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 地響きが鳴り響いた。

 グラグラと大地が震えている。

「え? 地震?」

 その大きな揺れに山城はよろけた。そして、膝をつきながら思わず傍に立つミラノの腕を掴んだ。一瞬、ミラノは不意をつかれたように山城を睨んだが、それでも仕方無さそうに彼の身体を支えてあげている。

「なんだ?」

 ただの地震ではないことに、すぐに響は気づいた。

 少し離れてはいるが、巨大な妖気がゆっくりと動いているのを感じる。

(これは妖かしの気だ)

 ミラノはその気にまだ気づいていないようだ。

「どうしたの?」

 今は説明している時間がない……というより、説明したくない。説明すれば、きっとミラノは一緒に行くと言うに決まっているからだ。

「ミラノさんはここに居て」

 そう言って響はその場を離れて走り出した。

「え? ちょっとーー」

 ミラノもすぐに追いかけようとするが、山城がその腕を掴んでいるため身動きが取れない。

響はミラノたちをその場に残し、その気を追って林の奥へ向かって走っていった。

 かつては人が住んでいた村だったのだろうが、今では荒れ放題で草木によって建物なども覆い隠されている。

 ふと響は足を止めた。

 荒れ地の奥に鳥居らしきものが見えている。社などは一切見当たらないが、ここには神社でもあったのかもしれない。

 さっきまでこの辺りであの気が動いていたはずだ。

 すでに気は消えている。

 遠くへ離れていったようには思えない。何かが動いたような形跡もない。

(土の中か)

 そっと地面に手をついて探ってみる。確かに地中を動いたような感覚が伝わってくる。だが、妖気は感じられても、その位置を特定するのは難しいようだ。

 仕方なく、響は元の場所へと戻っていった。

 だが、さっきの場所まで戻るよりも早く山城の姿を見つけることが出来た。少し離れた崖下に町の男たちが倒れていて、山城はそれを助け起こしている。

 ケガはしているようだが、皆、命には問題がなさそうだ。

 そこにミラノの姿は見えない。

「何があったんですか?」

 響は山城のところへと駆け寄って声をかけた。

「あなたを追いかけて道を進んで来たら、皆を見つけたんです」

「ミラノさんは?」

「彼女なら、助けを呼びに行くといって町に戻っていきました」

 確かにその判断に間違いはないだろう。彼女の足ならば、町までの往復など簡単なことで、この人たちを介抱するよりもずっと気楽だろう。

 予想した通り、ミラノはすぐに戻ってきた。

「すぐに助けがくるわ」

 驚く山城にそう伝えてから、彼女は響へ近づいてきた。「それで? 何かわかったの?」

 少し不機嫌そうにミラノは言った。やはりさっき響が一人で妖かしの気配を追いかけていったのが気にいらなかったようだ。

「いや、逃げられたよ」

「ダメね」

 その目は明らかに『ざまあみろ』という心の声を反映していた。「じゃ、諦めて帰りましょ」

「そういうわけにはいかないだろ」

「どうして?」

 こういうことを本気で訊くところがミラノらしい。

「一条家と関わりがあるボクが妖かしがらみのことを放って帰ることは出来ないだろ」

「そお? 人それぞれじゃない? 伽音さんなら面白がるわね」

 確かにそれもそうかもしれない。

 その後、町から新たに助けに来た人たちによって、ケガをした人たちは運ばれて行った。

 ケガをした男たちは口々に言った。

「化物にヤラれた」

 やはり、あの廃村に何かが存在しているのは間違いないようだ。

「どうするつもり?」

 ミラノは試すように響に訊いた。


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