先生はトレイリを手伝う事にしました。
「トレイリは何で森に居たんだ?」
「何でって依頼の為に決まってるでしょ?」
確かに、依頼以外の用事で森の中に来るのは薬草や木の実を取りに来る子供くらいだ。
「その依頼って?」
「フォレスト・ファング3匹の討伐よ。」
フォレスト・ファングは俺にとって印象深い魔物だったなぁ・・・
「何匹倒したんだ?」
俺がトレイリに質問すると俯いてか細い声で答えてくれた。
「・・・匹よ。」
「ん?何だって?」
あのフォレスト・ファングだけなのか・・・と分かっていながらも聞き返してしまう。
「・・・匹よ。」
「ごめん、もう一回言ってくれ。」
「一匹よ!あの時の一匹だけよ!悪い?」
からかい過ぎたのかトレイリは逆ギレしながら言ってきた。
「まぁまぁ、落ち着け。お前どうするんだ?3匹なんて。1匹でもギリギリじゃないか、しかも討伐部位を取ってないからあの時の1匹もカウントされないだろう。」
フォレスト・ファングの討伐部位は牙だ。
「どうしよう・・・」
彼女は頭を抱えた。
俺はアイテム袋の空きを確認するとトレイリに言った。
「なら、俺が手伝おうか?フォレスト・ファングなら倒したことあるし。」
トレイリは俺を見ながら少し考えたような間を空けて言った。
「・・・良いの?」
「もちろん。」
もし、俺がトレイリをゴブリンが連れ去る瞬間に助けていればフォレスト・ファング1匹分は手に入っていたという罪悪感も少しあったので丁度良かったと思った。
「じゃあ、よろしくお願いするわ。」
って事で俺はトレイリとフォレスト・ファング狩りをする事になった。
「トオルって魔法使いでしょ?」
唐突に魔法使いだと断言されてしまった。
「確かにそうだが何で分かったんだ?」
「だって装備が前衛って感じしないし、何か魔法使いっぽいから。」
何か、っぽいって理由で断定されると少しカチンと来るのは俺だけだろうか?っとそんなやり取りをしていたらフォレスト・ファングが4匹で巨大な鹿を狩っている所を見つけた。
「フォレスト・ファングが狩っているのって何だ?すごいでかい鹿だけど。」
「あーえっと何だっけ?確かタイラント・ディアスって名前だったと思うわ。ランクはDだったかしら。」
見事な連携でタイラント・ディアスを狩っているフォレスト・ファング。
もしかしたら俺も狩られていたかも知れないと思ったらゾクリとした。
フォレスト・ファング達が横たわったタイラント・ディアスの大きな巨体を食べている隙に仕掛けることにした。
「俺が仕掛けるからまず、見ててくれ。」
「ええ、でも結構距離があるけど大丈夫?」
「大丈夫、行くぞ。転移」
俺は自信満々に言って足元に落ちている木の枝や石をフォレスト・ファング達の体内に転移させた。
1匹、また1匹と次々にフォレスト・ファングが倒れこんでいった。
その様子にトレイリは目を見開いている。
「何で!どうして!」
トレイリは最後のフォレスト・ファングが倒れるのを見るとすごい勢いで聞いてきた。
「俺は転移魔法を使えるんだ。」
俺がそう言うとトレイリは首を傾げた。
「テンイ魔法って?」
トレイリの質問を聞いて俺はやっちまったと思った。
この世界で転移魔法が認知されていれば大丈夫と思っていたがトレイリが転移魔法を知らないって事は転移魔法を使えるのは俺だけかもしくは国で極秘にしているかも知れないからだ。
「転移魔法については何も言えないんだ・・・聞かなかった事にしてくれ。」
俺がそう頼むとトレイリは「はぁ」とため息をついた後、「分かったわ」と言ってくれた。
「とっ取り合えずフォレスト・ファングの解体をしに行こう。」
「そうね、血の匂いで他の獣が寄ってくるかも知れないし。」
俺とトレイリはフォレスト・ファングの元へ走って向かった。




