブックマークをお願いします!

 

「それで、言い分は何かあるか」


 ヒノキのいい匂いが香る我が食卓にて、俺は正座(自主的に)をしていた。このまま勢いで土下座までする勢いである。

 足元が水没して(・・・・・・・)いるため、だんだんと体温が奪われている気がする。


 あの銀髪の精霊、シルが放った水魔法は、今にも燃え盛らんとする木々のみに留まらず、家まで侵略した。

 家の中にあったものには被害がなかった。不幸中の幸いだ。

 暗くどんよりとした雰囲気が辺りを漂っている。もっとも暗いのは雰囲気だけでなく、視覚的にも同じことが言える。


 我が食卓は、丁度日陰に位置する所にあるため、通常はろうそくに火を灯すのだが、雰囲気を考慮したのか、自然状態で薄暗い。

 俺を真正面で仁王立ちしているのは、厳つい顔を一層凶暴にさせたライトと、「やっちゃったねー」的な顔をしているスロームだ。


 そりゃ家を全焼させかけたかと思ったら、今度は水浸しにしてくれたのだ。普段は人の心に疎い俺だが、痛いほど怒りを察しできてしまう。

 ごめんなさい、と言って許してくれるかどうか。

 …………いや違う。失敗をしたなら、打算抜きで謝らないとな。許すか許さないかは相手が決める。俺はできる限りの挽回をするだけだ。


「言い訳はありません。本当にごめんなさい」


 深く頭を下げ、相手の反応を待つ。数秒の気まずい沈黙の後、ライトが深々とため息を吐いた。

 感情の起伏があまりないライトだが、今回ばかりは怒り心頭のようだ。


「今回は幸いに被害はなかった。だが下手をすればとんでもないことになってたぞ」


「はい。申し訳ござません」


 ライトの言葉は耳が痛い。けれどそれを逃げずに受け入れる。ライトの言っていることは事実だ。

 それに、ライトも怒鳴り散らしたいだろうに、俺のことを思って、諭すように言ってくれている。

 事態を想定仕切れてなかった。甘かった。

 魔法は強力だ。それ故にあらゆることを想定しないといけない筈なのに。


「まあまあ、あなた。ここは私に任せて」


 母性を全開にした声が陰鬱な空気に響く。今まで黙って聞いていたスロームが、ライトと俺の間に割ってきた。


「だがしかしだな」


 急激に強ばった表情が弛緩し、スロームを止めに掛かるライト。


「あ、な、た?」


 優しげな声に微笑を浮かべるスローム。だが氷点下の微笑だ。無言の圧も同時に発生させている。


「わ、わかった」


 ライトは吃りながら、首を縦に振る。

 あの厳格で感情の起伏が小さい父親が、あっさり引くほどの怖さ。

 恐怖で俺の二の腕に鳥肌が立った。


「ルーアルンデ」


 スロームは他者を圧倒する威圧を消し、俺に問いかけた。その変わり身が怖い。


「はい」


 冷や汗を流しながら、それでもスロームの瞳を真っ直ぐに見返す。


「幼いあなたに、こんなことを言うのは酷かもしれない。けど言いましょう。あなたはもう既に子供の力じゃないの。その辺りと大人ですらあなたにかなわない」


「そ、それは流石に言いすぎでは…………」


 いくら訓練を積んでいるとはいえ、俺は六歳児だ。

 将来を見据えれば、並みの大人を凌駕する力を持つとは思うが、今現在は子供の力にすぎない。

 町中のチンピラに喧嘩を吹っ掛ければ、間違いなくぼこぼこにされる。原型を留めるか否かは議論の余地があるとは思うが。


「いや、もうお前はその域に達しつつある。この村の大人にはまだ太刀打ち出来ないがな」


 スロームの言葉に賛同するライト。いやいや、親バカ過ぎるでしょ。

 てか、後半部分に聞こえたことが気になるんだが。

 ここの村人達は平均の大人より強い?

