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第11話「プレイスタイルの変化をブキに反映するのもいいものかもよ?」

 “プレイスタイルの変化をブキに反映するのもいいかもよ?”

 馴染みの家の床の間の、その目の前にそういう垂れ幕があった時、人はどうするだろうか。犬飼美咲は特に問題視はしない。流石に瞬間的にはびっくりはしたが、すぐに落ち着いた。

「いきなりだね、都ちゃん」

 落ち着き払った声で、その垂れ幕をくぐって部屋の中に入りながら、美咲はそう言う。

「ふふ、そろそろだと思ったのよ」

「何が?」

「美咲が、ブキを変えてみようかと思うのがよ」

「……よく分かったね」

「そりゃあ、私はゲーマー妖精だもの。ゲーマーの機微に関してはその辺の人とは比べ物にならないくらい鋭敏なのよ」

「そういうものなの? ゲーマー妖怪って」

「そういうものよ。ゲーマー“妖精”は」

 ふうん。と若干の納得いかなさを残す美咲。サティスファクション都は、そこには気にすることはなく、続ける。

「さて美咲、最近は倒せるようになっているかしら?」

「撃ち方教えられて、練習してるからなのか、そこそこは生き残り易くなってるよ」

「となると、次に教えるべきは、塗れて、でも倒せるブキでしょうね」

「ブキなら、ランクが20になったから、全部買えるようにはなったよ? これから、見ていけばいいのかな?」

「そうなるわね。ささ、こっちにいらっしゃい。解説してあげるわよ?」

 勧める先はちゃぶ台。その脇にWii Uが置かれている。その向かいには40インチ薄型液晶モニター。勿論遅延については最低限にするもの。ちゃぶ台の上には二人分の湯呑みと茶菓子、そしてゲームパッドが置かれている。ゲームの方は既に起動状態で、ボタン操作を待っている形だ。

「やたら用意がいいね」

「美咲がランク20になったって聞いて嬉しくてね。これで前には出来なかったブキの解説が解禁となれば、語りたい欲が疼く訳よ」

「そうデスヨ」

 にゅ、という言葉が相応な出現をする、ニシワタリ。本当にどこから湧いたのか、というレベルで、流石に美咲も「うわっ」と言ってしまう。しかし、ニシワタリはその辺りは無視して話をする。

「まずランク20まで行ったラバ、長射程群の拡充が大きいデショウ!」

 起動していたWii Uの画面の中で、キャラクターが次々とブキを持ちかえる。どれも長射程のブキだ。

「クイボとダイオウで攻撃力が強化された“ジェットスイーパーカスタム”。“ジェットスイーパー”より射程は劣るもののそれでも十分魅力的な射程と連射力のある“デュアルスイーパー”及び“デュアルスイーパーカスタム”。サブがポイントセンサーと支援色が強めデスガスーパーショットのおかげで高い戦闘力もある“プライムシューターコラボ”。支援向きながら二確の強さが光る“.96ガロン”に、それを戦闘向きにカスタマイズされた“.96ガロンデコ”。シューターだけでもこれだけあげられマスネ」

「それ以外にも、チャージャーやスピナー、ブラスターなどの長射程のブキの解禁も多いわね。個人的には“スプラスピナーコラボ”が面白いと思うわね。ポイズンボールとバリアという珍しいサブとスペシャルの組み合わせが中々味わい深いわ」

「長い射程のブキばかりなんだね」

 美咲の言葉に、ニシワタリはカクンと不自然に頷く。

「一応、短射程で高火力な“ボールドマーカー”及び“ボールドマーカーネオ”もアリマスし、フデ系もトラップとバリアでかく乱力アップな“パブロ・ヒュー”、ブラスター系なら射程が短いものの爆発範囲の広い“ノヴァブラスター”類等、短射程ブキも解禁サレマスヨ。とはいえ、長射程が多いことは間違いないデスネ」

「でも、そんなにあるとどれを使えばいいか迷っちゃうよ。今までのブキでも、まだこれ、ってなってないのに」

 困惑気味の美咲に対し、ニシワタリはまたカクンカクンと不自然に頷く。

「ソウデショウ、ソウデショウ。何せブキは70種近くあるのデスカラ、どれがいいのかと混乱するのは理の当然。前にサティスファクションも言っていマシタガ、その日の気分で変えてしまうのもありなレベルデス。トハイエ、美咲さんはまず芯となる基礎固めを終えて応用に向かい始めるランク帯デスカラ、現在のメインな使用ブキから延長していくのが理解し易くてイイデショウ。美咲さん、メインだ、と言えるブキはなんデスカ?」

