EL『青と聖誕祭』(2)
「あ、忘れてた!」
いきなりの純也の言葉に、全員が振り返る。少年はまたあの大きな紙袋に手を突っ込んで、何かを出してくる。
「あのね遼、遼にクリスマスプレゼントをくれた人がいるんだ。コレのこと、すっかり忘れてた」
「俺に? 相手は女か?」
「え、うーん……確かに綺麗な人だけど……」
「はっ、俺も捨てたもんじゃねーな」と箱を受け取ってみると、真っ赤な包装紙に黒いリボンという……なんとも送り主のセンスを疑ってしまうようなモノ。それでも中身を確認しようと、リボンを解いた瞬間、『ピッ』と電子音が。
「……ピ?」
黒いリボンを解いた後、自然と赤い包装紙も落ちていく。現れたのは、『6』という不吉な秒数が刻まれた機械。そのメーターも一秒ごとにゼロへ近づいていく。
本能的に、遼平は危機を感じた。不思議そうに遼平の手中のプレゼントを覗いていた仲間達を蹴散らし、事務所の窓を開け、あらん限りの全力で機械を空へぶん投げる。
直後。
……綺麗な三連発花火が、真昼の冬空に見事に輝いていた……。
「わぁママ、花火だよ〜」
「あらあら、珍しいわねぇ、こんな時期に花火なんて」
……とか下の方の道路で親子が会話しているのを聞きながら、遼平はゼイゼイと息を切らして窓からぐったりと腕を垂らす。
「あの〜、遼? 送り主さんね、ルインだ、よ……?」
「純也……それを一番最初に言えやコラァっ!!」
早足で戻ってきて思いっきり純也の頭を殴る遼平に、「痛いよ〜」と涙目になってしまう少年。だが、一歩間違えば今頃はこの事務所ごと美しく散っていたところだったのだ。
「ルインって……花火とかも作れるのね……」
「あははは……アレもあんたへの愛情表現なんとちゃう? 遼平」
「あんな殺人的な愛情表現があってたまるかっ!」
包装紙の白い裏に『楽しんでくれたかい? 我が同胞よ』とか紅い字で書いてあるのを見つけ、遼平はグシャグシャに紙を丸めてゴミ箱へダンクシュート。
「じゃ、じゃあさ、仕切り直し! 遼と澪君の誕生日、一緒にみんなで祝おうよ?」
少しの苦笑いも含んだまま、純也は提案をする。その言葉に、男達は同時に反応して。
「なんで紫牙の野郎と一緒なんだよっ! 俺は嫌だからな!」
「こちらこそ願い下げだ。誰がこんな愚か者と同時に祝われるものか」
その答えは純也にとって案の定だったが、それでも少し寂しい気持ちがあった。だから、「そう、だよね」と呟きながらも悲しい苦笑になってしまう。
「純くん……?」
「いや、あのね、誕生日をお祝いできるって素敵なことだと思ったから、さ。生まれた日をお祝いするのは……『生まれてきてくれてありがとう』って言うことだと思うから。そんな素敵な日は、やっぱりみんなでお祝いしたいじゃない?」
純也の温かな笑みの裏の、寂しさ。それが何なのか、仲間達は気付けた。
……純也には、誕生日が無い。
そんな沈黙を破ったのは、真。遼平と純也の肩を後ろから両手で抱き寄せて、思いっきり宣言する。
「よっしゃ! そんなら、今日を純也の誕生日にしよ! 十二月二十五日、今日が、純也の誕生日!! ……エエやろ、遼平?」
「お、俺は構わねーけど……」
「でも真君、僕は……」
「祝い事は一緒にパーッと盛大にやるのが一番や。その方が楽しいやろ?」
片手で荒っぽく純也の髪を撫でながら、真は最高の悪戯を思いついた子供のような笑顔で。
「誕生日……僕の、誕生日……? おそろいだねっ、遼!」
「あぁ……一緒だな」
「それなら遼平と純くん、澪斗の三人まとめて誕生日パーティーしましょっか! あ、聖斗にも通信して!」
「希紗ちゃん、ナイスアイディアね!」
「……仕方ないな」
嬉しそうな純也を優しげな瞳で見やる遼平と、盛り上がる希紗と友里依、観念したようだが僅かに口元をほころばせながら本を閉じた澪斗を見て、真は想う。
きっと、自分たちは裏社会で一番の幸せな者達だと。
「……なァ、純也」
「なに? 真君」
「生まれてきてくれて、ありがとうな」
不意を突かれてきょとんとした純也の顔に、可笑しくて少し笑ってしまったけれど。少年は微かに瞳を潤ませて。
「うん!」
この幸せな時が、仲間達との楽しい時間が、いつまでも続いてくれることを願いながら。
「みんな、誕生日おめでとうっ!!」
――――いつまでも、みんなが笑顔で幸せにあれますように。
依頼8《聖夜パニック!》完了
これにて、『闇守護業』第八話は終了となります。
今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
何かお言葉を残していってくださると、大変作者の励みになります。
迷惑ながらシリーズ続編も企画しておりますので、またどこかでお会いできることを願っています。
ありがとうございました!!