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先生は初めて人に会いました。

「・・・どうしよう。」


 俺はこの状況を見てかなり焦っていた。

 考えても見ろ、森の中で持っている物はポケットに入れていた財布と携帯のみ、周りには4匹の血だらけの狼の死体があるこの状況を。

 日本ならともかく異世界の森の中で血の匂いが辺りに充満してるのは多分非常にまずいと思う。だってさっきから色んな獣の鳴き声が聞こえて来るんだもの。


ガサガサッ


 突然聞こえて来る物音に咄嗟に身構える。

 俺が音のする方を凝視していると、物音のする草むらが揺れて何かが近づいて来るのを感じた。


ガサッガサガサッ


「あんた、そこで何をしてるんだ?」


 俺に話しかけて来たのは冒険者風の格好をした30代くらいの男だった。

 まさか、会ってすぐの男に異世界から転移して来ましたなんて言える筈も無く嘘でその場を切り抜ける事にした。


「そこに倒れている狼に追いかけられているうちに森の中に迷い込んでしまったんだ。近くの村か何かまでの道を教えてくれると助かる。」


 俺はついでに近くの村までの道を聞くことにした。


「それなら村まで連れてってやるけど、このフォレスト・ファングを倒したのはお前か?」


 フォレスト・ファング?

 この狼の名前か?狼の名前を聞いたと共に異世界に来たことを尚更実感した。


「ああ、そのフォレスト・ファング?ってのを倒したのは俺だ。何か不味かったか?」


「いや、お前が倒したならそれで良い。解体はしないのか?」


 解体?

 まさか、今まで魚しかさばいた事しか無い俺が初めて見た狼を解体なんか出来るわけが無い。


「解体はした事が無くてな。そのままにして置くのもやばそうだから地面を掘って埋めようと思っていたんだ。」


「良ければ俺に売ってくれないか?1匹あたり銀板3枚でどうだ?」


 銀板3枚・・・高いのか安いのか全くわからんな。


「売ってもいいけど銀板って何か教えてくれ。あと種類とお前の名前も。」


「銀板を知らない?全ての国で使われている共通の通貨だぞ。お前どうしたんだ?記憶喪失なのか?」


 記憶喪失とか演技が必要な設定はめんどうだな。

 すごい田舎から来たことにしておくか。


「記憶喪失とかでは無い。俺の住んでいた所は通貨より物々交換が主流だったんだ。」


「今時、物々交換なんてとんでもない田舎から来たんだな。まぁいいや、教えてやるよ。まずは名前だな、俺の名前はカイル・エヴァンだ。通貨については・・・」


 カイルから聞いたところ

銅貨・・・約10円くらい。

銅板・・・約100円くらい。

銀貨・・・約1000円くらい。

銀板・・・約1万円くらい。

金貨・・・約10万円くらい。

金板・・・約100万円くらい。

白金貨・・・約1000万円くらい。


 1頭あたり銀板3枚って事は日本円で約3万円くらいになるのか。結構な額なんだな。あと、名前の後に苗字がくるみたいだ。


「教えてくれてありがとう。因みに俺の名前はトオル・カタセだよろしく。」


「トオルか、よろしく頼む。」


 俺は村に着くまでカイルに案内をしてもらうことになった。

 フォレスト・ファングはカイルがその場で解体して肉、皮、牙に分けられてカイルの持っていた魔道具のアイテム袋に入れて持ち運ぶことになった。

 アイテム袋はそこそこの大きさまでの物だったら最大30個まで入る便利な魔道具だ。


「それにしてもフォレスト・ファングを4匹も倒すなんてトオルはかなり強いんだな。フォレスト・ファング単体でランクDくらいだから4匹同時ならランクCと同等くらいの魔物なんだけどな。」


「ランクDって高いのか?そこら辺も教えてくれ。」


 俺は今のうちにカイルからこの世界の情報を集めておこうと思った。


「それも知らないのか!?最初から説明するぞランクってのは・・・」


 カイルが言うにはランクはギルドが設定した魔物や依頼の難易度を示す値で、冒険者はランクを見て難易度を確認するらしい。


ランクごとの依頼難易度は

ランクF・・・初心者用の簡単な依頼、子供の小遣い稼ぎでもよく利用される。

ランクE・・・初心者が冒険者になったと周りから認識される難易度。

ランクD・・・冒険者が一人前となる目安のランク、大体の冒険者はこのランクで止まる。

ランクC・・・ギルドが試験を行って合格した者のみランクDからCに上がれる、狭き門。

ランクB・・・ランクCがかなりの実績を伴う事でなれるランク。

ランクA・・・圧倒的強さを誇る冒険者のランク。現在、国ごとに両手で数えるほどしか居ない。

ランクS・・・国の英雄が国王から直々に与えられるランク。世界に4人しか居ない。


「カイルのランクは何なんだ?」


 ふと気になったので聞いてみることにした。


「俺のランクはCだぜ。この間、ランクDから昇格したばっかりだけどな。」


 カイルは照れくさそうにそう言った。


「ってことはカイルってかなり強いんだな。」


「そんな事ねぇよ。俺から言わせればランクのことも知らない奴がランクC相当のフォレスト・ファング達を倒しているお前はよっぽどおかしい奴だな。」


 俺とカイルは様々な話をしながら村へ向かった。



よく見たら誤字があったので直しました。あと、通貨の種類を増やしました。

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