 ニシワタリの問いに、美咲はうーん、と唸る。

「“シャ―プマーカー”とか“N-ZAP85”とかかな? でも最近は塗る方向で動いているけど、マンネリな感じはあるんだよね。もうちょっと倒したい、って気持ちが出てきてるよ」

「それだけ情報があれば色々と考えられマス。まず、“シャープマーカー”からの長射程互換で“プライムシューターベリー”があげられマスネ」

「どういうブキ?」

「“プライムシューター”の派生ブキ、それもこの度のブキチコレクションで追加されたのデスガ、まずサブとスペシャルが“シャープマーカー”と同じキューバンボムとボムラッシュデスネ。使い方に慣れているでショウカラ、取っつき易いデショウ。そして“プライムシューター”のメイン射撃は、長射程、三確ながら少しの攻撃力UPギアパワーで疑似二確という破壊力、そのわりにそこそこの連射速度と、シューター類としては破格デス」

「聞くだけだととても強そうだね」

「ええ、カタログスペックで騙すならそこまでしか乗せないのが賢いくらいデス。シカシ、単に強い訳ではありマセン。“プライムシューター”類はインクの枯渇が早いと言う弱点がアリマス。これがもう、かなりの速度で無くなります。そしてキューバンボムのインク消費が大きいので、更にインク管理が大変デス。トハイエ、性能は高い部類に入る、使いなれたら強いブキデスヨ」

「インク管理、かあ。難しいんだよなあ」

 言う美咲に、ニシワタリはまたカクンカクンと不自然な首の動き。

「タシカニ、最初の頃のブキは、シューター類は特に、インク効率がいいのが多いデスカラネ。“スプラシューター”とか、適当にやってもなんとかなるブキが多いデスシ。シカシ、このインク管理は覚えておいて損は無いスキルデスヨ。ここぞでインク切れ! というのが少なくなれば戦いが更にしっかりしたものになりマス。この機会にきっちり覚えるのもありデショウ」

「うんー、出来たら覚えておくよ」

 ニシワタリはカクンカクン。それから続ける。

「次に“.96ガロン”。ガロン系の上位ブキで、二確という高い破壊力と、射程の長さが特徴デス。シューター系なら2位タイの射程デスネ。サブはスプリンクラーで苦手な塗りをフォロー出来マスシ、スーパーセンサーによって味方のサポートが出来るのが強みデスネ。ただこれもメインのインク効率が悪く、射撃時の移動速度も相当遅くなり、その上連射も他のブキよりですが効かないので、塗るならスプリンクラーを柔軟に使う必要がアリマシテ、なので使い方に熟練が要りマス」

「それより“.96ガロンデコ”じゃない?」

 サティスファクション都の言葉に、またカクンカクン。

「それもありデスネ。“.96ガロンデコ”は射撃は“.96ガロン”のものデスガ、サブにスプラッシュシールド、スペシャルにダイオウイカというより戦いに特化したブキデス。その分塗り性能を犠牲にしているので、これで高いポイントを出すのは難しいデショウ。とはいえ、美咲さんはまだ倒すのが好き、好きィ! って感じじゃないデスカラ、それよりは“.96ガロン”の方がいいかもしれまセンネ」

 ニシワタリさん、好き、好きィ! の時の顔が怖いなあ、と思いながら、美咲は問い掛ける。

「他にはどんなのがあるの?」

「ブラスター系もありデスネ。“ラピッドブラスターデコ”もサブスペシャルが“シャープマーカー”と同じなので、慣れが使えるブキデスネ。ただ、ブラスター系としては二確という弱点と、ブラスター系としては連射が出来る利点を知っておかなくてはならないデスガ、それさえ分かっていれば十分戦力になるブキデス。とはいえ、これもシューターとは違う修練がいるので、慣れるならそろそろ始めないといけマセンネ」

