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異世界転生伝説~異世界転生でスローライフを希望したら、そこは魔物が溢れる土地でした~  作者: オオモリノサトウ
幼少期編~スローライフと準備期間~
1/14

プロローグ

 

 これは、俺自身の物語だ。


 誰かに指図されたわけでもなく、自分で選び取った唯一の道。

 自分の意思を持たず、他人にすべてを委ねていたこともあった。

 けど、それは地獄だった。自分の身を削ることは当たり前。考えることも出来ず、それが最善だと脳に刷り込まれていた。

 けれど、ある契機を境に、俺の考えは変わることができた。

 もう自分のためだけに生きようと思った。

 スローライフを目指そうと目標を持てた。

 そして今、自分の意思でここにいる。

 もう一度言おう。

 ─────これは、俺自身の物語だ。



 ◇◇◇



 安全地帯から自らの意思で前に進んだ俺達に、筋骨隆々の二足歩行の獣「オーク」が現れた。

 オークは俺達と同数……三匹が隊列を組んでいる。


「いくぞ、お前ら!」


 俺は仲間に発破を掛け、戦闘体勢へと移る。

 剣士風の男が先陣を切る。一匹のオークに向かって剣を振りかざした。

 オークは木の槍で応戦し、つば競り合いになる。

 にらみ会う一人と一匹。

 残されたオークは無粋にも邪魔立てをしようとする。


「おっと、させない」


 俺はイメージを叩きつけるように、魔法を発動させる。男とオークの周囲を土で囲い、二人だけの舞踏場を作り上げた。

 強制退場をさせられたオーク×2は、雄叫びを上げながら俺をにらんだ。


「guoooooo!」


 二匹同時に地面を揺らしながら、俺へと向かってくる。

 俺の取り柄は魔術だけだと思った?

 腰に掛けてあった鞘を撫で、抜剣する。


「やぁああ!」


 全身をバネのように使い、オークへと突撃する。


「geriiee?」とオークは間抜けな声を出したが、さすがはこの過酷な環境で生きてきただけはある。

 即座に俺の攻撃に対応し、剣と槍がぶつかった。

 奇襲に成功すると踏んでいた俺は、舌打ちをひとつ、魔法をもう一匹のオークに発動させた。

 地面が盛り上がり、オークの足へと噛みつく。

 無詠唱魔法だ(・・・・・・)


「gegagsa!」


 苦しそうにオークは自身の足を睨み付ける。ダメージとしてはその程度のことだが、俺の目的は足封じにある。


「gagagagaa?」


 オークも状況を理解したのか、足元に槍をぶつけるが、ガンガンと音が鳴るくらいだ。

 一匹を無力化し満足した俺は、呆然としているオークへと、魔法を使う。

 烈火の玉を数個発動させ、オークの周囲へと回らせる。


「guaaaaaaa!」


 俺は手をグッと握り、同時に烈火の玉を降り注がせた。

 断末魔をあげるオーク。中級魔法を重ね掛けした威力は、肉を焼き付くす。後は骨だけになった。


「さてさて、もう一匹調理しないとな」


 手をパンパンと叩き、足封じされたオークへと向き直り、


「gugooooooo!」


「なっ!」


 オークが俺に向かって槍を振り下ろしていた。

 なぜ動ける。

 そんな俺の疑問は、オークの無くなった足を見て解消する。

 ────足を切りやがった!

 後悔してももう遅い。段々と濃くなっていく死の香りに、俺は目をつぶった。


「…………あ、れ?」


 いつまで経っても痛みは訪れず、目を開ける。と、背中に光の剣が刺さったオークが、地に倒れようとしていた。


「油断しない、死にたいの?」


 我がパーティーメンバーの魔術師兼、参謀役の少女の声だ。

 俺は反省するのは後回しにし、作り上げたドームを解除する。


「こっちは倒したよ」


 血の流れる剣を拭きながら、剣士は手を振った。


「ふぅー」


 辛くも勝利した初陣に、緊張の解けた俺は脱力する。

 しかしまぁ、勝ちは勝ちだ。

 反省すべきことは一杯ある。改善すべき所も、作戦ももっと練らなければならない。

 けれど、あんなに恐れていた魔物を倒したという事実が、達成感として現れた。

 ─────ほんっと、あの頃と比べたら大違いだ。

 俺はもう、昔になってしまったことを思いだした。

 そう、あれは確か、前世で死んだ後の話だ(・・・・・・・・・・)






 

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