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先生は宿屋に着きました。

 カインに案内されてやって来たのは《かぎしっぽ亭》という宿だ。


「ここは村で唯一の宿屋だ。昼間は飯屋もやっているから飯もうまくて、街にある宿屋より安く泊まれるんだ。」


 確かに見た目も清潔感があって宿屋の看板も鍵尻尾の猫がモチーフになっていて可愛らしい宿屋だ。

 俺が宿屋の扉を開けようと意気込んでいるとカイルがためらいも無く大きい声を出しながら扉を開けて先に行ってしまった。


「グラーフさん、居るかい?客を連れてきたんだが。」


 カイルが呼ぶと中学生くらいの猫耳の可愛い女の子がウェイトレスっぽい姿をして笑顔で出迎えてくれた。


「いらっしゃいませカイルさん。父さんなら厨房にいますよ、呼んできますか?」


「よぉ、ネネちゃん。お願いしてもいいかな?」


 どうやらこの子はネネという名前らしい。

 見た目どうりの可愛い名前だ多分、獣人なのだろう。

 ネネちゃんは店の奥にある暖簾から声をかけた。


「父さん、カイルさんが呼んでるから出てきて。」


 ネネちゃんが呼ぶと奥から大きな出刃包丁を持ってピンクのエプロンをした猫耳の筋骨隆々の大きな男とネネちゃんを大人にしたらこうなるんだろうなと思うほどの猫耳をした美人が出てきた。この村にはゴリマッチョな男が多いな。


「どうしたんだカイル、客を連れてきたとか聞こえたが。」


「紹介するぜ、こいつはさっき森で偶然知り合ったトオルって言うんだ。こいつが宿を探してるって言うから連れて来たんだ。」


「俺はグラーフ・マトリだ。よろしく。」


「妻のカリアです。よろしくお願いしますね。」


「娘のネネです。よろしくお願いします。」


「こちらこそよろしく頼む。」


「料金だが一泊銅板8枚と銅貨5枚だ。あと朝飯は付いているが昼と夜の飯は別料金だが覚えておいてくれ。」


 一泊850円で朝飯付きってのは確かに安いな。流石、異世界。日本とかだと考えられない価格設定だな。


「風呂とかトイレはどうするんだ?」


「風呂はこの先の突き当たりを右に行くと浴場があるからそこを使ってくれ。黒い暖簾が男で赤い暖簾が女になっているから絶対に間違えるなよ。トイレは同じ突き当りを左に行くとある。風呂と同じで黒が男用、赤が女用だ。」


 色の目印は日本とほぼ同じだから間違えることは無いだろう。


「風呂の利用料は?」


「一泊の代金に含めているから安心しろ。」


 風呂も付いてあの値段か、よりいっそう安く感じるな。


「じゃあ、今夜から頼む。」


「毎度あり、ネネお客様を案内しろ。」


 グラーフさんはそう言うとカイルに話しかけていた。


「では、こちらへどうぞ。」


 俺はネネちゃんの後ろについていった。

 部屋は二階らしく階段を登って行くと複数のドアが通路に並んでいた。


「この9の部屋がトオルさんの部屋に成ります。ではごゆっくりどうぞ。」


「ありがとう。」


 ネネちゃんにお礼を言って俺は部屋の中に入った。

 中は一人部屋にしては大きい広さでテーブルと椅子、ベッドが置いてあるだけの質素な部屋だった。

 今日一日歩きっぱなしで疲れたので風呂は明日で良いかと思いながらベッドに横になると俺は直ぐに眠りについてしまった。




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