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第13話「サブギアパワーを厳選するなら、覚悟しておくといいかもよ?」

 ある町の外れの、一軒の邸宅。周りの如何にも高級でございな佇まいの家々に比べてもそん色のない、そんな屋敷。

 そこにゲーマー妖怪がいた。

 今日も今日とて、ちゃぶ台に湯呑みでトラディショナル・オチャ・スタイルである。ジャージなのが玉に傷と言えよう。

「どうも、サティスファクション都です。小説からパクってません。というのはさておき、今日は美咲が遅いので、ちょっとやきもきなどしているわよ? こういう時の為のすっぱだというのに、ニシワタリからも連絡が無いし」

「ワタクシ、何時からすっぱになりまシタカ?」

 視界の外から声を出すのはニシワタリだ。いつの間にか、サティスファクション都の隣に立っている。しかし特に驚くこともなく、サティスファクション都は受け答える。

「鬼女の走狗って言えば、この辺りじゃああなたの代名詞じゃない」

「そりゃ昔デショウ。サティスファクション。今のあなたは鬼女ではなく、妖精なんでショウ?」

「ま、それもそうね。でと、美咲の動向はどうなのよ、ニシワタリ」

「そろそろ、あれが気になっている模様デスヨ」

「ほほう、あれ、ね……。成長したというべきかしら」

「シカシ、あれは茨の道。軽はずみにはしてもらいたくない、というべきではナイデスカ?」

「そうかもね。それでも気になってしまうのが、人という種のさがなのかもね」

「かもシレマセン」

「それ、よく本人の前で出来るな」

 そう言うのは城茂美。隣に犬飼美咲もいる。話の途中から、ニシワタリ登場辺りから既にやってきていたのだが、この寸劇を続ける為にサティスファクション都とニシワタリは無視していたのだ。

「というかお為ごかしてるけど、あれってなんだよ」

「さて、美咲」

「無視か!」

 茂美を無視して、サティスファクション都は美咲に問い掛ける。

「あなた、『スプラトゥーン』はどんな感じかしら?」

「うん! 楽しいよ! ランクも順調に上がってるし。この間のフェスもえいえんで勝てたし!」

「成程。満喫してるわね。でも、ちょっと気になることがあるんじゃないかしら?」

「気になること?」

 そういうのは茂美である。美咲の方は、その指摘にびくりと体を小動きさせる。

 それを見たサティスファクション都は、ふふん、と。

「回したいのね? ダウニーガチャを」

「なんで、それを」

「私はゲーマー妖精よ? ことゲームに関連することで気付かないことは無いわ」

「とか言ってイマスガ、これ、ワタクシの情報網のおかげなんデスカラネ? あなたの手柄じゃないデスカラネ、サティスファクション?」

「……、とにかく、ダウニーガチャ、回したいと思っているのは間違いないわね、美咲」

「うん。どうしてもお気に入りのフクにいいサブギアパワーが付かなかったから、付け直そうかな、と思ってるよ」

「あくまで見た目から入るその姿勢は、ガチ勢には無いから眩しいばかりだけれど、でも美咲。それがどれだけの苦難があるか、知っていてやろうとしているかしら?」

「そりゃあ、ランダムだから大変だとは思うけど、都ちゃんの話、前のギアパワーの話で色々と選んでたとか聞いちゃうと、案外簡単にくっつけれるものなのかもなって思うんだけど?」

 サティスファクション都は腕組みをして、一喝。

「甘いわ!」

 通る声で言われ、意味もなく身をすくめる美咲。茂美が抗議の目線を送ってくるが、それに意を介さないサティスファクション都。

「今あるいい揃いのサブギアパワーが、簡単にくっつけられる? 甘いわよ、美咲! それを手に入れる為に、どれだけのスーパーサザエが消費されたか。美咲、あなたに分かるの?」

「あ、はい、ごめんなさい。分かりません」

 若干しょげて怒られた大型犬みたいになる美咲。それを見て、自分の伝えたい事が伝えられそうな状態だ、と踏んだサティスファクション都は、続けて言う。

「ということで、サブギアパワーを付け変える、通称ダウニーガチャについて話してみましょうか」

 サティスファクション都の右手にもう一つ腕が生え、それが上下に分かれたかと思うとその手と手で紙をいつの間にかもっていた。

 そこに題字。

“サブギアパワーを厳選するなら、覚悟しておくといいかもよ?”


「さて、ダウニーガチャ、サブギアパワーの再抽選について基本的に押さえておくことは、一つだけ」

「何があるの?」

 美咲の問いに、サティスファクション都は答える。

「抽選する場合、出やすいパワーと出にくいパワーがある、ということね」

「出やすさと出にくさががあるんだ」

 ソウデス。とニシワタリ。

「その内、出やすい方のパワーが三つ揃うのを純ブラ。逆に出にくい方のパワーが三つ揃うのを偽ブラといいマス。ちょっとした用語ですが、覚えておくと他の人との話が分かりやすいデショウ」

「さておき、出やすいのと出にくいのでは、相当に差があるのは、まずわかると思うけど、その手前の話として、三つ揃うそれ自体、結構レアなのよ。特に、出やすいとされる物を狙っての場合だと、それが二つついて一つ違うの、というのはわりと頻発するわ」

「でも、それは体感的なことだろう?」

 茂美の横やりに、サティスファクション都は首を傾ぐ。

「うーんそうなんだけど、人の動画とか見てても、案外欲しいのの二つ揃い、というのは多く見受けられる傾向があるわ。単にそう言うのを流しているだけ、もあるでしょうけれど、それでも妙に多い気がするのよね」

