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疑惑

 道中、どうしても先程の失敗シーンが頭の中でループされてしまう。


ゲームの世界の人間にいきなりミラプリ云々なんて言ってもわかりゃしない。冷静に考えて当たり前である。


まさか自分が、水瀬鏡を見た瞬間に叫んでしまうなんて。実際ことにゃんを目の当たりにしたら、僕は一体どうなってしまうんだろう。


 そういえば、どこにもビックリマーク見えなかったな。デジタル的な感じで表示されると思ったんだけど……。って事は裸眼じゃ確認できないのか。


 あと、ハート残数の確認の仕方もわからない。水瀬鏡イベントをこなしたから、ハートは4つになっているはずだ。いちいち覚えてないといけないなんて面倒くさすぎる。


いずれも何かしら確認方法はあるだろう。けど、今はわからないから全部頭の中で覚えるしかない。しょうがないね。


 ──ところで、さっき気になった事がある。


『えーっと……。ボクの記憶にはいない人だなぁ』


 水瀬鏡は主人公と同じ中学校で、そこまで親しくないが顔は知っている程度、という設定だ。


 なぜ、記憶に無い。


 僕自身は転生してきたから記憶が無くて当たり前だ。


でも、水瀬鏡サイドは中学校で見た事があるテイになっているんだから、記憶くらいあるもんじゃないのか?


それとも、敢えて現実と同じような感覚でリアリティを楽しめってことか?


 ……うーん、よくわからん。なんか雑な転生だなぁ。


 まぁ、考えてもわからないものはわからないのだ。


 一度、本当に冷静になろう。


 僕はいま、ミラクルプリンセスを『プレイ』している。


 つまり、この先はゲームと同じ選択肢の会話をすればいいのだ。



 ……ん?ゲームと同じ選択肢?


 

 水瀬鏡との出逢いイベントは教室だ。初めて同じクラスになった話をするから、間違いない。


 路上で、しかもモブの女の子と話している所へ声を掛けるイベントというのは、ゲーム内に存在しない。


 クリア後限定のスペシャルイラストや、ファンクラブ限定ダウンロード用イラストでさえ、そんなシーンが描かれた事は1度もない。



 という事は。



 この世界は、現実世界と同じ時間の流れで進行している……?



 こうなると、各授業の休憩時間に友好度を上昇させる会話をコツコツこなしていけば、1ヶ月もあれば好感度はMAXに近い状態になってしまう。


 時間軸を無視して、半年後に起こるはずの友好度イベントを先取りして進める事も可能なはずだ。


 ことにゃんのベストエンディングに必要なキーアイテムをいきなり渡す事だって不可能ではない。


 メインヒロイン全員同時攻略もできる。少なくとも僕なら可能だ。


 しかし慌てる事なかれ。これらは全て仮説である。


それに、忘れてはならない重要なルールがある。



 行動制限。



 こいつが関わってくるか否か。

 

 そうだ。今はまだ慎重になるべきなのだ。


 まずは、ことにゃんに会わねばなのだ。


 ……と、思った辺りで僕は交差点の角を左に曲がった。そのまま公園沿いに進むと、大きな歩道橋が見えてきた。


次に見える横断歩道を渡ってから歩道橋を登って反対側へ降り、脇道を少し進んで右手の通学路を行けば高校へ到着する。


しかし、ことにゃんと会う為には横断歩道は渡らずに、そのまま公園沿いに左の道へ進まなければならない。


僕の美人ママは『もうこんな時間』と言っていたが、まだ30分以上は時間に余裕がある。


 やっぱり今日は天然美人ママの家に帰ろうかなぁ、と思った次の瞬間。



「え……?」



 横断歩道直前、信じられない光景が飛び込んできた。



 向かい側には歩道橋へ向かう、憧れのことにゃん。



「な、なんで……」



 その横には。



「西園寺輝樹が……!?」



 ミラクルプリンセス、真の主人公。


 西園寺輝樹。


 存在しないはずの西園寺輝樹が、ことにゃんの横にいる。



 僕が主人公なのに、なぜ……。



 ……いや、ちょっと待て。


 

 僕が、いつ、どこで、誰に、主人公だと言われた?



 掲示板の書き込みには、ゲームの世界に『連れて行く』としか書かれていなかった。


 書かれていなかったけども、まさか。


 いや、そんなはずない。でも……。



 現実世界と同じ部屋。


 全く違う場所にある自分の家。


 僕を認識していない水瀬鏡。


 見る事ができないビックリマーク。


 確認できないハート残数。


 現実世界と同じ時間の流れ。


 そして目の前には、西園寺輝樹と仲良く歩く天音琴葉。



 考えたくもないことだけど、もしかして……。



 僕は、この世界の、モブキャラなのか……?



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