 だめだ考えるのをよそう。嫌な予感がする。


「善悪の判断も常識も足りない。そんな状態で力を振るえばどうなると思う?」


 仮に、仮にだ。俺がそれぐらいの力を持っているなら、答えは決まっている。


「他者にも自身にもよくないと思います」


「そう、良くできました。だからあなたには制約を与えるわ」


「せ、制約……?」


 愛しげにスロームは俺の頭を撫でている。

 制約。その単語が物騒に聞こえるのはルーアルンデだけだろうか。


「おい待て! それは流石に許容しかねるぞ!」


 血相を変えて、烈火のごとくスロームに寄るライト。

 なんだ?ライトの言葉のニュアンスには、スロームを思いやるものを感じられるが。

 とんでもなくリスクがあることなのだろうか。


「あなただって納得したじゃない。これは遅いか早いかの違いよ。それに私だって、自分のことは自分で出来るようになったのよ?」


「それは……そうだが。けど」


「あなた」


 先程の覇王色の覇気は使わず、どこか懇願にも似た眼差しでライトを見つめるスローム。


「……………………分かった」


 たっぷり数十秒苦虫を噛み潰したような顔をし、ライトが折れた。

 けど、俺は納得していない。放任主義の彼女だが、六年間母親をやってくれたのだ。何かあったら「自分で立ち上がれるしょう?」といいつつ、手助けはしてくれていたのだ。


 最初こそ他人のような、よそよそしさを覚えていたが、もうスロームのことを母親だと認識している。

 そんなスロームが危険なことをするなら、止めるのは俺だ。それが、俺のせいでもあっても。


「そ、その制約というのは何でしょうか」


「痛いことはしないわよ。心配した?可愛いんだから」


 たおやかに笑い、俺の額を小突く。

 こんな時でも、スロームは俺の心配をしてくれている。


「か、からかわないで下さい!違います。僕は母さんのことを心配して」


「ふふ、本当にいい子ね。私にはもったいないぐらいだわ」


 そんなことない。こんな異世界から来た、文字通り異郷人で異色の俺こそ、スロームは勿体無い。


「安心して、お父さんが大袈裟な反応をしただけよ」


 優しい口づけが俺の頬にされた。

 温かい。心が満たされる。

 スロームがここまで心配するなと言っている。ならそれを信用しないのは違う気がする。


「じゃあ始めるわね」


 スロームは薬指から指輪を外し、それを俺の人差し指につけた。

 銀色に光る、天使を形作ったような指輪だ。

 途端に、とんでもなく強い力が俺を押さえつけた。

 否、俺の魔力をだ。まるでさらさらに流れていた血液が、圧迫され固形状態になったような不快感だ。


「あの、これは?」


「これは制約の指輪。これをつけてると魔力が押さえられるの」


 なるほど道理だ。力を制御できなければ、リミッターを付ければ良い。簡潔で実に合理的だ。

 しかし、一つの疑問が残る。


「ちょっと待ってください。母さんはなんでその指輪をつけてたんですか」


「私はね、生まれながらに魔力が高かったの。でも家が貧乏だったから、魔法書なんて買えなくて。パンクしそうになったところで、ライトがこの指輪をくれたの」


 タイヤに空気を入れすぎるとパンクするみたいなものか。

 でもそれだと、スロームの身が危ない。


「ダメですよそんなの。母さんが危なくなるってことですよね」


「ううん、私は村の結界の維持に魔力を消費してるから」


 ちょくちょく家を出て、何をしていたのかと思ったら、村の結界を張っていたらしい。

 でもそれだったらいいかな。


「だが、それも完璧じゃない」


「え?」


「もう、余計なことを。そうね、たまにでいいからルーと一緒に魔法を使いましょうか」


「それで母さんの魔力が発散する出来るなら、いくらでも」


「うんうん。こんなできた子供になるなんて幸せだわ。それじゃあ早速やりましょうか」

 

 スロームは指をパチン、と鳴らし、床に張っていた水を消失させた。水の染み込んだ床もピカピカになっている。

 え、あれ、何て言う魔法?

 俺が起こす奇跡とは比べ物にならないほど、高度なことをするスローム。

 理論の理解すらできない。


「さぁ、特訓特訓。ルーと特訓、ふふ」


 語尾に音符マークが付きそうなほど嬉しそうにしているスローム。

 肩をごつごつした手で軽く叩かれた。


「ルーよ。母さんはあれでも銀級並みの魔術師だ。死なないように気を付けろ」


 ……………………そ、それ早く言ってほしかったなぁ。魔力が膨大と言う時点で気づいとけよと、自分自身にも突っ込みを入れよう。


「それじゃ、行きましょうか。理由がないからルーと特訓できなかったけど、丁度いい建前が出来てよかったわ」


 スロームは太陽すら霞む笑顔で、俺を引きずり、外に出た。


「大変だから結界を張りましょう」


 無詠唱で丁度庭を囲むように、半透明の壁が作られる。


「あ、あの、結界なしで出来ることをやりませんか」


「んふふ、ダメ」


 死刑囚を断罪する無慈悲な一声。

 スロームの回りに大地が震えるほどの力が集まる。


「インフェルノ」

 地獄のかまをひっくり返したような炎が。


「ブリザード」

 絶対零度の冷気が。


「トルネード」

 空気を切り裂き、全てを飲み込む竜巻が。

 俺をギリギリ避けて発動される。


 もはや自然災害だ。動く自然災害がスロームだ。

 なんとも言いがたい衝撃に、意識を手放したいと脳が叫ぶ。これ以上は情報過多でショートすると訴えた。

 体は脳に逆らえない。

 薄れ行く意識の中で、一連の問答が走馬灯のように駆け回った。


「善悪の判断も常識も足りない。そんな状態で力を振るえばどうなると思う?」


「他者にも自身にもよくないと思います」


 ──────全くもってその通りだったな。身に染みて理解できたよ。


注意。

これは作者の悪ノリで書いたものです。メタな発言が多いので、世界観をぶち壊しにされたくない人は、読み飛ばしちゃってください。

また、今後ずっとするかも未定です。















スローム「さて、始まったわ」

ルーアルンデ「何の話ですか、母さん?」

スローム「ここはねぇ、次回予告をするための場らしいの。面白そうでしょ?」

ルーアルンデ「なんか、作者の思い付きとノリでやった企画っぽいな」

スローム「はーい。メタな話はそこまで。あわよくば感想やブックマークを狙っている作者なんて、ぽいってして」

ルーアルンデ「一番メタなこと言わないでよ母さん」

スローム「ふふ、因果応報よ」

ルーアルンデ「もう因果応報なんて言葉はごめんだ」

スローム「なんのこと?」

ルーアルンデ「いや、なんでもない」

スローム「たまにおかしなことを言っちゃう残念な子だけど、良いところの方が一杯あるのよ?」

ルーアルンデ「誰に言ったのか分からないけど、唐突な擁護しなくていいから」

スローム「本当のことなのにね。早めの反抗期かな?」

ルーアルンデ「六歳で反抗期はちょっと早いですね!?」

スローム「いいことじゃない。そういう素直じゃないところも嫌いじゃないよ?」

ルーアルンデ「そ、それはどうも」

スローム「って、ツンデレするのも良いところなのよ」

ルーアルンデ「か、あ、さ、ん?」


スローム「あらら。ルーが怒っちゃったから軽く仕事しちゃうわね」


スローム「次回。幼馴染みっていいものですね」


ルーアルンデ「これ、続いちゃうのか?」


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