 そこでニシワタリは一息して、ちゃぶ台に置いてあったサティスファクション都の湯呑みを持って一飲み。

「……」

 視線を送ってくるサティスファクション都に対して、無視。そして話し続けるニシワタリ。

「“N-ZAP85”のサブスペシャルと同じなのでは、“デュアルスイーパー”がありマスナ。これは、先にも言いましたが、射程は“ジェットスイーパー”には及ばないものの、それでも十分なものがあり、また“ジェットスイーパー”よりは連射速度が速く、近から遠距離も平均的にこなせるのもあってかなり戦い易いブキデス。近距離戦やクリアリング、相手を後退させるなどの使い方が出来るスプラッシュボムがサブなのも大きいデスネ。そしてスーパーセンサーは直接の打撃力は無いけど潜伏を暴く効果が大きいスペシャルデス」

「シューターばかりに偏り過ぎてない?」

 サティスファクション都の棘のある言葉に、しかしニシワタリは素知らぬ顔。

「シューターの延長線上の方が、分かりやすいとの判断デスヨ。他はこれから」

「ふーん」

「トハイエ、チャージャーやスロッシャーやローラーは特に倒す重視でないなら、どれもそれなりデスネ。倒すならチャージャーは“リッター3K”辺り、ローラーは“カーボンローラー”辺りが使えれば問題ないですが、どれも当然修練がいりマスネ。で、スピナーですよ」

「スピナー」

 美咲のオウム返しに、ニシワタリはカクンカクン。

「スピナーは癖は強いですが、上手く扱えると倒すのも塗るのも思いのままな、高い性能を発揮するブキです。さっきサティスファクションが言っていた“スプラスピナーコラボ”はスピナー系としては移動速度が早く、ポイズンボールで弱らせて撃つ、ヤバい時はバリア、とサブとスペシャルの役割も癖はあっても分かりやすいブキデスネ。“スプラスピナー”もサブがキューバンボム、スペシャルがスーパーショットなので、こちらは癖が無く使い易いブキデス。ですが、ここはあえて“ハイドラント”及び“ハイドラントカスタム”をオススメシマショウ」

「いきなり無茶なの入れるわね」

 あきれるサティスファクション都に、ニシワタリはニョホホと笑う。

「どうせスピナー初手ならば、扱い難い易いはありまセンヨ。ならば、どれも一緒デスッテ」

「使いにくいの?」

「普通一般のブキとは思想が違う、というべきでショウネ。基本的に、“ハイドラント”類は重いんデスネ」

「あれ、見た目重そうだもんね」

 デスネ、とニシワタリ。

「重い、というのは実際の見た目だけではなく、溜めている時の移動速度が重かったり、チャージの速度が遅かったりするノデ、全体的に重く感じるブキデス。しかし、そこをフォローできるようになると、俄然面白さが見えてくるブキなのデスヨ」

「どういう魅力があるの?」

 ニシワタリカクンカクン。

「それは、一部チャージャーさえ凌駕する射程と、圧倒的広域塗り能力デス。特に塗り能力はその射程と相まって遠間から一方的に塗っていくことがデキマス。モズク農園とか、中央から相手の方に塗れば結構塗れるので楽しいんデスヨ。他のマップでもいい位置、というのはあるノデ、それをきっちり制圧して撃ち倒す塗り倒すのが最大の魅力デスネ」

 ただ。ニシワタリはそう言って続ける。

「さっきも言いましたが、必要なチャージの感覚がかなり鈍重です。そして、常にフルチャージする必要が無いという点も難しいノデス」

「最大まで溜めなくてもいいの?」

 美咲の言葉に、ニシワタリはカクンカクン。

「この間のアップデートで、最大溜めの利点、三確になる、というは増えましたが、でもそこまで溜める時間は結構掛りマス。ナノデ、状況によって、溜め時間を調節する必要があるのデスヨ。これは語ると長くなりマスカラ、そういうものだということで終わらせマショウ。でも重要なので、自分で身に付けてください。さて、サブとスペシャルの話をすると、“ハイドラント”の方は“N-ZAP85”と同じ構成。高台に居る時の死角である真下の方を細かいフォローが出来るスプラッシュボムが使い易く、インク切れを素早く対処しつつ相手の位置を知れるスーパーセンサーと合わせて立ち回り易いデス。“ハイドラントカスタム”の方はスプリンクラーでやりにくい自分周りの塗りをフォローし、バリアで危うい所を生き残る、というちょっと玄人向けな感じでショウカ。どちらもどちらで際立っていマスヨ」

