正体
「できました!」
心奏は出来上がったハンバーグを山田に差し出す。
「どれどれ?・・・ほう、なかなかの腕前でございますな。」
「小さい頃から家事は全部私の仕事だったので。」
「それなら心強いですな。」
「えへへ・・・」
「さて、私は坊っちゃまを呼んでくるのでこれを運んでおいて頂けますかな?」
「わかりました!」
山田がドアの向こうに姿を消すと、心奏は二人が来る前に終わらせようと急いでテーブルに夕飯を運んだ。途中で壁の向こうからドタバタ凄い音がしたが、心奏は気にしないことにした。
「ふぅ・・・」
心奏は運び終わって特にすることもないのでテーブルの椅子に腰掛けた。
「遅いなぁ二人とも。でもまぁこれだけ広ければ時間もかかるよね。」
心奏が一人ぼやいていると、突然ドアが開いて、謎のイケメンを脇に抱えた黒い笑顔の山田が現れた。
「お待たせしてしまいすみません。今日は特に手こずりました。」
「なんで俺がこいつの作った料理なんて・・・」
「あれ、山田さん、アレン様を連れてくるんじゃなかったんですか?」
「坊っちゃまはこの方ですが・・・あぁ、そういえば貴女はまだこの姿で会った事がなかったのでしたね。」
「・・・えっと、話がよくわからないんですが・・・」
「このお姿で外に出ては目立ちますので、外出時はあのような子供のお姿に変身していただいております。」
「へ、変身・・・?忍者か何かですかね・・・?」
「坊っちゃまは吸血鬼でございます。」
「え」
にっこりと言う山田を見て、心奏は背筋が凍った。
「大丈夫です、貴女を取って喰ったりなんて事はしませんよ。」
すっかり固まってしまった私を見て、山田は笑いながら言った。
「そもそもそんな奴の血なんて吸う気にもならない。汚らしい。」
苦虫を噛み潰したような顔で言い放たれて、流石の心奏も傷ついた。
「私ってそんなに汚いかな・・・」
「いいえ、貴女は十分綺麗でございますよ。ささ、冷めない内に召し上がってください。」
「はぁ・・・・・・だからなんで俺が・・・」
渋々といった感じでアレンは椅子に座った。
「つべこべ言わず食べてみてくださいまし。」
「・・・」
アレンは少し考えたような顔をして、恐る恐るハンバーグにナイフを入れ、一切れ口に入れた。
「どうです、美味しいでしょう?」
「・・・別に」
そう言いつつアレンは食べる手を進める。
「ふふっ、顔に美味しいと書いてありますぞ。」
「・・・うっさい」
(ど、どこら辺が・・・!?)
心奏には表情一つ変えないアレンが美味しいと思っているようには見えなかった。
「私達もいただきましょうか。」
「はい」