第二話「ブキの種類を理解しておくと楽しいかもよ?」
閑静な屋敷に、怪しい女性が一人。サティスファクション都である。
「怪しいってなによ。妖しい、ならいいんだけども。それはともかく、そろそろ来る頃合いかしら」
そういうと、それは予言めいて的中する。
「都ちゃん! 教えて!」
「いきなりね、美咲」
障子戸をバン開けて入ってきたのはサティスファクション都の数少ない友人、犬飼美咲である。
「都ちゃん! 教えて!」
接近してそんな事を言う美咲。流石のわんこ系と言えるゼロ距離戦である。
「落ち着きなさい、美咲。近い近い」
「あのね、ブキがよく分からないの!」
「近い近い近い近い」
少し嬉しそうな所があるサティスファクション都だが、それでも一旦美咲を引き離して、ステイ! とする。
「落ち着きなさい、美咲。教えるにしても何をなのか分からないとどうしようもないわ」
「それもそうだね! 実は昨日買った『スプラトゥーン』について聞きたいことがあるの!」
「まあ、そうだとは思ったわ。で、『スプラトゥーン』の何を教えてほしいの?」
「ブキの種類が良く分からないの! まだわかばシューターを使ってるけど、他にもなんか色々あって。皆色々使ってて! それはどう違うのかな?」
成程、とサティスファクション都は頷く。
「美咲にはまず、大枠の種類の差を教える必要があるみたいね」
「うん、教えて?」
「いいわよ? ということで今回は題して、“ブキの種類を理解しておくと楽しいかもよ?”」
そう言うと、サティスファクション都はどこからかホワイトボードを出してきて、自分の言った言葉を書いた。
突如出現したホワイトボードに、サティスファクション都は書き連ねながら話す。
「今回は、『スプラトゥーン』におけるブキ、つまり攻撃に使用する物についてのお話。まずブキの種類は大別すると、“シューター”、“ローラー”、“チャージャー”、“スピナー”、“スロッシャー”の5種に分けることが出来るわ。更に細かくすると、ここに“シューター”の系統である“ブラスター”と“ローラー”の系統である“フデ”があって、つまり7種になるわね」
そう言うサティスファクション都に、美咲が得心いったように言う。
「それらが、全部それぞれ違うんだね?」
「そういうこと」
そう言うと、サティスファクション都はまず“シューター”に丸をする。
「まず“シューター”ね。これは一番種類数が多いブキ。その特徴も千差万別だけど、基本的にボタン押しっ放しで連射出来るのが共通するわね。それ以外では比較的中距離といえる射程の物が多いことと、一発では倒せないのが特徴かしら」
「最初から選べるわかばシューターも、“シューター“なんだね」
「そうね。それ以外でも平均的な性能のスプラシューターとか射程が長いジェットスイーパー、逆に射程は短いけど素早く敵を倒せるボールドマーカーなんかもあるわね。まあ、本当に千差万別だから、使えるようになったら一通り触ってみるのがいいでしょうね」
それから、と言うと、サティスファクション都は“ブラスター”に丸をした。
「“シューター”の派生ブキと言えるのが、この“ブラスター”。結構ランクが上がらないと使えないけど、これは直撃で相手を一撃で、破裂した爆風でも二発で倒せるのが特徴ね。その代わり連射が効かないから、塗るのがちょっと難しいブキね」
うんうん、と美咲は得心している。
「偶に“シューター”に見えるのにいきなり一発でやられるのって、それだったんだね」
「そうね。これも射程の長いロングブラスターとか、逆に射程の短く破裂範囲が広いノヴァブラスターとか、連射性の高いラピッドブラスターもあるわね。扱いは難しいけどその分倒す力は強いブキと言えるわ」
次に、と、サティスファクション都は“ローラー”に丸をする。
「“ローラー”は文字通りのローラーで地面を塗るブキね。移動しながら目の前が塗れるのと、その移動しながら塗るそのままが攻撃になって倒せるのが特徴ね」
「あれだね、コロコロだね」
「そうね、コロコロ。他のブキより塗るのとか攻撃とかの操作が楽なのも特徴かしら。ただ」
サティスファクション都はそこで一息いれて、そして言った。
「“ローラー”は、鈍器よ」
「鈍器」
そう、とサティスファクション都は言う。
「“ローラー”は“シューター”のショットと同じボタンでインクをまき散らすけど、これの威力が高いの。正面ならほぼ一撃で倒せるわ。近くてローラー直撃でも倒せる。だから、潜伏して待ち伏せ、いきなり出て潰す、というのが強力なのよ。ゆえに鈍器。よく覚えておきなさい」
「う、うん」
「で、その大枠ではローラーの中の分類になるのが“フデ”。こちらは塗り移動の範囲も威力も、だけれど、塗り移動はイカ移動と同じくらいの速さで、振ると広範囲に塗れるのが特徴。そして、これは暴風」
「暴風」
「一発のダメージは小さいけれど、高速で振りまわしてこちらを狩りとるそれは、暴風という他ないわ。射程が短いのとその高速さは連打によるものだから、プレイヤースキルに依存するところが大きいのが救いね」
さておき、と一拍置いたサティスファクション都は、次に“チャージャー”に丸をつける。
「“チャージャー”。これはFPSとかではよくあるスナイパーライフル的な立ち位置のブキね。インクをチャージして撃つブキよ。特徴は長い射程と高い威力。FPSのスナイパーライフルと同じで、注目とヘイトを受けやすいブキでもあるわ。弱点は速攻で攻撃することが不得手なのと、チャージがインクに潜ると解除されるから、撃つなら出てい続けないといけない点ね。だから潜伏からいきなり攻撃というのは難しいブキだわ」
