ぼくの犬が死んだ
今日の朝、飼っていた犬が死んだ。
いや、正確に言うと、死んでいるのを見つけた。
急死で、原因はわからなかった。ただ、祖母が「夜中に何かが唸っているような音がした」と話していたから、その時、苦しんで死んだのだろう。
ぼくは、この子のことが大好きで、大好きで。だから本当に悲しくて、辛かった。昨日の夜は元気だったのだけれど。
家族の間では、早くも犬の埋葬の話し合いが行われていた。
「裏の山に埋めよう。家からも近いし、墓参りもしやすいだろう?」
父が言った。
「そうね。でも、火葬してもらってからの方が良いんじゃないかしら」
母も言う。
「いや、あまりお金はかけたくないし、それに手間もかかる。そのまま埋めてしまおう」
父が母の目を鋭く見つめた。
「・・・そうね。ならそうしましょう」
「せっかくだから、使っていた首輪とかおもちゃも一緒に埋めてやろう。そのほうがあいつも喜ぶだろうし」
こうして、遺体を裏山に埋めることになった。
「最後だから、しっかりお別れをしておけよ」
父の言葉に従い、ぼくは遺体に歩み寄った。
「今までありがとう。本当に・・・ありがとう。君と過ごせて、すごく楽しかった。天国でも元気に遊ぶんだよ・・・」
「ちゃんとお別れできたか?」
「・・・うん」
「・・・そうか、よし。後は俺に任せろ。お前は下がって見ておけ」
そう言って父が遺体に手をかけた瞬間・・・ぼくは見てしまった。
この子の遺体の首元の毛が、不自然に少なかったのを。
父が遺体を持ち上げた。父が笑っているように見えたのは、ぼくの気のせいだろうか・・・。