先生はゴブリン殲滅の後始末をします。
目を覚まして早々に準備をしてカイルと一階で落ち合った俺は、ゴブリンの住処がある森へ向かった。
「なぁ、トオル。本当にゴブリンは全滅しているのか?」
カイルの言うとおり、全滅しているかは正直俺にも良くは分からない。
でも、人型の魔物って事は生きるうえで呼吸をしているはず、呼吸をしているって事は肺に酸素を取り込まないといけないので密閉された洞窟の中で火を焚くと酸素が消費されて呼吸が出来なくなるはずだ。
まぁ、最低でも一酸化中毒とかで弱っていれば止めを刺しやすくなって助かるとも思っているからな。どちらにしても俺からしたらプラスだから気が楽だ。
「多分、大丈夫だろ。」
少し、不安そうにしているカイルに気休めでも、不安を取り除けるように少しだけ嘘をついた・・・。
そんなこんなで実際にゴブリンの住処に着くと変な臭いが辺りに立ち込めていた。
「何か臭うな。」
「あぁ、何とも表現しにくい、度し難い臭いだな。」
多分、臭いの元は洞窟なのだろうが一応確認の為にクリエイトマッドで作った壁を解除した。
・・・やはり、臭いの原因はこの洞窟だったらしい。
壁を取り除いたとたん更に臭いがひどくなった。
俺達は意を決して洞窟の中へと入って行った。
流石に一日も経つと火も消えて温度も落ち着いては居るが、外の気温より体感で5度ほどは高い温度になっているのが分かる。
洞窟の中を探索しているとゴブリンがうつ伏せで倒れているのを見つけた。
「おい、ゴブリンを見つけたぞ。本当に死んでるんだよな?」
「あぁ、ひっくり返してみろ。」
俺がそう言うとカイルが剣で器用にうつ伏せで倒れているゴブリンをひっくり返した。
ゴブリンは自らの喉を掻き毟り、苦痛の表情をしながら死んでいた。
「うわっ・・・本当に死んでいる。よっぽど苦しかったんだな。」
カイルは解体用のナイフを取り出し、討伐確認部位であるツノを切り取った。
余談だが、ボブゴブリンもゴブリンと同じくツノが討伐確認部位だが、普通のゴブリンと違って緑色では無く焦げ茶色をしていて、サイズが1,5倍ほどの大きさになっているのが特徴なのでギルドでも間違える事も無くゴブリンとボブゴブリンを区別出来るのである。
「この先にも大量のゴブリンの死体が有るんだ・・・心して行くぞ。」
「あぁ、でもアイテム袋に入るツノの量は限界が有るぞ。どうするんだ?」
確かに、ゴブリンの住処にあるゴブリンの死体の数は60体であるはずが無いからなカイルが心配するのもよく分かる。
しかし、成長を遂げた俺の転移の力はこの洞窟の入り口の近くと村にある俺達の借家を一瞬で行き来出来る様になっているのだ。
「全く問題ない。俺に任せておけ。」
「おっおう。頼んだぜ?」
カイルは首を傾げながらも了承してくれた。
やはり、奥に進むにつれゴブリンの死体の数が増えているのを感じた。
時々、辛うじて生きているゴブリンも居たがほとんど動けない状態なので難なく止めを刺して行きながら最深部の俺達がゴブリンエンペラーと戦った場所を目指した。
「なぁ、カイル・・・おかしくないか?」
俺達は無事に最深部の扉まで辿り着いたが、俺は此処に来ておかしい事に気が付いた。
「何がだ?」
「何で、逃げる時に扉の向こうに居たゴブリンが全く居なくなっているんだ?」
「今まで回収してきたのがそうだったんじゃ無いのか?」
いや、あの時足音は300は下らないほどは在ったと思ったが、今まで回収してきたツノの数は200ちょっと程度だった・・・残りは何処に消えたんだ?
「もしかして・・・この扉の向こうか?」
俺とカイルは協力して扉を開いて行った・・・