「実際欲しいの二つ付いて後一つ、っていうのはワタクシも結構経験シマシタヨ」

「僕はあんまりないなあ。個人差だと思うがなあ」

「まあそりゃ、個人の感想だからね、こればかりは。というか、そう言うのないというのが羨ましいわね。と、話が脇に逸れたわね。元に戻しつつ聞くけど、美咲、あなたは、二つ欲しいギアパワーが付いて、一つが予定のギアパワーと違った場合、どうする?」

「……」

 美咲はしばし黙考する。そして、おずおずとながら回答した。

「もう一回、抽選するかな」

 その答えに、サティスファクション都は、真剣な面持ち。

「……美咲」

 重く告げる。

「ダウニーガチャへ、ようこそ」

「なんでそんなに重苦しいかなー!?」

「実際重いデスヨ、この選択は。初めて人が沼に落ちる音を聞いた、ってレベルデスカラネ」

「そんな重大なこと!?」

「重大なんだよ、美咲」

「茂美ちゃんまで!」

「純ブラの三つ揃いは、確率的には3%程と言われている。とても高いとは言えないが酷く低くもない。が」

「これが出ないのよ。出ないのよ……」

「どれくらいやったの?」

「お前は今まで食べたパンの枚数を覚えているか? デスヨ」

「望みの物の為にスーパーサザエを50、60溶かすのなんてありふれた話だからな……」

「無くなればお金が、30000が飛んでいくのもえぐいデスヨネ……」

「24個でどうにかなる、と思っている美咲の姿はお笑いだったわよ」

 胡乱な目付きになる三人に、美咲はきっちりとドン引いた。どうにも負の感情が渦巻いているこの場を作ったのが自分だというのも分かっているので、どうにかしなくては、と考える。考えるが、疑問しか出て来なかったので、駄目もと。それを言ってみることにした。

「でも、三つ揃わないのが大半なら、それに固執する必要はないんじゃないの?」

「……」

 三人が沈黙する。お互いがお互いで何やら懊悩としている。そしてぽつりぽつりと話しだす。

「揃わないのなら、色々と組み合わせるのが現実的なのよね。その方がスーパーサザエの消費量も段違いだし……」

「用途によってギアを切り替える、というのも楽しみ方としては確かにありだし、面白いんだが……」

「そもそもサブギアパワーよりメインを重点にするのが正しいんデスケドネ。効果の面ではサブギアパワーはメインよりは、デスシ……」

 更に胡乱になる面々。何か、余計見てはいけないものをみてしまったかのような情景である。美咲は流石に困ってしまった。とはいえ、解決策もさっきので出尽した感がある。どうしたものか。

 と。

 呼び鈴の音がした。外に来訪者があったようだ。

「郵便ですー。ハンコお願いしますー」

「あ、はーい」

 サティスファクション都はまだ懊悩としているので、ここは、と美咲が動いた。流石に勝手知ったる他人の家。ハンコの場所さえ知っている。それで悪行を為すとは思われていないのは、美咲にとってはちょっと嬉しいことだ。

 それはさておき郵便である。ハンコを持ち玄関に着いた美咲。玄関の戸をあけると、そこに居たのは女性であった。身長は平均的な辺りだろう。体躯も太くはないが細くもない。ぱっと見た目の感じはどこかサティスファクション都に近しく感じる。しかし実際は乱雑な髪、よれた着衣、ぼろぼろの下駄と、清潔感が薄い女性であった。そしてどう見ても、郵便屋さんに見えない。

「えと、郵便、ですよね?」

「はひっはひっはひっ」

 女性は突如笑いだす。普通に笑っているのだろうが、妙に甲高く、耳障りな笑い声だった。

「その通り、郵便屋さんですよー。これを、届けに来たんだからねー」

 そう言って手に持った封筒を、美咲に強引に手渡した。

「じゃあ、渡したよー。ついでに渡しておいたよー。いいね?」

「はあ」

 そな、というと女性は入り口にあるバイクにまたがると、それを疾走させて、あっという間に帰ってしまった。

「……なんだか、変な感じだなあ」

 サティスファクション都と友達になって長いので、またぞろ面倒なことなんだろうなあ、とは薄々感じつつ、しかしそれをすぐに忘却する。サティスファクション都が、突如「厳選プレイとはこういうものよ!」とサブギアパワー抽選大会と題してやりだしたからだ。そのあまりの溶けっぷりに、美咲は心胆寒からしむのだった。


「サザエ……。50万……」

「自爆営業は止めた方がいいデスヨ? 特に強制された訳でもナイノデスシ、揃うまでやることは無かったデショウニ」

「ほら、私ってゲーマー妖精じゃない?」

「妖怪デスヨ」

「……だから、ここいちの豪運があるって思った訳で」

「無かったデスネ」

「サザエ……。50万……」

「鬱陶しいデスネ。それより次回はどうするんデスカ?」

「……案はあるのよ。ただ、長くなりそうだからちょっと気が引けてね。でも、面倒くさいと言うことは面白い訳だから、それでいってみようかしら、ともね」

「どういうものヲ?」

「ブキとステージのお話。今言えるのはこれくらいね」

「もったいつけることデスカ」

「だって、まだ不明なことが多いんだもの。でもまあ、この方向で行くとは思うわ。だから、お楽しみに」

サブギアパワー再抽選。通称ダウニーガチャについてひとくさり。あまりに出ないので色々と裏の手口が発達してしまった現在ですが、個人的にはいいのが二個ついたらそれで満足しております。色々付け替えるのも楽しいんですよ。そろそろ厳選したやつも欲しいですけど、くじ運が無いので、今あるので満足する方が精神衛生上良いかな、とか。次回はああは書いてますが、はたしてどうなることやら。とかなんとか。

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