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カイル視点~カイルは変な奴に出会った1~

 俺は今、森の中を歩いている。

 理由はフォレスト・ファングを討伐するって依頼の為だ。

 何でも、最近ここら辺でフォレスト・ファングが4匹ほど見かけたらしい。

 この辺はハジス村の子供達が小遣い稼ぎに木の実や薬草を取りに来るからもし、フォレスト・ファングが出たら大変だという事でハジス村の村長がギルドに依頼を出したんだ。

 その時、丁度Cランク冒険者の俺ことカイル・エヴァンがその依頼を受けた訳だ。

 というかその場に居たCランク以上の冒険者が俺しか居なかっただけだけど。

 まぁ、まず討伐の為には見つけないと話にならないからな。

 いったい何処にいるのか全くわかんねぇな。


バキバキッ


 変な音がした。

 例えるなら木に雷が落ちた時のような音だ。

 俺は音のした方に慎重に足を進めた。


バキバキッドッーン


 更に大きな音がする。

 音がした所の近くに行く途中でフォレスト・ファングが草陰から見えた。

 どうやら俺の獲物であるフォレスト・ファングも音を聞いて近づいてきたらしい。

 俺はフォレスト・ファングの様子を見ているとフォレスト・ファングが突然走り出した。

 俺も折角見つけた獲物を見失わないように追いかけた。


「何だあれ・・・」


 俺は思わずつぶやいた。

 木の真ん中に木が生えていて、根っこの付いた木が横に倒れていたり、木の真ん中か二つに折れていたり、男の周りでフォレスト・ウルフが体中から血を流して倒れていたり不思議な光景が広がっていたからだ。


「・・・どうしよう。」


 男がそうつぶやいた、どうしようだと?

 木はともかくフォレスト・ファングは解体してギルドに持っていけば良いじゃねぇか。

 フォレスト・ファングは首と胴体が繋がっていない状態でギルドの買取が銀板3枚だ。

 しかし、男の周りのフォレスト・ファングは首と胴体が繋がっているので買取価格が上がり銀板4枚になる。

 何故ならただの毛皮より頭付きの毛皮の方が貴族達の好みだそうだ。


「あんた、そこで何をしてるんだ?」


 俺は思い切って男に声を掛けた。


「そこに倒れている狼に追いかけられているうちに森の中に迷い込んでしまったんだ。近くの村か何かまでの道を教えてくれると助かる。」


 追いかけられる?それは嘘だとわかった。

 音を聞いて集まって来た事を知っているからだ。

 変な格好をしていて、平気で嘘を付くのは何かを隠したがっているからだろうと予測が出来るので深くは追及しなかった。

 誰でも人に言いたくないことなんて1つや2つは在るからな。

 村への案内はともかく、それよりも確認したいことがあった。


「それなら村まで連れてってやるけど、このフォレスト・ファングを倒したのはお前か?」


 どうしても気になったので聞いてみた。


「ああ、そのフォレスト・ファング?ってのを倒したのは俺だ。何か不味かったか?」


 不味いと言えば不味い。

 フォレスト・ファングの討伐部位である牙が無いと俺は依頼の報酬を受け取れないからだ。


「いや、お前が倒したならそれで良い。解体はしないのか?」


「解体はした事が無くてな。そのままにして置くのもやばそうだから地面を掘って埋めようと思っていたんだ。」


 男はとんでもない事を口にした。

 地面に埋めるなんて勿体無い。

 俺はどうにかフォレスト・ファングを譲って貰えないか交渉することにした。


「良ければ俺に売ってくれないか?1匹あたり銀板3枚でどうだ?」


 交渉の基本は最初に最低ラインの価格を提示する所から始まるってのが俺の持論だ。

 だが、男の答えは予想の斜め上を行くことになる。



「売ってもいいけど銀板って何か教えてくれ。あと種類とお前の名前も。」


 まさか、金についてと名前を聞かれるとは思いもしていなかった。

 俺は思わず質問をした。


「銀板を知らない?全ての国で使われている共通の通貨だぞ。お前どうしたんだ?記憶喪失なのか?」


 世界共通の通貨を知らないとなると記憶喪失なのではないかと思った。


「記憶喪失とかでは無い。俺の住んでいた所は通貨より物々交換が主流だったんだ。」


「今時、物々交換なんてとんでもない田舎から来たんだな。まぁいいや、教えてやるよ。まずは名前だな、俺の名前はカイル・エヴァンだ。通貨については・・・」


 俺は通貨を今現在持っているのを見せながら丁寧に説明した。


「教えてくれてありがとう。因みに俺の名前はトオル・カタセだよろしく。」


 男はトオルと言うらしい。


「トオルか、よろしく頼む。」


 俺はトオルにそう言いながらフォレスト・ファングの解体をしていった。

 それにしてもこのフォレスト・ファングの死体はすごい変だな。

 ランクDの魔物の体に木の枝ごときが刺さるわけが無いのに刺さっている。

 更に、おかしいのは刺さっているというより生えていると言った方が正しいのと、腹の中から石や木の枝が出てきたことだ。

 こんな死体は初めて見た。

 俺はこのトオルという男に興味が沸いてきた。



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