「でも遠くから撃つの、強いよねー」
「そうね。ただ安全地帯から撃つだけではなく、不利な場所でも立ち回れる上手い“チャージャー”使いは一騎当千といえるわ。とはいえ、塗る能力が若干弱い点があるので、ナワバリバトルでは若干不利ではあるのよ。その辺もしっかりと出来れば、“チャージャー”使いとしては一級品ね。尊敬すべきよ」
「次は? “スピナー”?」
「そう、“スピナー”ね」
サティスファクション都は“スピナー”に丸をする。
「これもチャージして撃つブキだけど、こちらはリーチと発射弾数の多さ、そして攻撃持続時間の長さが特徴ね。総じてチャージャーよりも塗る力が強いブキと言えるかしら」
「このブキは、あんまり見ないね」
「色々と弱点が多いブキだからね。一発の威力が低くて、倒せる弾数になるまでもチャージに時間がかかるの。“チャージャー”と同じで潜伏から、という奇襲的な使い方も出来ないし、近距離に寄られるとチャージャー以上に対処が難しいのよね」
「大変だね」
「でも、広範囲を一気に塗れる快感とか、相手を押しのける斉射の喜び、制圧射撃の妙味を知ると、中々ハマるブキよ。で、最後が」
そう言って、サティスファクション都は“スロッシャー”に丸をつける。
「“スロッシャー”。通称でバケツね。これは二発で倒せる威力と、高低差や遮蔽を乗り越えて攻撃できるというのが特徴のブキよ。他のブキでは放物線を描くように撃つとそれが降ってもダメージが当たらない場合があるけれど、スロッシャーはそれがないの。かなり独特の強みね」
「たまに遮蔽に隠れてても、というのは大体バケツなんだね」
「そういうこと。高さに強い“スロッシャー”だけど射程は短めなのが弱点ね。とはいえ、これより短い“シューター”は結構大変よ」
そこまで言うと、サティスファクション都はこたつの上の湯呑みを取り、ずぞぞー飲み下す。
「ふー、話したわね。美咲、ブキの大体のところは分かったかしら?」
「えーと、“シューター”が基本で、“ブラスター”が一撃のブキ。“ローラー”が鈍器で“フデ”が暴風。“チャージャー”が遠距離攻撃で“スピナー”が制圧射撃、“スロッシャー”が高いとことか遮蔽越しにも有利、かな?」
「ざっくり言うとそういうものね。理解してくれて嬉しいわ」
そううそぶくサティスファクション都の目に映るのは、小首を傾げる美咲である。嫌な予感がするサティスファクション都。
「どうしたの、美咲」
「うん、ブキの大別は分かったんだけど」
「そうね。分かってくれないと困るわね」
「じゃあ、どのブキを使えばいいのかな、って。あたしの適正とかはどこにあるのかなとか、思っちゃったんだよ」
ああ、とサティスファクション都は頷く。
「成程、それは確かに気になる部分ではあるわね。それについては、次回に持ち越しましょうか。美咲のランクがもうちょっと上がった方が、話もやり易いからね。そう言えば、ランクは今どれくらい?」
「ランクは、5だよ」
「昨日からやったにしては早いわね。ガツガツしたようね?」
うん、と素直に首肯する。
「それで、ランクが上げるにしても、当面はどうしたらいいのかな?」
美咲の問いに、サティスファクション都はうんうん鷹揚に頷く。
「ランク5で触れるのは、“シューター”、“ローラー”、“チャージャー”、“スロッシャー”ね。うーん、結構難題かもね」
「そうなの?」
ええ、とサティスファクション都は答える。
「どれもそのブキ種固有のスキルが必要だからね。ブキ種間で応用が効かないのよ。とはいえ、そういうのが気になるのはもうちょっとランクが上がってからの話だし、ここはやっぱり使い易いブキを使うのが一番かしらね。となると」
「となると?」
「わかばシューターね」
「最初のブキのこと?」
「ええ、そう。わかばシューターは最初から使えるブキだけど、これが使い易いのよ。上級者でも愛用している人がいるくらいだからね」
「そんなにいいの?」
「ええ。集弾性と射程に難があるけれど、それ故に塗り能力は高かったり、足下を塗るのが楽で動きやすかったり、サブウェポンのスプラッシュボムはボム系の基本だから使い方覚えておくと他のボムでも応用が効いたり、スペシャルのバリアは単純に高性能だったり、塗り能力と合わせて回転率も良かったりするのよ!」
「う、うん」
はっとサティスファクション都は気付く。ちょっと前のめり過ぎた、と。
「ご、ごめんなさい美咲。わかばシューターターとしてついつい」
わかばシューターターってなんだろう? と美咲は困惑顔だが、それは無視して、サティスファクション都は続ける。
「ランクは20までは塗ったポイントで上がるから、塗り能力が強いブキで上げるのがセオリーなのよね。だから他で使い易いのはスプラシューターとか、スプラローラーコラボとかね。スプラチャージャー辺りは塗る能力は修練がいるから、お勧めしにくいわね」
「分かった、じゃあ、早速その辺りを使ってみるね!」
ええ、頑張って、と言う間もなく、美咲はすっ飛んで帰って行った。
「ということで、次回はブキの種類をより見ていくことにしましょう。でも、美咲はどこまでランク上げてくるかしらね?」
そう、サティスファクション都は独り言をするのであった。
ローラーは鈍器。というのはいつだったかツイッター上で見た言葉なんでですが、それをみて然り、と思ったりするくらい、ローラーは鈍器です。でもコロコロして倒すのもまた楽しいんだよなあ。とかなんとか。