 うーん、と美咲。

「話を聞く限り、とんがってない?」

「そうデスネ。普通ならサティスファクションのように“スプラスピナー”を勧めるべきデスガ、それを先にちらっとされたので、なにくそ! ってなってしまいマシタヨ。トハイエ、これも面白いブキなので、選択肢に入れてみてあげてくだサイ」

「何の回し者なのよ、あなたは」

 サティスファクション都の言葉に、ニシワタリはニカリと笑う。そして別に答えない。本当にどこかの回し者なのでは、という意味不明な言葉がサティスファクション都に去来する。口には当然出さないが。

「サテ、サティスファクションからは何カ?」

 話をふられて、サティスファクション都は、えー、と。

「散々言っちゃってるじゃない。これで何かまだ出せって?」

「折角残してあげているんデスガネ?」

「残して……、ああ成程」

 サティスファクション都は得心がいくが、当然この会話に美咲は蚊帳の外。

「何が残っているのかな?」

「ブキチセレクション第一の刺客、“スプラシューターワサビ”よ」

「ワサビ?」

「そう。これは中々いいバランスのブキよ。変な尖りがなく丁寧に手堅くまとまった性能の“スプラシューター”に、サブはスプラッシュボム、スペシャルがトルネードと、倒すのも除けるのも塗るのも平均的にこなせるザ・ド安定というブキね。遠距離に弱い点を除けば、非常に使い易いわ。正直、ブキチコレクションはこの為にあると言ってもいいでしょう」

「いい過ぎデスヨ。でも、確かに使い易いブキデスネ」

「そうね。美咲、前に撃ち方の話をしたのは覚えているわよね?」

「うん、前撃ち、引き撃ち、横移動撃ち、ジャンプ撃ちだね」

「そう。その時に撃ち方にスプラッシュボムを絡める話をしたでしょ? あれは“わかばシューター”だったけど、この“スプラシューターワサビ”でも同じことが出来る訳。それも、命中精度高めで三確のが、ね」

 ああ、と美咲は手を打つ。納得の動作である。

「そう考えると、結構いいブキって気がしてくるね」

「これでバリアなら最高なんだけどね」

「最高過ぎマス。……さて、美咲さん。ぱっと、新たに増えた所から、塗りと倒すのトントン、と言える部類を選んだわけデスガ。どうデス?」

「絞ってもらったけど、それでも目移りするね」

「なら、触ってみるのが一番デス。いいデスカ、サティスファクション」

「ニシワタリのことだから、そういう持っていき方するとは思ってたわよ。でも、確かに触ってみるのが一番。百閒は一見に如かず。百見は一考に如かず。百考は一行に如かず。ってやつね」

「なら話が早い。美咲さん、まず“ハイドラント”をシマショウ」

「なんでいきなりそっちなのよ。まずは“スプラシューターワサビ”でしょ」

「ああ、待って待って、一つずつしていくから!」

 わいのわいのと、場が騒がしくなる。美咲はまず、“プライムシューターベリー”を選んで、ナワバリバトルに挑み始める。

 それを見ながら、サティスファクション都は口を開く。

「ブキ紹介二回目、いかがだったかしら? 今回はニシワタリがよくしゃべってくれて助かったわね」

 ニシワタリも目線を変えずに口を開く。

「大分くたびれマシタヨ。こんなメインで喋るキャラじゃないんデスヨ、ワタクシ」

「今更よね。さて、次回はどう言う話になるのかしらね」

「今更ヒーローモードもないデスカラネ」

「最悪、マップ攻略みたいな話になるかもしれないわね」

「そういうのはごめんこうむりたいデスネ。やると長くなり過ぎデスシ」

「なのよね。まあ、『スプラトゥーン』してたら思いつくでしょう」

「だといいデスガ」

「ということで、今回はここまで。上手く結の話へ向かっていけばいいんだけど」

 話の決着を考えてなかったけど、だらだらと続けていい気もする辺り、ぐだぐだであるなあ、というのはさておき。今回はブキの話第二回でした。ブキの話はこれで終わりかな? あるいは、今回触れてなかったローラーとかブラスターの話をもする場合もあるかもしれないですね。どっちかっていうと潜伏の話とセットになりそうですが。というか、潜伏の話、書けばいいんだ! よし、ネタ出来た。次書こう次。

 とかなんとか。

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