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どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争  作者: ホエール
第1章「ダートマス――Killing each other of south seas」
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4.

  4.

 周囲からは硝煙の匂いはすでに感じない。何故ならば、とっくに――麻痺しているから。

轟音は――すでに気にしない。衝撃が大地を震わせ、腹の底から響いてくる轟音はもはやありふれている。

それでも、人はどこかほっとする表情を見せる。


「おねーちゃん!」

誰かの声。2人の少女はその声の持ち主のところへと駆け込んでいって――――。


「クソッ」

兵士が、傭兵に保護された。その事実が腹立たしい。

少年少女が戦場で活躍するのはもはや珍しくない。少年兵を非人道的として規制した条約など――とうのかなたに忘れ去られている。


『――求められているのは、1時間以内での状況変化。ただ、それだけである。安全地帯を今すぐ確保せよ!』

「確保したぞ! そっちは何を見ているんだ!」

あちらこちらで少年少女たちが、銃を握り、無反動砲を背負い、そして、人型の戦闘駆動兵器たる、『対戦車用高機動戦装甲強化服マニュピレート・セグメンタタ』の中心角としてその無数の機器類に埋まっていく。

もともとは、対戦車兵器としての開発だった。

いや、もっと厳密に言えば、対戦車用兵器の運用のための兵器だった。

出来上がった兵器が大きすぎて、重すぎたのだ。それでいて、強力であり、対戦車だけに限らず様々な方面に使える可能性があり、人はこれを捨てるという発想をすぐには出せなかった。

そのために、大きなそれを運用する為、歩兵をサポートするそれを作った……。

だが、今では逆転している。

結局出来上がった兵器のほうは、実戦で大活躍するわけでもなく、サポート用に開発されたものが、陸戦無双兵器として各地で活躍している――という逆転現象。

しかし、それゆえに――少年少女の兵隊で世界の戦場はあふれている。

もともと、少年兵は探せばいくらでも出てくる代物だった。世界中にあふれているものだった。

第一、こいつを扱うには普通の人間のままではままならなかった。だから、人間のほうを『調整』することにした。『調整』のコストパフォーマンスは明らかに少年少女の兵隊のほうがよかった。

大人の兵隊より、安上がりで確実だった。だから、少年少女の兵隊はより、今まで以上に世界中の戦場にあふれるようになった。

だが、今の時代はWW2以来、最も異常なくらいあふれているように感じるのは――この場面を見ている日本軍兵士が、〝恵まれた境遇〟だからだろうか?

五大国という大国正規軍の兵士で、ほんの少し前までのどかな平和な戦場で平和ボケできる……そんな恵まれた境遇だからだろうか?

どちらにせよ……


「科学者どもはうれしいだろうな、好きなだけ、人間を弄繰り回せて……」

どのみち、この世界に『純人』は希少価値が付く代物に成り果てた…………。

そんな、感傷に浸っていると――聞こえてくる。小さな音。

この音は――?


「チィッ! 対空用意! 航空隊が撃ち漏らした!」  

『――戦術爆撃ドローンがそちらに向かっている。単機だ』  「空は天敵だってのに」

兵士の前を走る、一人の少年兵――自分たちを助けた分隊砲兵の少年兵。


「パッケージは?」  「対空パッケージに決まってんだろ! 近接防空のリンカーは?」

「ないから、わざと聞いてんだよ! そっちのシーカー頼みなんだよ!」  「やべっ、俺様逃げていい?」

「逃げんな! 砲兵! テメェはSAWで、迫撃で! 高射の役割だろうが、逃げたら、後ろから撃つぞ、畜生!」

GN-11B砲兵型。

ついさっきまで、それは整備兵と思われるこれまた、少年少女の兵隊たちが弄繰り回していた。2~5メートル台のパワード・スーツだからといって、整備の必要性が全くないわけではない。

その整備されたGN-11B砲兵型には、ついさっきまで装備されていなかったものがいくつかついている。

たとえば、頭部からまるでエリマキトカゲの様に取り付けられた円盤状の板切れの様なセンサー版。

たとえば、右肩の重砲――に隣り合うように設置された携帯式地対空ミサイル2連装ポット。

たとえば、12.7mm電熱銃身上下12本式5発型対空ミトラユーズ。

それら、3つの兵装――おそらくはこれが少年兵たちの言う『対空パッケージ』――が追加された2.5世代GN-11B砲兵型セグメンタタが次々と動き出す。

狙うは空。

そして、それらが一斉に火を噴いた。

電熱銃身式故に、一斉斉射した場合、どこかでストッパーがないと0.1秒単位で弾切れを起こしてしまう。

ましてや12本式5発型対空ミトラユーズはおよそ60発の12.7mmの銃弾を1秒数える前に撃ち尽くしてしまう。

撃ち尽くされた対空ミトラユーズは、歴史上に登場する機関銃の元祖たる『ミトラユーズ』と違い、後装式の装填方法をとっているため、銃身の一部をボックス化しており、ボックスを交換することで新たに装填されることになっている。

ただし、このボックスの場合、銃身の長さを確保する為、2発しか弾丸が装填されていない。

故に――


「装填!」  「らじゃー!」

すぐそばで、整備兵と思わしき連中が、対空ミトラユーズの電熱銃身そのものを交換するか、あるいはボックス交換をしている。

そして、砲兵どもは、ぶっ放して、すぐさまそれを整備兵のところになげ、新たなミトラユーズを装備していく。

空からやってくる――爆撃用のドローンは。


「よし、塵は塵にだな!」  「フフフ……ミンチしか残らんよ……」

「所詮は、無人兵器……カスはカスでしかない…………」  「なんで、おめーら、怪しい寸劇しているんだよ」

金属部品やプラスティックの部品がいくらか落ちてくる程度。ほとんどがカス同然にされて、風に飛んでいく。


『――J小隊、集まれ、お前らにはやってもらいたいことがある』

少年兵たちは、そうやって、正規軍兵士であるはずの彼らを無視して動いていく――――。

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