第12話
あれから半年が過ぎた。
「う、腕ぇ! 俺の腕はどこだっ!?」
全身にびっしょりと汗をかいて、飛び起きる。
スーパーの従業員用バックヤードの一部に作られた自分専用の寝床で飛び起き、実際に無い腕を
見てさらに驚愕するのはもうこれで何度目だろうか。
そしていま見たのが悪夢だと理解しつつも、徐々に冷静になりながら、腕が無い現実を受け入れるのは
それが何度目になろうとも、なかなか辛かった。
あれからスーパーを拠点におよそ半年間を過ごし、ここの避難民たちとは、もう家族のようなものだ。
だから、朝早くから起こしてしまい心配そうにのぞき込む彼らに、起こしてしまったことを謝り、
もう大丈夫だと伝える。
生き残れただけでもだいぶ幸運だったのだ。
そして片腕になったとはいえ、手当までしてもらって、何か彼らに恩を返せるようなことがないかと
考えるようになっていた。
あれから聞いた話では、店内には、スーパーへとたまに入ってくる獲物を捕らえるべく、
透明化ができる恐ろしいモンスターが巣を作っているのだと教えてもらった。
腕を綺麗に斬り落とすほどの切れ味をもった攻撃方法をもつ何かだ。
物資を漁りに人間の生き残りが店内へと入ってくることがあるが、俺のように助かるケースは
稀だった。
いちおう外に手書きの張り紙などで注意喚起をしているのだが、危険になったこの世の中で、
それを注視する人は少なく、スーパーへと訪れる生き残りも後を絶たなかった。
いちおうバックヤードから店内へ入る扉は施錠してあるし、交代制で見張りが2人ついている。
スーパーには、従業員用の裏口が存在しているので、店内を経由しなくても外には出られる。
そしてそちらにも見張りが2人いる。
最初から片腕であったのなら、まだ感覚も違うのであろうが、あるときから片腕になるというのは、
しかも失ったのが利き腕ともなると、その後の生活は想像を絶するものであった。
当たり前であるが、持って何かをするということがまず出来ない。
持つなら持つだけだし、対象に対して何かをするのなら手を空けておく必要がある。
そんな当たり前に出来たことができなくなったことに対する失敗を、何度も繰り返した。
ただ半年も繰り返したことで、いまではそういうことも少なくなった。
半年前から変わらないのは、腕を失う悪夢を見続けることである。
これも一生続くことなのかもしれないが、いつかは克服出来たらと思っている。
信用できる新しい家族たちになら、私が持つスキルのことを伝えても良いかもしれない。
どうにかして自分の職業やスキルをここでの生活に役に立てられないかと考えるのであった。
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