表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/141

目覚め

 目を覚ますと、僕はベッドの上にいた。


 部屋の様子はいつもと変わらない。間違いなく自分の部屋だ。


 確か、匿名掲示板を見ている最中にゲームの世界に連れて行くとか言われたような……。


 まぁ、普通に考えてあれは夢だったのだろう。


 あるいは、ショックで幻覚が見えてしまったのかもしれない。


 ちょっぴり残念だなぁと思いつつ、いつものようにカーテンを開ける。


 「え……?」


 我が目を疑った。


 目の前が、とてつもなく大きな公園になっている。


 球場のようなバックネットが右奥の方に見えて、その手前にコインパーキングが存在している。


反対側を見ると、綺麗に舗装された広い道が奥まで続いていて、隣接するように原っぱのような美しく広いスペースが確保されている。


 窓から顔を出して左右を見渡すと、いつもの道が自転車専用レーンのある二車線道路になっていて、車がひっきりなしに往来していた。


右隣にファミレスがあり、左隣にコンビニがある。めっちゃ生活便利。とか言ってる場合じゃない。


 

 これ、ミラプリの配置と、全く同じだ。



この周辺は公園・コンビニ・ファミレスにイベントが設定されているが、本来ここに主人公の家は無い。


 そうなるとやはり、これは夢か幻だ。


 でないと説明がつかない。


バタバタと階段を降りて洗面所へ向かう。蛇口を思いっきりひねって何回も顔に水をぶっかけた。


 パッと顔を上げて鏡を見る。


 いつもの僕がそこにいる。


 目はパッチリしているが唇がふっくらしているせいで女々しく見え、異性から一度もカッコいいと言われた事がない、僕そのもの。


『かわいい』とよく言われるが、女性の使う『かわいい』は褒めどころが無い時に使うフレーズだ、と個人的には思っている。


少なくとも、これまで告白されたこともしたこともない程に女性とは縁が無い。ミラプリ以外では。


 話がだいぶ逸れてしまったが、とにかく。


冷たいと言う感覚があるから、夢ではないと思う。ということは、単純に寝ぼけて幻覚を見てしまったのだ。


 一旦、深呼吸。……よし、リビングへ行こう。


 「おはよー……」


呼吸が止まりそうになった。



 「おはよう、幸ちゃん」



 アンタ、誰?


 僕の母さんは、こんなにスラっとしていない。



 「幸太郎、おはよう」



 なんだこの爽やかイケメン父さん。


 優雅にテーブルでコーヒー飲んでやがる。


 なんで髪がふさふさになってるんだ。


 というか、コタツはどこにいった。


「幸ちゃん、顔が濡れてるわよ?ママが拭いてあげる」


 そう言うと、超絶美人な母さんがタオルで顔を優しく拭ってくれた。おんぎゃあ。


「あら、顔が赤いわよ?大変、熱でもあるのかしら」


 超絶ハイパー美人お姉様がおでこを僕のおでこにくっ付けてくる。ほんぎゃあ。


「うーん、大丈夫……かな?」


「ハハッ、きっと幸太郎は今日が登校初日で緊張してるんだよ。

 

 ほら、ママが作ったトーストとサラダでも食べて落ち着いて」


 朝は米じゃないと元気でないって文句垂れてた父さんはどこだ。


 ていうか、登校初日って、本当にミラプリと一緒じゃないか。


 突っ込みが多すぎて追いつかない。仮にミラプリの世界だったとしても、こんなキャラいなかったぞ。


 「さ、先に着替えてくるよ……」


僕はこの状況から逃げるように、一旦自室へ避難する。


 ──落ち着け。まずは、落ち着け。


 仮にここがミラプリの世界だったとして。


右隣にあるファミレスは『CACA'S』で、


左隣にあるコンビニは『FunnyMart』になっているはずだ。


あまりの衝撃でうろ覚えになっているので、改めて看板をチェックする必要がある。


 窓を開け、ファミレスとコンビニの文字をそれぞれ、自分の目でいま一度しっかりと確認する。


 ……うん、間違いなくカカスとファニーマートだ。


 窓を閉め、改めて部屋をじっくりと移動しながら観察を行う。


 机の上に置かれた、友好度の確認とセーブをする為に必要な黒い日記。


 平凡なカレンダーに付いた赤丸。日付は登校初日である本日、4月4日の月曜日、幸せの日。


 学生用のカバンの中には教科書以外は特に何も見当たらない。

 

 最後に確信を得るために、本棚と壁の隙間をチェックしに向かう。



 ……あるじゃん、500円。



 隠し要素レベルではないが、初日限定ボーナスである。



 間違いない。


 ここはミラクルプリンセスの世界だ。


 約束通りこの世界で、主人公になることができた。



 しかし、奇妙なことに決められた装飾品以外は全て現実世界の自分の部屋だ。


 普通こういうのって、目が覚めたら部屋が全部ミラプリ仕様になっているもんじゃないのか。


 疑問は残るが、頭をミラプリに切り替えるしかあるまい。


 先程手に入れた500円を財布の中にしまい、学生服のブレザーに着替えてリビングへいそいそと戻る。


「あら、幸ちゃんすっかりお兄さんになったわね。とってもカッコいいわよ♡」


 やべぇ、母さん攻略してぇ。


「いいじゃないか。清潔で優しそうなお兄さん、って感じで。パパに似たのかな?」


「パパ、そんなこと言ったら幸ちゃんモテモテになっちゃう。ママ心配しちゃうわ」


 ママ、もっと嫉妬して下さい。


「あら、もうこんな時間!朝ごはんのパンどうする?咥えて学校行く?」


 なんでマンガみたいな展開にしようとしてるの。ママ天然。


「かわいい」


 あっ。


「あら?それはママに言ってくれたのかしら?」


「いや、ちち、ちが、えっ、えーっと、あう」


「かわいーなー、もう♡」


 僕の右頬をつつくママ。もう無理。


「いあ、行て、行てて、行って、きましゅ」


「うふふ、いってらっしゃい♡」


 ……っはぁー、なにこれ?なんなんこれ?


 つーかさ、マジでなんで母ちゃんと父ちゃん美女とイケメンになってんの?


 ゲームだから?ゲームの世界はブサイク禁止ってルールでもあんの?


 ていうか、あの二人から産まれてたらぶっちゃけ、僕もっとイケメンになってると思うんですけど。



 ……とりあえず、落ち着こう。



 本当にこの世界に、ことにゃんは実在しているのだろうか。


 めちゃくちゃドキドキするけど、スキップして跳び回りたいくらいワクワクだ。


2019/11/27

訂正

うる覚え → うろ覚え


ご報告誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