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先生は服でこんなにお金を使ったのは初めてです。

 あれから何度も口論が起こり、俺はただ呆然と時間が過ぎるのを待っていた。

 口論を止めようとしなかったのかって?止めようとしたけど、無理だった。


「トオルはわ・た・しとデートしてる最中なの!邪魔しないで貰えるかしら!」


「あら、トオルさんが私にお礼がしたいと言うので買い物に付き合って貰ってるだけですよ。トレイリさんには全く関係無い事ですよ。」


 また口論が始まり、約1時間程たった頃。


「ターニャちゃんはこんな感じの服が似合いそうですよね。」


「やだ、トレイリちゃんだってこんな服が似合うと思うわよ。」


 どうした訳か、意気投合してお互いに服を選びあうまでになっていた。


「ふっ二人って喧嘩してたんじゃないの?」


 俺がそう聞くと、二人は同時に答えた。


「「一時休戦。」」


 休戦してからが凄かった。

 お互いに服を選んでは毎回、俺にどっちが良い?と聞いて来るのでどっちも似合うけどどちらかと言うとこっちと何となく良さそうな方を選び続けてやっと最後の服を選び終えた。


「ふぅ、やっと選び終えたわ。」


「かなりの数に成りましたね。」


 カウンターに服を持って行って合計金額が出るのを待っていたが、金額がどんどん膨れ上がり、結局合計金額は金貨29枚・・・日本円で約290万円ほどに成った。


「トレイリ、買いすぎ。」


「テヘッ。」


 可愛い仕草で誤魔化そうとしているが、流石にこの金額はドン引きせざるおえない。

 まさか、相当余裕を持たせて下ろして来た金のほぼ全てを服の代金で使ってしまうとはとても思えなかった。


「あっ、これはターニャちゃんに。」


「え?どうして?」


「だって、私ばっかり買って貰って不公平だと思ったのとせっかく仲良くなったんだからと思って・・・。」


 トレイリは少し俯きながらターニャさんに服を差し出した。


「ありがとう、トレイリちゃん大切にするね。」


 こうして、ティンクルシープでの激戦は幕を閉じた。

 

「じゃあ、二人ともまたね。トレイリちゃんはトオルに変な事したらダメだよ。」


「しないわよ、そんな事。」


 店を出た所でターニャさんと別れ、俺とトレイリの二人っきりの王都デートを再開した。


「次は何処に行く?ってもうこんな時間・・・。」


 俺は魔道具専門の店とかに行ってみたかったが、思いのほかというかティンクルシープで時間を取られ過ぎた為、もうハジス村に帰る事にした。


「そろそろ、ハジス村方面行きの馬車が来るわ。」


「また、来ようか。今度は服屋以外を見に。」


「えぇ、そうね。楽しみにしてるわ。」


 そして、俺達は馬車が来たので乗り込み、ハジス村へ帰った。

 次も来る約束をして・・・。



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