カイル視点~カイルは変な奴に出会った2~
俺はフォレスト・ファングを肉、皮、牙にそれぞれ解体してアイテム袋に詰め込んでいった。
「それにしてもフォレスト・ファングを4匹も倒すなんてトオルはかなり強いんだな。フォレスト・ファング単体でランクDくらいだから4匹同時ならランクCと同等くらいの魔物なんだけどな。」
トオルの見た目は俺のように前衛で戦うような体型では無く、弓などの武器を持っていた訳では無いのできっと後衛型の魔法使いなのだろうが全く手口が思い当たらない。
エルニクスで魔法の属性は火、水、土、風の4属性が基本属性と呼ばれていて、それぞれに属性の相性がある。
<属性の相性>
火・・・水に弱く、風に強い
水・・・土に弱く、火に強い
土・・・風に弱く、水に強い
風・・・火に弱く、土に強い
このように魔法には相性というのが存在しているが、絶対では無い。
実際、冒険者の中ではこの属性の相性が通用するのはせいぜいランクCまでであり、ランクBからは相性がほぼ関係無くなってしまう。
例えば〔紅蓮の魔導師〕の二つ名を持つランクAで王都のギルドマスターが昔にフロッグ・ドラゴンと言う水を操ってドラゴンの形をした水流の中で生きるランクAのカエルの魔物を青い炎で一瞬の内に塵にしたと言う逸話があるくらいだ。
まぁ、魔法に関しては専門外なのでトオルがどんな魔法を使ったのか全く知らないが、ハジス村で宿屋をしている元ランクBの魔法使いで〔鍵の狙撃者〕と呼ばれていたグラーフさんに聞けば何か分かるかも知れないと思っていた。
「ランクDって高いのか?そこら辺も教えてくれ。」
トオルが言ったことに驚いた。
通貨はともかく魔物のランクすら知らないのは世界中で生まれたばかりの子供かトオルくらいだと思った。
何故なら差はあっても魔物のランクはギルドに討伐の依頼を出すときの必須事項なのでいくら田舎だからと言っても村長や大人から子供の時からしっかり教わるはずだからだ。
「それも知らないのか!?最初から説明するぞランクってのは・・・」
俺はトオルに最初からランクについて教えた。
ついでに冒険者のランクについても教えてやったところ、トオルが俺に質問をしてきた。
「カイルのランクは何なんだ?」
俺はついこの間ランクDからランクCに上がる試験を突破してランクCになったばかりなので少々自慢げに教えた。
「俺のランクはCだぜ。この間、ランクDから昇格したばっかりだけどな。」
俺がそう言うとトオルは苦笑いをしながら言ってきた。
「ってことはカイルってかなり強いんだな。」
こいつは俺が弱そうに見えたらしい。
「そんな事ねぇよ。俺から言わせればランクのことも知らない奴がランクC相当のフォレスト・ファング達を倒しているお前はよっぽどおかしい奴だな。」
心の中で小さく拳を握り締めながらもカイルから聞かれることに答えて言った。
案の定トオルはエルニクスの各国についても知らなかった。
「なぁ、マクリ王国ってハジスから遠いのか?」
各国について教えるとトオルが聞いてきた。
ハジス村からマクリ王国までは距離があるのでそれも丁寧に教えてやった。
「マクリに行きたいのか?ハジスからだと馬車で1ヶ月は掛かると思うぞ。フェルメ大森林を抜けるのが一番早いが、フェルメ大森林はエルフの案内が無いと絶対に抜けられないし、エルフは気難しいのが多いからな。安全確実に行くならジャミル大国とディスト公国を抜けるのが一番だな。」
何故、マクリに行きたいかは知らないが事情があるのだろうと納得することにした。
「魔族って大丈夫なのか?殺されたりしないか?」
トオルがいきなり変なことを口走った。
「殺される?魔族はそんな野蛮な種族じゃねぇよ。むしろかなり温厚な種族だ。」
魔族ほど温厚でヤバイのは中々居ない。
エルフ並みに魔法が使え、獣人並みの身体能力を持っているがそれを発揮することがほぼ無いと言われている。
実際、戦争が起きても魔族は普段どおりだ、何故なら魔族の戦争介入禁止は国どうしのルールになっている。それくらい本気の魔族はヤバイって事だ。
「魔族ってこの世界を手に入れようとか思わないんだな。」
俺も魔族を知った時は同じ事を思ったので、昔に出会った魔族に聞いた話をしてやった。
「はるか昔に魔王が世界統一を果たしたらしいが、あまりの仕事量の多さに嫌気がさして各種族ごとに国を4つに分けてそれぞれに国を作ったらしい。まぁ人間同士が争ってさらに国が1つ増えたんだけどな。」
そんな風にトオルからの質問に答えているとハジス村が見えて来た。
「おっそろそろハジス村に着くぞ。ようこそハジス村へ歓迎するぜトオル。」
トオルは変な奴だが悪い奴では無いので村を案内してやろうと思った。




